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大蛇とムカデ
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当時は京方面から近江国への道はほとんど1本しかなかった。
そして、瀬田川にかかる大橋である瀬田の唐橋が近江国の入り口だ。
俺と保久も例に漏れず、瀬田の唐橋を目指して歩いていた。
ところが瀬田の唐橋が近づくにつれ、なぜか大渋滞なんだ。
もちろん当時は自動車なんかなかったから、歩く人々が渋滞しているんだよ。
俺はこういう性格だしさ、根気よく渋滞解消を待つなんてことはできない。
人波をかき分けてずんずんと唐橋に進んだんだね。
橋が見えるとこっち側の奴らも、向こう側の連中も、みんな橋のたもとで立ち止まって、わいわい騒いでいるんだ。
なんでとっとと渡らないのかといいうと、橋の真ん中に大蛇が横たわっていたんだな。
お前らは大蛇といわれて、アナコンダとかニシキヘビみたいなのを想像したかもしれないが、ぜんぜん違う。
お前らにも分かりやすいビジュアルで説明するとだな、俺が現代に来てからハマったマンガ『ドラゴンボール』だ。
あれに出て来る神龍。あれがかなり似ているな。
四本の脚があって、角が生えていて、目が赤く光っている。
まあそんなのが橋の真ん中で寝そべっていたんだよ。
しかしまあ、女子供ならいざ知らず大の男まで、中には立派な武者装束の奴も居るのにね、何をビクついているのか呆れたものさ。
「保久、行くぞ」
と、声をかけたんだが、保久までしり込みしてやがる。
俺はもう馬鹿らしくなってきて、ひとりで橋の真ん中まで歩いて行って、大蛇を踏みつけて向こうまで渡った。
別になんということもないのにな。
すると橋のたもとでしり込みしていた連中が一斉に「おおっ」と声をあげたので、振り返ってみると大蛇はどこかに消えていたんだ。
・・・・
唐橋を渡ってしばらく歩くと、琵琶湖が一望できる。ここで保久が言った。
「おかしいなあ・・藤太さん、琵琶湖には蟲は仕掛けられていませんよ」
「確かか?もっとよく確かめてみろ」
保久は琵琶湖をぐるりと見渡し、さらに琵琶湖周辺の景色を見渡していた。
そして突然「うわわあ!!」と、叫んだんだ。
「藤太さん、あれはヤバいよ。俺はあんなのは今まで見たことない。いくらなんでもヤバすぎる」
そういいながら、指さした方向には三上山があった。
「どれだ?俺には山しか見えないぞ」
「藤太さん、あれが見えないのか?しかたないなあ」
そういうと持参した薬箱から小瓶を取り出して言った。
「この目薬を差してください。ちょっと沁みますが、少しの間だけ霊視できるようになります」
目薬を差してみると、ちょっとどころか激しく目が痛い。
「んんん・・・保久、なんだこの目薬は?」
「ミョウガの汁ですよ。しばらくして痛みが引いたら、もう一度三上山を見てください」
俺はもう一度、三上山を眺めてみた。それは・・さすがの俺も驚く光景だったぜ。
最初は蛇がとぐろを巻いているのかと思ったが、そうではない。
ムカデだ。巨大なムカデが、三上山を七巻き半していたんだ。
「保久、あれは何だ?」
「藤太さん、あれが蟲ですよ。しかしあんな巨大なのは見たことありません」
「なんであれは動かないんだ」
「あれほどの蟲を操るには、超人的な霊力が必要でしょう。体力も激しく消耗します。つまり今は術者が休んでいるんですよ」
「今のうちに三上山に登って、あのムカデを殺すことは可能か?」
「無理です。今は三上山と一体化していますからね。蟲が動き出してからでないと無理ですが・・」
そこまで言うと保久は次の言葉を飲んだ。
