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彼女の一人や二人①
しおりを挟むあの時もありえなかったけ
ど今回ばかりは本当にありえない。
ありえなさすぎる。
何がどうなってこうなった。
ていうかなんでこんな事になってんだ。
「そりゃ進路が違うからだろー」
「そうだよ何で確認しとかなかったんだオレええええ!クラス違うなんてありえないだろおおお!!」
「ドンマイ」
オレの疑問に明確な答えを出したのは佐木。
そう、席替えに引き続き、オレは今クラス替えという運命の波に拐われ愛しの愛しの森とクラスが離れてしまったのだ。
無事に進級出来たのに。
奇跡的に進級出来たのに。
しかも。
「まさか石野と森が同じクラスとはなー」
「ガッデム石野!なんでお前なんだ!!!」
「仕方ねえだろ、進路が一緒なんだから」
「そうだけどおおお!」
よりにもよって森と石野、そして佐木とオレという組み合わせで別れてしまったのだ。
ありえない。
どうせなら森とオレ、石野と佐木の組み合わせにしてくれれば良かったのに!
「あーあ、こりゃ先生の予言が当たるかもなあ」
「……予言?」
なんのこっちゃ、と佐木を見ると。
「ほら、席替えしたばっかの時に言ってたじゃん」
「?」
「『ずっと一緒じゃないし』」
「!」
「『森も彼女の一人や二人、作っちゃうかもな』って」
「!!!」
そのセリフに頭をガツンと叩かれたような衝撃を受ける。
「まあ森に彼女なんて作れるはずないけどなあ、あはは」
「こうしちゃいられない!」
「……って、あれ?高塚?」
「ちょっと森ちゃんのとこ行ってくる!」
「え?え?」
佐木の言葉なんて頭には入って来ず。
椅子を倒す勢いで立ち上がり、森の教室まで駆け出した。
*
(な、なななななななんだあれ……!?)
森のクラスまで来たのはいいが、その中で繰り広げられている光景に思わずドアにかじりついてしまった。
だって、だって……!
(誰と話してんの森ちゃんそれ誰!?あああそんな可愛い顔で笑わないでみんなが虜になっちゃうから!)
森は前の席の女子と、何やら楽しそうに談笑中。
何、なんなのあの女子。
森の笑顔見ちゃって羨ましい!
それだけでも許せないのに、その女子はなんと。
「あ……!」
ぺしりと。
何の痛みもなさそうなくらいに軽く、森の腕を叩いた。
仲睦まじいその様子。
『彼女の一人や二人』
ついさっきの佐木のセリフが蘇ってきた。
「ダメええええ!ダメダメダメ!絶対ダメだからああああ!!!」
「っ!?」
居ても立っても居られず森までダッシュしその背中に抱き付く。
「なっ、は!?高塚!?」
「ダメだよ森ちゃん彼女作るなんて許さないからね! 」
「は!?何言ってんだお前は!てか離せ!」
「やだやだやだ彼女なんか作らないって言って!」
「人の話を聞けえええ!」
「いったああああ!?」
首筋に摺り寄り懇願するオレに、森の渾身の拳骨がゴツンと落ちてきた。
そして。
「ちょっと来い!」
教室中の注目を集めていた事に気付いた森が、立ち上がり、オレを連れて教室を出た。
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