かつらぽーん

うりぼう

文字の大きさ
上 下
6 / 10

3

しおりを挟む


(あー、マジ学校いくのだるいなあ、行って隊長さん達に会ってまた無視されたり睨まれたり避けられたりすんのもう嫌だなあ、あーほんとやだ。あんな罰ゲーム受けなきゃよかった)

盛大な溜め息を吐きながら教室まで歩いていると。

「……ちょっと来て」
「!」

目の前に立ちはだかる三つの影。
それは……

「……隊長さん?」
「こっち」
「え?」

言うだけ言って、先に進む隊長さん達に付いて行く。
あの事があってから徹底的に俺を避けていた隊長さん達がこうして声を掛けてくるなんて。

(……なんだろ?)

こうして呼び出されるのは二回目だ。
最初は生徒会の奴らに近付かれて、それの制裁を受ける時だった。
結局制裁は受けずに済んで、隊長さん達と知り合うきっかけになったから良かったんだけど。

(……今回は制裁じゃ済まないかもなあ)

もうごまかしは効かないだろうし。
俺が健康優良児だってわかってるだろうし。
転校生でもなんでもない、ただの一般生徒だと知っただろうし。

(もしかしたらこれが隊長さん達と話す最後なのかもなあ)

そう思うと知らず知らずの内に再び溜め息が漏れてしまう。
そして来たのは、いつぞやも連れて来られた校舎裏だ。
あの時と同じように壁際に追いやられ、辺りを囲まれる。

(……あーあ、せっかく仲良くなれたと思ったのにな……)

最後通牒を突き付けられると思い、顔が見られなくて地面を見つめながら隊長さん達の第一声を待つ。

「……話は聞いた」
「……は?」

それは俺の想像とは違う一言だった。
思わず顔を上げて隊長さん達を見る。

「……隊長さん?」
「「「……」」」

久しぶりに見た隊長さん達は、何故かバツの悪そうな表情を浮かべていて。

「……話って……?」

俺の事ぼこぼこにするんじゃないのか?
あの時よりも更に冷たい言葉を投げかけるんじゃないのか?
疑問に思いつつも話を促す。

「昨日、君の友達って人が何人か来て」
「あれから君が凄く落ち込んでるって」
「ずっと机に突っ伏して何にもやる気がないって言われて」
「……!」

恐らく、俺のいつにない落ち込みっぷりに友人達が気をきかせたのだろう。

(……あいつら、気使いやがって……!)

元はといえば奴らが考えた罰ゲームなのだからフォローを入れるのは当然なんだけれど。
まさかそんな事をしてくれるとは思っていなかったので一瞬感動する。

「なんであんな格好してたのかも聞いた」
「罰ゲームなんて馬鹿じゃないかって思ったけど、」
「騙されたのはそりゃムカつくし、病気だって嘘吐いたのも許せない、けど」
「……」
「俺達のせいで学校辞めちゃったら後味悪いし、」
「最初からちゃんと話してくれれば良かったのにって思ったのもあるし」
「でも、良く考えたら病気じゃなくて良かったとか思って……だからつまり、何が言いたいのかっていうと」

三人はお互いに目と目を合わせ……

「……許してあげる」
「だから学校辞めないで」
「それに、そんなにへこんだ顔しないでよ」

次々とそう言われ……

「……はっ」
「「「!」」」

足から力が抜け、ずるずるとその場に座り込んでしまった。

「め、めぐむくん?!」
「どうしたの?!」
「大丈夫?!」

頭を抱えうずくまるオレを、本気で心配そうに覗き込んでくる三人に色々なものが込み上げてくる。

「……は、ははっ」
「……めぐむくん?」

込み上げてきたものがそのまま笑い声となって口から飛び出す。

「……やばい、嬉しい」
「「「!!!」」」

へにゃへにゃと、我ながら締まりのない笑みを浮かべてしまった。







あれから。

「恵、怪我の具合どうだ?」
「あ?また来たのかよ会長さん」
「会長さんなんて他人行儀だな、名前で呼べよ」
「……名前何だっけ?」
「……おい、本気で言ってるのか?それ」

