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お弁当を作りましょう!
しおりを挟むさーて!
材料も揃った事だし早速作るぞのり弁!
街で買ってきた材料を広げ拳を握り意気込む。
今日は朝ご飯と並行してお弁当を作る為に早起きしたのだ。
テントには例の如く結界を張っているので音も香りも漏れる心配はない。
見張りの騎士さんには挨拶をしておいた。
ついでにお疲れ様の差し入れも。
夜通し起きてるなんて大変だもんね。
(先にご飯だね)
お米を大量に仕込み水に漬けておく。
味噌汁も先に作っておくか。
後で温めれば良いだけにしておけば楽だもんね。
さて、次はおかずをじゃんじゃん作っていくぞー!
ごぼうと人参を千切りにしてごま油で炒める。
鷹の爪を入れてちょっとピリ辛にしようかな。
味付けは酒、醤油、砂糖でに詰まったらたっぷりゴマをかけてきんぴらごぼうの出来上がり。
次に春雨を茹でておいて、茹で上がったらそのまま洗っておいたほうれん草に似た青菜を塩で茹でる。
こちらはすりごまと砂糖、醤油で味付けして胡麻和えの完成。
味は……うん、問題ないな。
ほうれん草というよりは小松菜に近い味だ。
十分美味しい。
先に茹でておいた春雨は鶏ささみときゅうりと合わせて春雨サラダにする。
味付けは中華ドレッシングと言いたいところだがあるはずもないので、街で買ったドレッシングを後でかける予定。
これは朝ご飯だから冷やして置いておこう。
卵焼きには枝豆を入れて、さーてメインに行きますか。
朝ご飯のメインはサーモン。
これは焼いておくだけだから放置して、お弁当のメインは白身魚のフライ!
下拵えは昨日の夜のうちに済ませておいたから後は揚げるだけ。
そしてそしてこれが我ながらよくできたちくわ!
練り物は探してもなかったから作ってみたんだけど、うんうん上出来。
これを青のりを混ぜたてんぷら粉にくぐらせて磯部揚げの完成。
魚はタラに似たやつを選んできたので、これも次々揚げていく。
「……朝からすごい量だな」
「たま、おはよー」
ここでたまが起きてきた。
眠そうな気だるげな表情でゆっくり隣に立つ。
「油跳ねるから気を付けてね」
「大丈夫だ、このくらいで傷付きはしない」
「そうだろうけど、一応ね」
跳ねたら熱いのだから用心に越したことはない。
おかずはこれで全部だったかな。
魚のフライ、磯部揚げ、卵焼き、きんぴらごぼう、胡麻和え……ん?何か足りない気がする。
「……あ!あれ忘れてた!」
「何だ?」
「これだよこれ」
むふふと笑いながら取り出したのは四角い保存箱に入れておいたとある物。
「?何だ?」
「ゆず大根だよゆず大根!」
「ゆずだいこん?」
「漬物。作っておいたんだ、良い匂いでしょ?」
「ああ、爽やかな香りだな」
「ゆずが良い匂いするんだよー」
味見と称して一口ぱくり。
うん、良く漬かってて美味しい。
「何、たまも食べたいの?」
「うむ」
「しょうがないなあ、みんなには内緒だよ」
「わかっておる」
じっと見つめる視線に気付き問うと素直に頷かれる。
はい、とその口にゆず大根を放り込めば、それを噛む良い音が聞こえてきた。
「どう?どう?」
「良い味だな。爽やかだ」
「でしょでしょー?」
褒められてえっへんと胸を張る。
「それにしても随分と早いな」
「お弁当も朝のうちに作りたかったからね」
「弁当……ああ、前に食べたあれか。あの時とは中身が違うようだが?」
「お弁当っていうのは持ち運び出来るご飯みたいなもので、別に中身は何だって良いんだよ」
「ほう、なるほど」
ふむふむと言いながら並べられたおかずを見るたま。
覗き込むのは良いけど、ぴったりとくっつかれると照れてしまう。
(絶対この前出掛けた時のせいだ)
たまに言われた『人間の中では一番気に入ってる』というセリフが頭から離れない。
嬉しいんだよ、嬉しいんだけどそえを越える恥ずかしさが未だに抜けきらないのだ。
照れくさくて距離を取ろうにも、たまは相変わらずこの調子でくっついてきてるし。
足りない力を補ってると言われたから仕方ないんだけどやっぱり恥ずかしいよね、うん。
「どうした?手が止まってるぞ?」
「あ……」
ぐるぐると考えてしまいうっかり手を止めてしまった。
これからお弁当箱に詰める作業が待ってるんだから手を止めてる場合じゃない。
お弁当箱はその辺の木で作ってみた。
魔法で切って貼って組み立てるだけだったから意外と簡単だった。
この人数分のこのサイズの箱を特注するとなったらお金かかるもんね。
イメージとしては曲げわっぱ。
木を薄くスライスするようにして切って曲げるのが大変そうだったけど魔法を使えばあっという間だった。
もちろん蓋もありますとも!
