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近江の国へ旅に出る
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ある日のことだ。
俺は村雄から「話がある」と呼び出された。
「藤太、お前も立派な若者になった。そろそろ将来のためにも他国を見歩いてはどうか?」
親父の本音はよくわかっている。
俺の都での妖魔ハンティングは、傍目には辻斬りとそう変わらんからな。
諸方面からのクレームが多すぎて、親父は頭を痛めていたことだろう。
なんとか体裁を付けて、乱暴者の放蕩息子を他国に追いやりたいわけだ。
しかしこれは渡りに船というやつだ。
例の餓鬼騒動の元凶を探るチャンスだからな。
「父上様、それなら私は近江国へ参りたいと思います」
あまりに素直に言うことを聞くもんで、親父はきょとんとしていたな。
「ふむ、近江国か。いいだろう。餞に何かくれてやるが、所望するものはあるか?」
と聞くので俺は神棚を指さして言ってやった。
「あの神弓を所望いたします」
親父は少々意外だったようで
「何?あの弓が欲しいのか?くれてやってもいいが、あれは使えんぞ。人の力で引ける弓ではないからな。昔、力自慢の男たちが5人がかりで試してみたが、ビクともしなかったほどのものだ」
俺は神棚に一礼してから弓を手に取り、ビーン、ビーンと音を立てて2、3回引いて見せた。
親父は目を丸くして驚いていたね。
「お前は幼少のころより怪力の持ち主だったが、今では神力の粋だな。よかろう。その弓はくれてやる」
こうして俺は日本一の強弓を手に入れたわけだ。
お前らの好きそうな言葉でいうなら、アイテムゲットって感じか?
まあ武器ゲットだな。
近江国へ旅立つにあたり、俺は不良陰陽師の賀茂保久を連れて行くことにした。
保久の勤務する陰陽寮という官僚機関は、現代風にいうと理系のエリート集団だ。
数学、天文学、医学、薬学に関する膨大な知識を要する。
あらゆる理系学問に秀でた者でなければ、とても勤まらない職場だ。
保久はそのエリート集団の中にあって、これも現代風にいうなら、落ちこぼれの窓際族というやつだ。
賀茂家のコネで入寮したものの、学問のほうはいまひとつのため閑職に追いやられていた。
ただひとつ秀でたものといえば、天性の霊視能力だ。
こればかりは勉強すれば身に着くというものではない。
だから保久はどうせ暇だし、連れて行けば何かの役に立つかもしれんと思ったんだ。
まあこんないきさつから、俺と保久は近江国へ旅立つことになったわけだが、そこには俺が生涯出会ったバケモノの中でも最大級の奴が待っていたんだ。
俺は村雄から「話がある」と呼び出された。
「藤太、お前も立派な若者になった。そろそろ将来のためにも他国を見歩いてはどうか?」
親父の本音はよくわかっている。
俺の都での妖魔ハンティングは、傍目には辻斬りとそう変わらんからな。
諸方面からのクレームが多すぎて、親父は頭を痛めていたことだろう。
なんとか体裁を付けて、乱暴者の放蕩息子を他国に追いやりたいわけだ。
しかしこれは渡りに船というやつだ。
例の餓鬼騒動の元凶を探るチャンスだからな。
「父上様、それなら私は近江国へ参りたいと思います」
あまりに素直に言うことを聞くもんで、親父はきょとんとしていたな。
「ふむ、近江国か。いいだろう。餞に何かくれてやるが、所望するものはあるか?」
と聞くので俺は神棚を指さして言ってやった。
「あの神弓を所望いたします」
親父は少々意外だったようで
「何?あの弓が欲しいのか?くれてやってもいいが、あれは使えんぞ。人の力で引ける弓ではないからな。昔、力自慢の男たちが5人がかりで試してみたが、ビクともしなかったほどのものだ」
俺は神棚に一礼してから弓を手に取り、ビーン、ビーンと音を立てて2、3回引いて見せた。
親父は目を丸くして驚いていたね。
「お前は幼少のころより怪力の持ち主だったが、今では神力の粋だな。よかろう。その弓はくれてやる」
こうして俺は日本一の強弓を手に入れたわけだ。
お前らの好きそうな言葉でいうなら、アイテムゲットって感じか?
まあ武器ゲットだな。
近江国へ旅立つにあたり、俺は不良陰陽師の賀茂保久を連れて行くことにした。
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あらゆる理系学問に秀でた者でなければ、とても勤まらない職場だ。
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