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第二章 桜吹雪の男
外道ふたたび蔓延る
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浅草の的矢「あたりや」の奥にある控え部屋。
「まあ一杯飲んでくれ。俺はここの用心棒やってる三浦源三郎ってもんだ」
源三郎は店の娘に運ばせた酒を金さんと名乗る男のぐい飲みに注いだ。
店の娘は若い男前の金さんに酌をしたがったのだが、源三郎が追い払ったのだ。
「ああ、これはどうも。遠山金四郎です。しかしどうして私が侍だとわかったんですか?」
「そりゃ弓矢の構えを見りゃ武芸を嗜んだ者であるくらいわかるさ。それにその髷も町人風に結ってはいるが、よく見ると武家髷を崩したもんだろ」
金四郎はにやりと笑い酒を旨そうに煽ると、源三郎に返杯した。
「席を変えてもらって助かります。どうか私が侍だということは、店の方には内緒にしといてください。これから遊びにくくなっちまうんで」
「それにしてもなんだって、そんな博徒みたいな恰好してるんだい?さっきちらりと見えたが立派な彫り物背負ってるようだな。それも暦とした博徒彫りだ」
金四郎は今度は照れたように笑う。実に笑顔の良く似合う男である。
そして片袖を肩口まで捲り上げる。そこには見事な桜吹雪の彫り物があった。
「さっきの連中と同じですよ。旗本の放蕩息子がやることも無くぶらぶらと遊んでいるうちに博徒の悪友ができましてね、こんな悪戯までしてしまいました」
金四郎はそう言って袖を下した。
「ふーん、結構な身分だな。俺のような日銭にも困って的矢の用心棒で暮らしている浪人者からすりゃ、羨ましい限りだぜ」
「確かにそうなんでしょうな。しかしやらなければならない事が何も無いというのも退屈なものでしてね。旗本たって戦がなけりゃ名ばかりだ。かといって博徒にまみれてみても博徒にはなれない。私は一体何者なんでしょうね」
話を聞いてみると、結構なご身分に思える旗本の放蕩息子にもそれなりの悩みや葛藤があるらしい。
「まあ遊べるうちに遊んどけばいいんじゃねえか?男が命を賭けてやるべき仕事なんざ、いつ現れるか知れねえんだしな」
源三郎がそう言うと、金四郎はふたたび爽やかな笑顔で応えた。
「そうさせてもらいます。あ、これからも表立っては、あっしは遊び人の金の字でおねげえします」
--------------------------------------------------------
夕暮れ時、源三郎は松岡幸助の家に立ち寄っていた。
「遠山金四郎か。元長崎奉行・遠山景晋の倅だな。金四郎は景晋の実子なんだが、景晋の養父の倅が義兄という複雑な家でな。その兄貴のおかげで何のお役も無く、家を出て遊侠の徒と交わり遊び歩いている典型的な不良旗本だよ」
さすがに幸助は諸事によく通じている。
「旗本なのに博徒の姿をして遊び歩いてるの?彫り物まで入れて。へんな人ねえ」
茶を運んできた幸助の妹、静音が言った。
「いや、それがなかなかの二枚目でな。しかも威勢が良くてちょいとやくざで、ありゃ女がほっとかねえぜ。お静ちゃんも一目惚れするかもな」
源三郎がそう言うと、静音は源三郎の前に湯呑を叩きつけるように置いた。
「うわ、茶がこぼれるじゃねえか。乱暴だな」
「私はやくざも放蕩息子も嫌いなの。それにそのお静ちゃんというのも止めてって何度言ったら分かるの」
静音は唇を尖らせて、ぷいと横を向くと部屋を出て行った。
幸助はその後ろ姿を優しく微笑みながら見送ると、源三郎に向き直る。
「ところで源三郎。どうやら最近、黒河豚一家の残党どもがまたぞろ悪どいことを始めたようでな。まだ勢力は小さいし、他の一家とのせめぎ合いもあるが、駒三の手口に倣ってイカサマ賭場を開いたり、お上に取り入ろうと画策しているようなんだ」
「ふん、懲りねえ野郎どもだな。そいつらの親玉は誰だ?」
「鼬の清次郎とかいったな」
「清次郎か。黒河豚では箸にも引っかからねえような小物だったが、一端に親分面してやがんのかい」
「だから蝮の松吉とも揉めてるようだね」
「そうか。じゃあひとまず俺は松吉のところで様子を聞いてみることにしよう」
蝮の松吉は深川で一家を構えていた。
