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しおりを挟む「二人ともここにいたんだね」
「リュイさん」
アーシャとこうして話していると必ずと言って良いほど毎回現れるようになったのだ。
今までも竜舎に遊びに来たら顔見せてくれていたけれど、もちろん竜達が優先なのだからこちらにかかりっきりという感じではなかった。
でも最近のリュイさんは今までよりも遥かに長い時間俺達の傍にいる気がする。
そう、俺達。
つまりアーシャがいる時に限って長い時間一緒にいるのだ。
これってつまりそういう事だよな?
モテないおっさんでも流石にわかる。
リュイさんは確実にアーシャを気にしているに違いない。
(ふふ、ふふふ、両思いかあ良いねえ)
男前なリュイさんと可愛らしい雰囲気のアーシャが並ぶと物凄く絵になる。
お似合いだ。
というのも実はこの前リュイさんに呼び止められ、久しぶりに二人きりで話をしたのだ。
※※※
「エル、ちょっと良いかな?」
「リュイさん」
ダリアとの婚約話が落ち着いた直後だった。
「どうしたんですか?」
普段竜舎にいるリュイさんがわざわざ校舎の方に来て声をかけてくるなんて珍しい。
「ちょっとだけ話があるんだけど、良い?」
「もちろんです」
すぐ傍に向かい、廊下の端に寄りリュイさんの言葉を待つ。
リュイさんは少しだけ言い難そうにしていたが、すぐに口を開いた。
「その、アーシャの事なんだけど」
「アーシャ?」
え?アーシャ?
アーシャがどうかしたのだろうか。
「最近良く竜舎に来るようになったでしょう?エルとも良く話しているみたいだから、仲良いのかなって思って」
「!!!」
こ、これは……!!!
ぴーんときた。
これは完全に『最近良く見かける子が気になり始めたけど、でも他の子とも仲良さそうで本人には聞けずその他の子にずばり聞いてどういう関係なのかをこっそりと確かめようとしている』パターンなのでは!?
おおう、こんな少女漫画みたいな展開がまさか俺に降りかかるとは。
ちょっと興奮してしまった。
落ち着け俺。
「アーシャですね、はい、仲良いですよ。最近仲良くなったんです。あっちも竜に興味あるから、それで盛り上がって」
嘘は言っていない。
それ以上にリュイさんに興味あるってだけで、竜に興味があるのは本当だ。
「友達ってこと?」
「はい」
「……そっか」
複雑そうな表情がホッとしたものに変わる。
んんん、これは確実に気になっちゃってるよね!?
アーシャと俺の関係疑うなんて、リュイさんも好きな子相手には随分嫉妬深くなっちゃうんだなあ。
俺とアーシャがどうにかなるなんてありえないのに。
(アーシャはリュイさんが好きなんですよ)
って教えてあげたい!
でも出来ない!
自分の気持ちはちゃんと自分で伝えたいだろうから頑張ってお口にチャックだ。
※※※
なんてやりとりがあって、俺は二人の両思いを確信した。
(いやあ、それにしても傍で見ているだけってのももどかしいもんだな)
恋のキューピッドなんて役、俺には出来るはずもないしそんなチャンスもないと思っていたが、俺にもそれをするチャンスが巡ってきたのかもしれない。
いやでもそういえばダリアには何もするなって釘刺されてたな。
まあ二人が二人だけでどうこうなってくれるのが一番だから俺は暫く見守っていよう。
それにしてもこの二人が付き合う事になったら竜舎に来る回数減らした方が良いかな。
でもユーンには会いたいしなあ。
もう寮の部屋に入れられるサイズじゃないから前のように四六時中は一緒にいられないのが寂しい。
これで会う回数まで減ったら俺はユーン不足で参ってしまう。
(……二人の邪魔しないように通えば良いか)
うんうんそうだなそうしよう。
俺が一人でそんな事を考えている間にも二人は何やら話している。
距離が近いのが二人の関係の近さを現しているようで微笑ましい。
「あ、じゃあ俺はこれで」
「え!?もう!?」
「もっとゆっくりしていけば良いのに」
二人の邪魔にならないようにさっさとユーンの所に退散しようとすると、アーシャもリュイさんも俺を引き止めてくれる。
二人きりになるのが恥ずかしいのかな?
でも今日は思う存分一人でユーンを甘やかすって決めてるからな!
「ユーンが俺を待ってますから」
グッと親指を立てそそくさとユーンの元へ向かう。
その途中ちらりと二人を盗み見たら、しっかりと見つめ合っていた。
(ふふ、ふふふふふ)
我ながら気持ち悪いと思いつつ笑いが止まらない。
「ユーン!お待たせー!」
キュー!!!
そして上機嫌のまま、嬉しそうに翼を広げ待ち構えていたユーンの胸の中に飛び込んだ。
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