「よし!じゃあ詰めていきますかー!」
お弁当箱にご飯を詰め、上に味付けした鰹節をかけのりを乗せる。
びっくりだったんだけど、鰹節が普通に売ってたんだよね。
これは物凄くラッキーだった。
これがあるとないのでは全然違うからなあ。
ますます食べるのが楽しみ。
で、ご飯の上におかずを乗せていく。
端にきんぴらと胡麻和え、卵焼きにゆず大根を乗せ、中央に磯部揚げとフライを乗せる。
フライにはタルタルソースをかけて完成。
完璧なのり弁である。
「美味そうだな」
「でしょ?でもこれはお昼まで我慢」
「……一口」
「さっきゆず大根食べたでしょ?」
「足りん」
「じゃあこれでも食べてて」
おかかの残りで小さなおにぎりを作りたまに差し出す。
これから朝ご飯もあるから本当に一口サイズの小さなものだ。
「小さすぎる」
「すぐ朝ご飯だってば」
「……そうか」
「って、自分の手で食べなよ」
俺の手から直接おにぎりを食べるたま。
せっかく手が汚れにくいように小さくのり巻いたのに。
ていうか気に入ってるからってこんな風に人の手からご飯って食べるもんなのか?
こんなの余程仲が良いか恋人同士くらいしかしないんじゃないの?
またもぐるぐる考えながら魔法で弁当を冷まし蓋を閉める。
考えはすぐに第三者の声によって遮られた。
「まーたたまといちゃついてる」
「!太陽」
今起きたらしく、むすっとしながら結界の中へと入ってきた。
ていうかいちゃついてないから。
おにぎり食べられただけだから。
「おはよ」
「おはよ。で、何いちゃついてんの?」
「いちゃついてないったら」
「どう見てもいちゃついてるだろ!たま!俺の目の黒い内は朝日に手出させないからな!?」
「お主の許可などいらぬ」
「ああ!?」
「こらこら太陽、たまが俺に手なんか出すはずないでしょ」
「ないはずない訳ないだろ!」
「何言ってんの」
たまがこうしてくっついてきてるからいちゃついてるように見えるのかな。
でもたまはどんどん減ってく力を補う為にくっついてるんだってば。
「朝日も最近たまばっか贔屓してるし!」
「贔屓なんかしてないけど……あ、おにぎり?太陽も食べたいの?」
「食う」
「マジで?」
「マジで」
「じゃあ、はい」
たまに作ったのと同じものを太陽にも差し出すと、太陽まで同じように俺の手から直接食べた。
何なんだ二人とも。
「んー!めっちゃ美味い!おかか久しぶりー!ていうか何この大量の箱」
「今日のお昼ご飯だよ」
「え!?もしかして弁当!?」
「ふっふっふ、大正解!」
「マジで!?中身は!?」
「見てからのお楽しみー」
弁当箱を収納袋に入れていく。
この収納袋、入れても中身が崩れないのが良いところのひとつだよなあ。
本当に便利だよ収納袋。
お弁当をしまったところで他の騎士さん達も起きてきたので、今度は朝ご飯の仕上げに取り掛かった。
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