相変わらず飽きずに絡んでくる会長をさらりといなす恵。

「ああー!会長様!また恵くんにちょっかい出してるんですか?!」
「全く、迷惑してるのがわかんないのかなあ?」
「ほらほらあっち行って下さい!」
「お、おい?!お前達親衛隊だろ?!」
「それとこれとは別です!」
「恵くん、怪我治った?オレ達手加減しなかったから……ごめんね」
「あ、これ食べて!美味しいんだよ、ここの焼きそばパン!」

以前同様に俺に接してくれる隊長さん達が可愛い。

「ありがとうございます」

にこーっと笑いながら隊長さん達の頭を撫でる。

「……っ、か、かわ……!!」
「っ、うわっ、会長様鼻血?!」
「ちょっ、信じらんない!」
「変態!恵くんに近付かないで下さい!」
「誰が変態だ誰が!」
「「「会長様ですー」」」
「ぶは……っ」

三人のユニゾンで変態と呼ばれた会長が面白くて、思わず噴き出してしまった俺に教室中が固まった気がするが……

(たーのしいなあ)

いつになくご機嫌な俺はそんな事には気付かず。

「あー……これ信者が増えるパターンじゃね?」
「ったく、眼鏡の防御も役に立たなくなってきたな」
「全く、うちの恵くんのフェロモンどうにかならないかねー」
「まあ元気になったから良しとしますかー」
「だなー」

騒ぐ俺達を見て友人達がそんな事を話していた事も、当然ながら気付いていなかった。





終わり
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

真冬の痛悔

白鳩 唯斗
BL
 闇を抱えた王道学園の生徒会長、東雲真冬は、完璧王子と呼ばれ、真面目に日々を送っていた。  ある日、王道転校生が訪れ、真冬の生活は狂っていく。  主人公嫌われでも無ければ、生徒会に裏切られる様な話でもありません。  むしろその逆と言いますか·····逆王道?的な感じです。

黄色い水仙を君に贈る

えんがわ
BL
────────── 「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」 「ああ、そうだな」 「っ……ばいばい……」 俺は……ただっ…… 「うわああああああああ!」 君に愛して欲しかっただけなのに……

王道学園なのに会長だけなんか違くない?

ばなな
BL
※更新遅め この学園。柵野下学園の生徒会はよくある王道的なも のだった。 …だが会長は違ったーー この作品は王道の俺様会長では無い面倒くさがりな主人公とその周りの話です。 ちなみに会長総受け…になる予定?です。

エンシェントリリー

斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
短期間で新しい古代魔術をいくつも発表しているオメガがいる。名はリリー。本名ではない。顔も第一性も年齢も本名も全て不明。分かっているのはオメガの保護施設に入っていることと、二年前に突然現れたことだけ。このリリーという名さえも今代のリリーが施設を出れば他のオメガに与えられる。そのため、リリーの中でも特に古代魔法を解き明かす天才である今代のリリーを『エンシェントリリー』と特別な名前で呼ぶようになった。

眠りに落ちると、俺にキスをする男がいる

ぽぽ
BL
就寝後、毎日のように自分にキスをする男がいる事に気付いた男。容疑者は同室の相手である三人。誰が犯人なのか。平凡な男は悩むのだった。 総受けです。

BlueRose

雨衣
BL
学園の人気者が集まる生徒会 しかし、その会計である直紘は前髪が長くメガネをかけており、あまり目立つとは言えない容姿をしていた。 その直紘には色々なウワサがあり…? アンチ王道気味です。 加筆&修正しました。 話思いついたら追加します。

天使様はいつも不機嫌です

白鳩 唯斗
BL
 兎に角口が悪い主人公。

処理中です...