上 下
7 / 61
日本

敗残兵、日本に帰る

しおりを挟む
 ・・・タカと別れてから2年後・・・・

 バンコクの私と中田さんの土産物店はすっかり経営が行き詰まっておりました。

 当初まずまずのスタートを切ったこのお店もしばらくすると問題が山積みになり、遂に累積赤字が膨らみ始めておりました。

  
「トミーさん。どうします?」

 タニヤの居酒屋での重役会議(?)で中田さんが聞きます。

「う~ん。タイ人の店員もどんどん扱いにくくなってますし、赤字もふえてますからねえ」

「これ以上、赤字が膨らむとヤケドしますよ」

「やっぱり商売は日本でやる方が堅いですかね」

「やめますか?」

「やめましょう!」

 というわけで敗残兵トミーはまたまた日本へ。。


 さて、帰国したものの・・・当座の食い扶持を稼ぐ方法といえば私に思いつくのは

 あの露店です。

「よし、お店を出しに行こう!」

 懐かしの露店街。宮城さんの姿を探します。

 ・・・「あ、宮城さん!」

「ん?あ!冨井さんか?ひさしぶりだなあ。どうした?」

「はあ、実はバンコクの店を閉めてきましたのでまたこっちに出させて欲しいんですけど」

「おお、そうか。それは構わんよ。明日からでも出してくれ。それよりなあ・・」

 宮城さんが何か言いかけたとき。


「師匠おお~っ!!」遠くから呼ぶ声が?あの声はまさか・・。

「・・・・いやあ、タカもね、戻ってきてるんだよ・・・・」

  
 たこ焼き屋台からタカが走ってきます。

「師匠!おかえりなさい!!」

「タカ。お前どうしたの?就職したんだろう?」

「押忍。でもすぐ辞めちゃったんですよ」


 タカの話によると勤めだして3ヶ月ほどは一生懸命真面目に働いていたのですが、ひとりの先輩社員の新人いびりが激しく・・ついカッとなってボディに軽く入れたところ、先輩は悶絶・・・会社で問題になり辞めざるを得なくなったそうです。

「まあ、むこうが悪いんですから。オレは別に気にしてないし」

 う~ん。がっかりするやら・・でも思わぬ弟子との再会はうれしくもあり。

  

「それより師匠。技を見てください。稽古は欠かしてませんから」

「おおそうか。うん。見せてみろ」

  

 タカはその場で構えるとシャドウボクシングのように突き蹴りのコンビネーションを始めます・・・スゴイ・・・以前にも増してハイスピード。

 素早く左右足をスイッチしての連続蹴り・・・以前はバラバラだったパンチと蹴りのコンビネーションがなめらかに一体化しております。

 最後に気合をいれて残心・・「押忍。どうですか?」

  

「すごく上達してるよ、タカ。どこか道場に通っているのかい?」

「なに言ってるんですか。オレは師匠の弟子ですよ。勝手に他の道場に行けるわけないじゃないですか」

「・・・・タカ・・・」

 私はこの言葉に思わず胸がつかえて声がでませんでした。

 ・・・二年もほったらかしだった私を今でも師であると思ってくれているのか・・。

  

 ま、このころのタカはこんなしおらしいことも言ったものですが最近では・・・

 私がちょっともたつくと「師匠はでぶだから邪魔!どいて」

 それでもまだもたついていると「おい、でぶ!どけっ!」

 ・・・って。仮にも師匠に向かってでぶはないだろう。でぶはっ!

  

 とにかく技の上達ぶりは素晴らしく、おそらく組手では私は二度とタカに勝つことは出来ないだろうと思いました。

 またタカは私の言い付けどおり、かなりの読書量をこなしたらしくずいぶん知的なことも言うようになってきました。

 もう彼も二十歳です。成長しています。
  

 ・・・が、たったひとつ成長していなかったのは・・・すぐキレること。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

パラダイス・ロスト

真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。 ※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。

僕とコウ

三原みぱぱ
ライト文芸
大学時代の友人のコウとの思い出を大学入学から卒業、それからを僕の目線で語ろうと思う。 毎日が楽しかったあの頃を振り返る。 悲しいこともあったけどすべてが輝いていたように思える。

編集プロダクション・ファルスの事件記事~ハーレム占い師のインチキを暴け!~

ずいずい瑞祥
ライト文芸
編集プロダクション・ファルスに持ち込まれた一通の手紙。そこには、ある女性からのSOSが隠されていた。 彼女は男性占い師に軟禁され、複数の女性達と共同生活をしているらしい。手紙の女性を連れ出すため、ファルス社員の織田朔耶は潜入取材を決行する。 占い師・天野はしかるべきところで修行した僧侶でもあり、加持で病気平癒や魔の退治を行っているという。徐々に天野に惹かれ始める織田。これは洗脳なのか、それとも? 道化芝居(ファルス)、ここに開幕!

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

空の蒼 海の碧 山の翠

佐倉 蘭
ライト文芸
アガイティーラ(ティーラ)は、南島で漁師の家に生まれた今年十五歳になる若者。 幼い頃、両親を亡くしたティーラは、その後網元の親方に引き取られ、今では島で一目置かれる漁師に成長した。 この島では十五歳になる若者が海の向こうの北島まで遠泳するという昔ながらの風習があり、今年はいよいよティーラたちの番だ。 その遠泳に、島の裏側の浜で生まれ育った別の網元の跡取り息子・クガニイルも参加することになり… ※毎日午後8時に更新します。

坂の上の本屋

ihcikuYoK
ライト文芸
カクヨムのお題企画参加用に書いたものです。 短話連作ぽくなったのでまとめました。 ♯KAC20231 タグ、お題「本屋」  坂の上の本屋には父がいる ⇒ 本屋になった父親と娘の話です。 ♯KAC20232 タグ、お題「ぬいぐるみ」  坂の上の本屋にはバイトがいる ⇒ 本屋のバイトが知人親子とクリスマスに関わる話です。 ♯KAC20233 タグ、お題「ぐちゃぐちゃ」  坂の上の本屋には常連客がいる ⇒ 本屋の常連客が、クラスメイトとその友人たちと本屋に行く話です。 ♯KAC20234 タグ、お題「深夜の散歩で起きた出来事」  坂の上の本屋のバイトには友人がいる ⇒ 本屋のバイトとその友人が、サークル仲間とブラブラする話です。 ♯KAC20235 タグ、お題「筋肉」  坂の上の本屋の常連客には友人がいる ⇒ 本屋の常連客とその友人があれこれ話している話です。 ♯KAC20236 タグ、お題「アンラッキー7」  坂の上の本屋の娘は三軒隣にいる ⇒ 本屋の娘とその家族の話です。 ♯KAC20237 タグ、お題「いいわけ」  坂の上の本屋の元妻は三軒隣にいる ⇒ 本屋の主人と元妻の話です。

処理中です...