一家とは言ってもかつての黒河豚一家のような大所帯でなく、小さな家に子分は河豚善に居た半助ただひとりだ。
源三郎が顔を出すと、松吉が快く出迎えた。
「三浦先生、よくお越しやした。どうぞお入り下せえ。おう半助、先生に酒をお出ししな」
「親分、すいやせん。酒を切らしておりまして」
「馬鹿野郎!急いで買って来い」
蝮一家はあまり豊かな所帯ではなさそうである。
「ああ気を遣わねえでくれ。今日は十分飲んできたからな。それよりおめえ最近はどうしてる?」
「へえ、近所の寺で小さな賭場を開帳しておりやす。あっしは根っから博徒ですからね、これが本門でさあ」
「黒河豚みたいな阿漕なことやってねえだろうな?」
「それならもっといい暮らししていますぜ。あっしは駒三親分ほどは欲がねえんでさあ」
確かに以前から、松吉は筋金の入った侠客であった。
黒河豚一家のころは、それなりに冷徹で悪どいこともやってはいたが、それは親分に対する義理のためだ。
一本立ちした今となっては、人様を泣かせてまで金を稼ごうとは思わないのだ。
「鼬の清次郎はどうしてる?悪い噂を聞いたのだがな」
松吉はあからさまに嫌悪感を顔に出した。
「あの野郎はやくざの風上にもおけねえ野郎でさあ。仁義のひとかけらもねえ。駒三親分の悪いところだけ集めたような男でしてね」
「黒河豚一家のころには誰も気にもとめねえ小物だったように思うがな」
「へえ、それが今じゃ義理のある兄貴分や世話になった親分衆の縄張りを荒らしておりやす。ウチの縄張りにも何度か手を出しやがった」
「そんなことしたんじゃ、渡世では只じゃ済まねえだろう?なんであんな小物にそんな真似できるんだ」
松吉は眉をひそめた。
「後ろ盾が居るんですよ。岡田の後釜で奉行になった田村兵庫です。岡田の利得を傍らで見ていたので、それをそっくりいただこうと清次郎を手駒にしたんでさあ」
「なるほど。どうにも町奉行になろうって野郎は碌なのが居ねえようだな」
「まったくで。しかし連中も岡田や駒三親分に成り代わるには、気が気じゃねえ心配事がございやして」
「・・・紅烏か」
「へい」
空を飛び回り、神出鬼没の紅烏の存在は、彼らにとっては目の上のたん瘤であろう。
ならばその対策も考えているはずだ。
「面白い。ちょっと清次郎の賭場でも覗いてみるとするか」
「まあ一杯飲んでくれ。俺はここの用心棒やってる三浦源三郎ってもんだ」
源三郎は店の娘に運ばせた酒を金さんと名乗る男のぐい飲みに注いだ。
店の娘は若い男前の金さんに酌をしたがったのだが、源三郎が追い払ったのだ。
「ああ、これはどうも。遠山金四郎です。しかしどうして私が侍だとわかったんですか?」
「そりゃ弓矢の構えを見りゃ武芸を嗜んだ者であるくらいわかるさ。それにその髷も町人風に結ってはいるが、よく見ると武家髷を崩したもんだろ」
金四郎はにやりと笑い酒を旨そうに煽ると、源三郎に返杯した。
「席を変えてもらって助かります。どうか私が侍だということは、店の方には内緒にしといてください。これから遊びにくくなっちまうんで」
「それにしてもなんだって、そんな博徒みたいな恰好してるんだい?さっきちらりと見えたが立派な彫り物背負ってるようだな。それも暦とした博徒彫りだ」
金四郎は今度は照れたように笑う。実に笑顔の良く似合う男である。
そして片袖を肩口まで捲り上げる。そこには見事な桜吹雪の彫り物があった。
「さっきの連中と同じですよ。旗本の放蕩息子がやることも無くぶらぶらと遊んでいるうちに博徒の悪友ができましてね、こんな悪戯までしてしまいました」
金四郎はそう言って袖を下した。
「ふーん、結構な身分だな。俺のような日銭にも困って的矢の用心棒で暮らしている浪人者からすりゃ、羨ましい限りだぜ」
「確かにそうなんでしょうな。しかしやらなければならない事が何も無いというのも退屈なものでしてね。旗本たって戦がなけりゃ名ばかりだ。かといって博徒にまみれてみても博徒にはなれない。私は一体何者なんでしょうね」
話を聞いてみると、結構なご身分に思える旗本の放蕩息子にもそれなりの悩みや葛藤があるらしい。
「まあ遊べるうちに遊んどけばいいんじゃねえか?男が命を賭けてやるべき仕事なんざ、いつ現れるか知れねえんだしな」
源三郎がそう言うと、金四郎はふたたび爽やかな笑顔で応えた。
