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さらば、スリランカ
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・・・バンコクに戻る
そう決めた私の行動は速かったです。
早速、バンコク行きの飛行機を予約してから道場の残務整理。
これはほとんどデワに移譲しました。
カッサバ先生に挨拶に行きました。
「カッサバ先生、今回のスリランカでの任務は先生の教え無しでは到底無理でした。先生の教えに何度助けられたか知れません。ありがとうございました」
カッサバ先生はニッコリと微笑んで言いました。
「それはよかったです。私もあなたが悩んでいる風なのを見て説法いたしましたが、あなたの働きのおかげで少しは僧侶としての努めを果たせたと喜んでいますよ」
そして少し間をおいて話を付け加えました。
「お役に立てたのでしたら、お布施はアズ・ユー・ライクでお願いします」
・・・・
**ホテルに戻るとデワがロビーに居ました。
「センパイ、道場生リストをFAXして、中川先生に電話しておきました。先生喜んでましたよ~トミーなら必ずやり切ると信じてたって。さすが俺の見込んだ男だって褒めてました」
・・・本当かよ。あの先生いい加減だからなあ。。
バタバタしているうちに出発の日が来ました。
**ホテルのロビーに、デワ、ニコラ、ボウイが見送りに出ています。
バトウ先生は外せない用事があり、来ていませんでした。
私は空港まで送られるのは苦手だったので、ここで見送ってもらうことにしたのです。
「デワ、あとのことはお前に任せた。道場を大きくするのも潰すのもお前しだいだよ。別に潰しても中川先生はともかく僕は怒らないから」
「いやだなあセンパイ。潰しませんよ。次にセンパイが来るときにはもっと大きくしていますよ」
次はボウイです。
「ボウイ、お前の面倒はあまり見てやれなかったけど、ニコラ戦での大活躍は忘れないよ」
ボウイとの出会い、一緒にデモンストレーションしたこと、ニコラ戦での奮闘、すべてが遠い昔の出来事のようです。
「そうだこの野郎、俺の顔にスイカ袋押し付けてぎゅうぎゅうやりやがった。ひどい目にあわせやがって!」
これはニコラです。ボウイは首をすくめました。
「しかし、俺を相手にあれだけのことをやってのけたのは大したタマだよ。俺がボウイを仕込んでやるからトミー、お前は安心して行け」
「ニコラ頼むよ。一度はやりあったけど、いろいろ世話になったな」
ボウイがしんみりした表情で私に言いました。
「トミーセンパイ・・・またスリランカに戻ってきてくれますよね?」
「ああ、いつかまたな。そのときにはもっと強くなってろよ」
ボウイにはそう言いましたが、これは嘘でした。
私はもう二度と再び、スリランカを訪れることはないと思っていたのです。
それどころか、もうこれで空手はきっぱりやめようと思っていました。
もともと私は空手家ではありません。
私のスリランカでの行動の原動力は、中川先生に命じられた任務を果たすこと。
ただその熱意だけでした。
任務を果たした今、その熱は急速に冷めていました。
もはやスリランカにも、空手にも、なんの未練もありません。
このときの私の頭にあるものは、もはやサトミのことだけでした。
色惚けと笑うなら笑えです。
インドゥルワで見た幻想の未来。
私とサトミとその子供・・・。
私はいつかその子に、スリランカでの思い出を語るんだろうなと考えていました。
スリランカでの奮闘、そしてサトミとの出会いを。
デワが用意したタクシーに乗って空港に向かいます。
そして数時間後にはバンコクへのフライトです。
離陸した飛行機の窓から、椰子の木とバナナのジャングルが見えます。
そしてそれが急速に遠ざかっていきます。
・・・さらば、スリランカ!
そう決めた私の行動は速かったです。
早速、バンコク行きの飛行機を予約してから道場の残務整理。
これはほとんどデワに移譲しました。
カッサバ先生に挨拶に行きました。
「カッサバ先生、今回のスリランカでの任務は先生の教え無しでは到底無理でした。先生の教えに何度助けられたか知れません。ありがとうございました」
カッサバ先生はニッコリと微笑んで言いました。
「それはよかったです。私もあなたが悩んでいる風なのを見て説法いたしましたが、あなたの働きのおかげで少しは僧侶としての努めを果たせたと喜んでいますよ」
そして少し間をおいて話を付け加えました。
「お役に立てたのでしたら、お布施はアズ・ユー・ライクでお願いします」
・・・・
**ホテルに戻るとデワがロビーに居ました。
「センパイ、道場生リストをFAXして、中川先生に電話しておきました。先生喜んでましたよ~トミーなら必ずやり切ると信じてたって。さすが俺の見込んだ男だって褒めてました」
・・・本当かよ。あの先生いい加減だからなあ。。
バタバタしているうちに出発の日が来ました。
**ホテルのロビーに、デワ、ニコラ、ボウイが見送りに出ています。
バトウ先生は外せない用事があり、来ていませんでした。
私は空港まで送られるのは苦手だったので、ここで見送ってもらうことにしたのです。
「デワ、あとのことはお前に任せた。道場を大きくするのも潰すのもお前しだいだよ。別に潰しても中川先生はともかく僕は怒らないから」
「いやだなあセンパイ。潰しませんよ。次にセンパイが来るときにはもっと大きくしていますよ」
次はボウイです。
「ボウイ、お前の面倒はあまり見てやれなかったけど、ニコラ戦での大活躍は忘れないよ」
ボウイとの出会い、一緒にデモンストレーションしたこと、ニコラ戦での奮闘、すべてが遠い昔の出来事のようです。
「そうだこの野郎、俺の顔にスイカ袋押し付けてぎゅうぎゅうやりやがった。ひどい目にあわせやがって!」
これはニコラです。ボウイは首をすくめました。
「しかし、俺を相手にあれだけのことをやってのけたのは大したタマだよ。俺がボウイを仕込んでやるからトミー、お前は安心して行け」
「ニコラ頼むよ。一度はやりあったけど、いろいろ世話になったな」
ボウイがしんみりした表情で私に言いました。
「トミーセンパイ・・・またスリランカに戻ってきてくれますよね?」
「ああ、いつかまたな。そのときにはもっと強くなってろよ」
ボウイにはそう言いましたが、これは嘘でした。
私はもう二度と再び、スリランカを訪れることはないと思っていたのです。
それどころか、もうこれで空手はきっぱりやめようと思っていました。
もともと私は空手家ではありません。
私のスリランカでの行動の原動力は、中川先生に命じられた任務を果たすこと。
ただその熱意だけでした。
任務を果たした今、その熱は急速に冷めていました。
もはやスリランカにも、空手にも、なんの未練もありません。
このときの私の頭にあるものは、もはやサトミのことだけでした。
色惚けと笑うなら笑えです。
インドゥルワで見た幻想の未来。
私とサトミとその子供・・・。
私はいつかその子に、スリランカでの思い出を語るんだろうなと考えていました。
スリランカでの奮闘、そしてサトミとの出会いを。
デワが用意したタクシーに乗って空港に向かいます。
そして数時間後にはバンコクへのフライトです。
離陸した飛行機の窓から、椰子の木とバナナのジャングルが見えます。
そしてそれが急速に遠ざかっていきます。
・・・さらば、スリランカ!
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