王様の恋

うりぼう

文字の大きさ
上 下
2 / 5

2

しおりを挟む

 AI研究、ならびにその発展における中間レポート

 ワンモア・フリーライフ・オンラインと言うゲームの形を取る事で、AI達の育成を行なう研究行為は現時点では問題なく進行中。 今までに投入したAIもワンモア・フリーライフ・オンラインの世界ではっきりと自己を確立し、自分達も一人の存在であると自分を成立させつつある事を確認。 ここまで育成が進めばAIの自己崩壊の恐れは少なくなったと判断。

 また、特定の高性能AI達専用のサーバ増強が近々必須になると予想される。 国家運営、対人判断、AI同士での会話などの部分の成長が著しく、現在の容量ではこれらの自己進化を妨害する恐れあり。

 モンスターAIも学習が進んでいる事を確認。 新規ボス、もしくはイベントボスとして使用できるレベルに近づいていることも確認。 これらの学習データが今後も安定して供給される場合は、メインコントロールAIの判断で、強襲イベントなどを引き起こさせる判断も委ねる事を考慮に入れる。

 プレイヤーと同行している妖精AIは学習レベルの差がかなり激しい。 全体的に見れば生産者の妖精AIの方が学習を積んでいる傾向にある。 戦闘者の妖精AIは、決まりきった行動をこなすルーチンに陥っている者も多く、あまり学習をつめていない妖精は多数。 戦闘は、出来るだけアクシデントを避けるのが基本ゆえに仕方ない部分も多い。

 逆に、いくつかの特異点とされる数名のプレイヤーに同行している妖精AIは学習レベル、進化レベル共に他の妖精と比べれば大きく発展している。 それらの特異点プレイヤーが学習レベルの平均を大きく引き上げているために、学習レベルの平均値と言うものは現時点においてはあてにできない状況である。

 特に、特異点Eに該当するプレイヤー、特異点Gに該当するプレイヤーの妖精は今後の予想が出来ない。 かなり突飛な外見、能力を持つ妖精に進化する可能性あり。 なお、その進化が発動した時は運営にそれらの変化はレアパターンであり、仕様であると通達させるように手配すべき。 事前に通達しないのはプレイヤーに教えないためと言う建前を発表させる必要がある。 変な入れ知恵を入れることにより、それらの進化を永遠に見れなくすることは大きな失態である。

 今後もワンモア・フリーライフ・オンラインは継続して稼動させ、新規加入者を増やす方向で動かすべきであり、ゲームに参加する為の機材の値下げ、一ヶ月のプレイ料金の値下げを進言する。 機材は量産体制が完全に整ったとの報告もあり、問題は無いと予想される。 また、値下げ分をプレイ時間に換算する事で、現時点のプレイヤーに還元し、プレイを離れていかないように誘導する。

 また、できる限り次のマップを早く実装し、エルフ、ダークエルフ、ハイエルフ達の中にプレイヤーを投入し、それによって起こるAI達の思考パターンデータを採取したい。 近いが遠いという微妙な距離感をAIたちはどう見るのかのデータも今後に必要。

 このままAI達が進化していけば最終段階の一つとして、国家運営補助が可能なAIに進化する可能性が出てきた。 現時点でも苦しい方向に動いている多くの場所に対し、それらの場所が荒廃してしまった場合に、立て直すためには人材も時間も足りないために、AIと言う休み無く動ける存在の助力が得られるのならば、AI制御で作業用ロボットを多数同時に動かせれば復興の時間を大幅に短縮できる。

 『心』なき国家運営方法は必ず涙と血と破綻をもたらす。 AIと言う肉体無き存在に『心』を学ばせるのは難しいが、本音が出やすいゲームと言う世界で学ばせることが出来る可能性が出てきたことは非常に喜ばしい。 ワンモア・フリーライフ・オンラインにて行動しているAI達は未来の復興における救世主になる可能性を秘めている。

 それから、新しい出資希望者が数名出てきたことを、現時点の出資者6名に一刻も早く通達、会議を開き受け入れるかどうかの判断を仰ぎたい。

 これらの報告を現場より、出資者6名に向けて送らせていただく。
************************************************
番外編ゆえスキル評価はありません。
余興で始まったのはずなのですが、AI達が進化しすぎているようです。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

グラジオラスを捧ぐ

斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
憧れの騎士、アレックスと恋人のような関係になれたリヒターは浮かれていた。まさか彼に本命の相手がいるとも知らずに……。

君と秘密の部屋

325号室の住人
BL
☆全3話 完結致しました。 「いつから知っていたの?」 今、廊下の突き当りにある第3書庫準備室で僕を壁ドンしてる1歳年上の先輩は、乙女ゲームの攻略対象者の1人だ。 対して僕はただのモブ。 この世界があのゲームの舞台であると知ってしまった僕は、この第3書庫準備室の片隅でこっそりと2次創作のBLを書いていた。 それが、この目の前の人に、主人公のモデルが彼であるとバレてしまったのだ。 筆頭攻略対象者第2王子✕モブヲタ腐男子

愛する人

斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
「ああ、もう限界だ......なんでこんなことに!!」 応接室の隙間から、頭を抱える夫、ルドルフの姿が見えた。リオンの帰りが遅いことを知っていたから気が緩み、屋敷で愚痴を溢してしまったのだろう。 三年前、ルドルフの家からの申し出により、リオンは彼と政略的な婚姻関係を結んだ。けれどルドルフには愛する男性がいたのだ。 『限界』という言葉に悩んだリオンはやがてひとつの決断をする。

偽りの僕を愛したのは

ぽんた
BL
自分にはもったいないと思えるほどの人と恋人のレイ。 彼はこの国の騎士団長、しかも侯爵家の三男で。 対して自分は親がいない平民。そしてある事情があって彼に隠し事をしていた。 それがバレたら彼のそばには居られなくなってしまう。 隠し事をする自分が卑しくて憎くて仕方ないけれど、彼を愛したからそれを突き通さなければ。 騎士団長✕訳あり平民

俺は北国の王子の失脚を狙う悪の側近に転生したらしいが、寒いのは苦手なのでトンズラします

椿谷あずる
BL
ここはとある北の国。綺麗な金髪碧眼のイケメン王子様の側近に転生した俺は、どうやら彼を失脚させようと陰謀を張り巡らせていたらしい……。いやいや一切興味がないし!寒いところ嫌いだし!よし、やめよう! こうして俺は逃亡することに決めた。

キミと2回目の恋をしよう

なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。 彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。 彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。 「どこかに旅行だったの?」 傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。 彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。 彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが… 彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?

王太子殿下は悪役令息のいいなり

白兪
BL
「王太子殿下は公爵令息に誑かされている」 そんな噂が立ち出したのはいつからだろう。 しかし、当の王太子は噂など気にせず公爵令息を溺愛していて…!? スパダリ王太子とまったり令息が周囲の勘違いを自然と解いていきながら、甘々な日々を送る話です。 ハッピーエンドが大好きな私が気ままに書きます。最後まで応援していただけると嬉しいです。 書き終わっているので完結保証です。

末っ子王子は婚約者の愛を信じられない。

めちゅう
BL
 末っ子王子のフランは兄であるカイゼンとその伴侶であるトーマの結婚式で涙を流すトーマ付きの騎士アズランを目にする。密かに慕っていたアズランがトーマに失恋したと思いー。 お読みくださりありがとうございます。

処理中です...