「そうさせてもらいます。あ、これからも表立っては、あっしは遊び人の金の字でおねげえします」
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夕暮れ時、源三郎は松岡幸助の家に立ち寄っていた。
「遠山金四郎か。元長崎奉行・遠山景晋の倅だな。金四郎は景晋の実子なんだが、景晋の養父の倅が義兄という複雑な家でな。その兄貴のおかげで何のお役も無く、家を出て遊侠の徒と交わり遊び歩いている典型的な不良旗本だよ」
さすがに幸助は諸事によく通じている。
「旗本なのに博徒の姿をして遊び歩いてるの?彫り物まで入れて。へんな人ねえ」
茶を運んできた幸助の妹、静音が言った。
「いや、それがなかなかの二枚目でな。しかも威勢が良くてちょいとやくざで、ありゃ女がほっとかねえぜ。お静ちゃんも一目惚れするかもな」
源三郎がそう言うと、静音は源三郎の前に湯呑を叩きつけるように置いた。
「うわ、茶がこぼれるじゃねえか。乱暴だな」
「私はやくざも放蕩息子も嫌いなの。それにそのお静ちゃんというのも止めてって何度言ったら分かるの」
静音は唇を尖らせて、ぷいと横を向くと部屋を出て行った。
幸助はその後ろ姿を優しく微笑みながら見送ると、源三郎に向き直る。
「ところで源三郎。どうやら最近、黒河豚一家の残党どもがまたぞろ悪どいことを始めたようでな。まだ勢力は小さいし、他の一家とのせめぎ合いもあるが、駒三の手口に倣ってイカサマ賭場を開いたり、お上に取り入ろうと画策しているようなんだ」
「ふん、懲りねえ野郎どもだな。そいつらの親玉は誰だ?」
「鼬の清次郎とかいったな」
「清次郎か。黒河豚では箸にも引っかからねえような小物だったが、一端に親分面してやがんのかい」
「だから蝮の松吉とも揉めてるようだね」
「そうか。じゃあひとまず俺は松吉のところで様子を聞いてみることにしよう」
蝮の松吉は深川で一家を構えていた。
一家とは言ってもかつての黒河豚一家のような大所帯でなく、小さな家に子分は河豚善に居た半助ただひとりだ。
源三郎が顔を出すと、松吉が快く出迎えた。
「三浦先生、よくお越しやした。どうぞお入り下せえ。おう半助、先生に酒をお出ししな」
「親分、すいやせん。酒を切らしておりまして」
「馬鹿野郎!急いで買って来い」
蝮一家はあまり豊かな所帯ではなさそうである。
「ああ気を遣わねえでくれ。今日は十分飲んできたからな。それよりおめえ最近はどうしてる?」
「へえ、近所の寺で小さな賭場を開帳しておりやす。あっしは根っから博徒ですからね、これが本門でさあ」
「黒河豚みたいな阿漕なことやってねえだろうな?」
「それならもっといい暮らししていますぜ。あっしは駒三親分ほどは欲がねえんでさあ」
確かに以前から、松吉は筋金の入った侠客であった。
黒河豚一家のころは、それなりに冷徹で悪どいこともやってはいたが、それは親分に対する義理のためだ。
一本立ちした今となっては、人様を泣かせてまで金を稼ごうとは思わないのだ。
「鼬の清次郎はどうしてる?悪い噂を聞いたのだがな」
松吉はあからさまに嫌悪感を顔に出した。
「あの野郎はやくざの風上にもおけねえ野郎でさあ。仁義のひとかけらもねえ。駒三親分の悪いところだけ集めたような男でしてね」
「黒河豚一家のころには誰も気にもとめねえ小物だったように思うがな」
「へえ、それが今じゃ義理のある兄貴分や世話になった親分衆の縄張りを荒らしておりやす。ウチの縄張りにも何度か手を出しやがった」
「そんなことしたんじゃ、渡世では只じゃ済まねえだろう?なんであんな小物にそんな真似できるんだ」
松吉は眉をひそめた。
「後ろ盾が居るんですよ。岡田の後釜で奉行になった田村兵庫です。岡田の利得を傍らで見ていたので、それをそっくりいただこうと清次郎を手駒にしたんでさあ」
「なるほど。どうにも町奉行になろうって野郎は碌なのが居ねえようだな」
「まったくで。しかし連中も岡田や駒三親分に成り代わるには、気が気じゃねえ心配事がございやして」
「・・・紅烏か」
「へい」
空を飛び回り、神出鬼没の紅烏の存在は、彼らにとっては目の上のたん瘤であろう。
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