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一目惚れ
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その日もいつものように、中華を食べて"CEYLON DELI CABIN"でウェイトレスの女の子たちとおしゃべりしていました。
私はなにしろかわいい女の子たちに囲まれて、ちやほや、ちやほや、されるのが大好きです。
というわけでゴールでの毎日はそれはそれは充実した楽しいものでした。
すっかり空手なんかもうどうでもよくなっていたほどです。
夕暮れ時に"CEYLON DELI CABIN"を出て、夕暮れの海沿いの道をブラブラと散歩します。
慣れたとはいえ、ゴールも日中の暑さは激しいものですが、日が暮れるとずいぶん涼しくなります。
しばらく歩いていると、行く手にひとりの旅行者らしい若い女性が歩いているのが見えました。
彼女は3人のスリランカ人の若い男たちに付きまとわれている様子です。
女性はボーダー柄のTシャツを着て、デニムのパンツを履いています。
背中には小さなバックパック。
そして、黒いショートボブの髪、白い肌。
・・・東洋人だな。日本人?いや、中国人か韓国人かもしれない。
付きまとっている男たちは3人ということはガイドボーイではない。
彼らは必ず単独で声をかけます。
・・・ということはナンパだな。しかし3人でひとりをナンパして、この後どうするつもりなんだろう?
スリランカ野郎のナンパはどうも後先考えてないのが多いのです。
・・・どうしようかな?助けたほうがいいのかな?でも彼女もナンパされて喜んでいるのかもしれないし。
ふと、その女性が手に持っている物に目が留まりました。
黄色と青の本。
・・・ああ、あれはバンコクで僕も買ったガイドブックだ。つまり彼女は日本人なのか。
私はスリランカ滞在の数か月の間、文化三角地帯で日本の仏教系団体のツアーを見かけた以外に、日本人旅行者には一度も出会いませんでした。
内戦の影響で観光客が激減しているスリランカでは、それでも西洋人旅行者はよく見かけたのですが。
・・・まあ同胞のピンチかもしれないなら、ちょっと声かけてみるか。
私は前を行く女性と、付きまとう男たちのところまで早足で近づくと、日本語で女性に聞きました。
「助けたほうがいいですか?」
女性は小声で
「お願いします・・・」
その声を聞いた私はシンハラ語で男たちに言いました。
「僕の妻に何か用か?」
男たちはヘラヘラと愛想笑いを浮かべて、私たちから離れて行きました。
・・・・・
「すみません、助かりました。ありがとうございます」
「いいえ、ひょっとしたら困ってるかなと思って。ここの連中はしつこいから」
女性はクスクスと笑いながら言いました。
「ええ、本当に。それにスリランカの男性って5分も話したら、今夜君の部屋に行ってもいいか・・って言いますよね」
スリランカを旅した経験のある女性に聞くと、たいていはこのスリランカ人男性の強引なナンパを経験しているようです。
それゆえ、スリランカ人男性はラテン男のように女好きが多いのかと思われがちですが、ラティーノとはおそらくちょっと事情が違います。
一口で言うと、スリランカ人の若い男性は女に飢えているのです。
今は多少は開放的になっているとも聞きますが、当時のスリランカはまだ宗教的にも性モラルが厳しく、スリランカ人の未婚の男女が肉体関係を持つということは非常にふしだらと見られていました。
なので、スリランカ人男性がスリランカ人女性をナンパして関係を持つというのは、とても困難なことなのです。
そこでターゲットになるのが外国人女性。
彼らは外国人はフリーセックスだと思っていますので、強引に押せば、下司な言い方ですがヤラせてくれると考えているフシがあります。
「ええ、女性の一人旅だといろいろ大変なことも多いでしょうね。あ、僕はトミーといいます」
「私はサトミです。トミーさん?本名ですか?」
「本名です。もっとも苗字なんですよ。冨井です」
「ああなるほど」と言ってクスクス笑います。
「トミーさん、シンハラ語が喋れるんですね。スリランカは長いんですか?」
「ええ、仕事でコロンボに滞在していましたので片言なんですが」
そう言いながら、私は胸がドキドキと10代の思春期の少年のように高鳴るのを感じていました。
・・・この娘、カワイイぞ!