「保久、いま何を言おうとした?」
「・・あれが動き出したら、藤太さん、あんたでも無理だ。。」
そして、瀬田川にかかる大橋である瀬田の唐橋が近江国の入り口だ。
俺と保久も例に漏れず、瀬田の唐橋を目指して歩いていた。
ところが瀬田の唐橋が近づくにつれ、なぜか大渋滞なんだ。
もちろん当時は自動車なんかなかったから、歩く人々が渋滞しているんだよ。
俺はこういう性格だしさ、根気よく渋滞解消を待つなんてことはできない。
人波をかき分けてずんずんと唐橋に進んだんだね。
橋が見えるとこっち側の奴らも、向こう側の連中も、みんな橋のたもとで立ち止まって、わいわい騒いでいるんだ。
なんでとっとと渡らないのかといいうと、橋の真ん中に大蛇が横たわっていたんだな。
お前らは大蛇といわれて、アナコンダとかニシキヘビみたいなのを想像したかもしれないが、ぜんぜん違う。
お前らにも分かりやすいビジュアルで説明するとだな、俺が現代に来てからハマったマンガ『ドラゴンボール』だ。
あれに出て来る神龍。あれがかなり似ているな。
四本の脚があって、角が生えていて、目が赤く光っている。
まあそんなのが橋の真ん中で寝そべっていたんだよ。
しかしまあ、女子供ならいざ知らず大の男まで、中には立派な武者装束の奴も居るのにね、何をビクついているのか呆れたものさ。
「保久、行くぞ」
と、声をかけたんだが、保久までしり込みしてやがる。
俺はもう馬鹿らしくなってきて、ひとりで橋の真ん中まで歩いて行って、大蛇を踏みつけて向こうまで渡った。
別になんということもないのにな。
すると橋のたもとでしり込みしていた連中が一斉に「おおっ」と声をあげたので、振り返ってみると大蛇はどこかに消えていたんだ。
・・・・
唐橋を渡ってしばらく歩くと、琵琶湖が一望できる。ここで保久が言った。
「おかしいなあ・・藤太さん、琵琶湖には蟲は仕掛けられていませんよ」
「確かか?もっとよく確かめてみろ」
保久は琵琶湖をぐるりと見渡し、さらに琵琶湖周辺の景色を見渡していた。
そして突然「うわわあ!!」と、叫んだんだ。
「藤太さん、あれはヤバいよ。俺はあんなのは今まで見たことない。いくらなんでもヤバすぎる」
そういいながら、指さした方向には三上山があった。
「どれだ?俺には山しか見えないぞ」
「藤太さん、あれが見えないのか?しかたないなあ」
そういうと持参した薬箱から小瓶を取り出して言った。
「この目薬を差してください。ちょっと沁みますが、少しの間だけ霊視できるようになります」
目薬を差してみると、ちょっとどころか激しく目が痛い。
「んんん・・・保久、なんだこの目薬は?」
「ミョウガの汁ですよ。しばらくして痛みが引いたら、もう一度三上山を見てください」
俺はもう一度、三上山を眺めてみた。それは・・さすがの俺も驚く光景だったぜ。
最初は蛇がとぐろを巻いているのかと思ったが、そうではない。
ムカデだ。巨大なムカデが、三上山を七巻き半していたんだ。
「保久、あれは何だ?」
「藤太さん、あれが蟲ですよ。しかしあんな巨大なのは見たことありません」
「なんであれは動かないんだ」
「あれほどの蟲を操るには、超人的な霊力が必要でしょう。体力も激しく消耗します。つまり今は術者が休んでいるんですよ」
「今のうちに三上山に登って、あのムカデを殺すことは可能か?」
「無理です。今は三上山と一体化していますからね。蟲が動き出してからでないと無理ですが・・」
そこまで言うと保久は次の言葉を飲んだ。
「保久、いま何を言おうとした?」
「・・あれが動き出したら、藤太さん、あんたでも無理だ。。」
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