スリランカ女性のような美人顔ではありませんが、親しみやすそうなふっくらした顔立ち。
それにTシャツからチラリと覗く胸元の白さがとても新鮮です。
今にして思えば、私はスリランカに来てからこっち、大変に禁欲的な生活を送っていました。
男性の友人はたくさんできましたが、女性と触れ合う機会などほとんどなく、だからこそゴールでウェイトレスたちとの他愛もない会話にハマっていたのです。
私もスリランカの男性同様に、女性に飢えていたのが大きかったのかもしれません。
しかし、その時の私はこう考えていました。
・・・僕は今、恋に落ちた!彼女に一目惚れしてしまった。
私はなにしろかわいい女の子たちに囲まれて、ちやほや、ちやほや、されるのが大好きです。
というわけでゴールでの毎日はそれはそれは充実した楽しいものでした。
すっかり空手なんかもうどうでもよくなっていたほどです。
夕暮れ時に"CEYLON DELI CABIN"を出て、夕暮れの海沿いの道をブラブラと散歩します。
慣れたとはいえ、ゴールも日中の暑さは激しいものですが、日が暮れるとずいぶん涼しくなります。
しばらく歩いていると、行く手にひとりの旅行者らしい若い女性が歩いているのが見えました。
彼女は3人のスリランカ人の若い男たちに付きまとわれている様子です。
女性はボーダー柄のTシャツを着て、デニムのパンツを履いています。
背中には小さなバックパック。
そして、黒いショートボブの髪、白い肌。
・・・東洋人だな。日本人?いや、中国人か韓国人かもしれない。
付きまとっている男たちは3人ということはガイドボーイではない。
彼らは必ず単独で声をかけます。
・・・ということはナンパだな。しかし3人でひとりをナンパして、この後どうするつもりなんだろう?
スリランカ野郎のナンパはどうも後先考えてないのが多いのです。
・・・どうしようかな?助けたほうがいいのかな?でも彼女もナンパされて喜んでいるのかもしれないし。
ふと、その女性が手に持っている物に目が留まりました。
黄色と青の本。
・・・ああ、あれはバンコクで僕も買ったガイドブックだ。つまり彼女は日本人なのか。
私はスリランカ滞在の数か月の間、文化三角地帯で日本の仏教系団体のツアーを見かけた以外に、日本人旅行者には一度も出会いませんでした。
内戦の影響で観光客が激減しているスリランカでは、それでも西洋人旅行者はよく見かけたのですが。
・・・まあ同胞のピンチかもしれないなら、ちょっと声かけてみるか。
私は前を行く女性と、付きまとう男たちのところまで早足で近づくと、日本語で女性に聞きました。
「助けたほうがいいですか?」
女性は小声で
「お願いします・・・」
その声を聞いた私はシンハラ語で男たちに言いました。
「僕の妻に何か用か?」
男たちはヘラヘラと愛想笑いを浮かべて、私たちから離れて行きました。
・・・・・
「すみません、助かりました。ありがとうございます」
「いいえ、ひょっとしたら困ってるかなと思って。ここの連中はしつこいから」
女性はクスクスと笑いながら言いました。
「ええ、本当に。それにスリランカの男性って5分も話したら、今夜君の部屋に行ってもいいか・・って言いますよね」
スリランカを旅した経験のある女性に聞くと、たいていはこのスリランカ人男性の強引なナンパを経験しているようです。
それゆえ、スリランカ人男性はラテン男のように女好きが多いのかと思われがちですが、ラティーノとはおそらくちょっと事情が違います。
一口で言うと、スリランカ人の若い男性は女に飢えているのです。
今は多少は開放的になっているとも聞きますが、当時のスリランカはまだ宗教的にも性モラルが厳しく、スリランカ人の未婚の男女が肉体関係を持つということは非常にふしだらと見られていました。
なので、スリランカ人男性がスリランカ人女性をナンパして関係を持つというのは、とても困難なことなのです。
そこでターゲットになるのが外国人女性。
彼らは外国人はフリーセックスだと思っていますので、強引に押せば、下司な言い方ですがヤラせてくれると考えているフシがあります。
「ええ、女性の一人旅だといろいろ大変なことも多いでしょうね。あ、僕はトミーといいます」
「私はサトミです。トミーさん?本名ですか?」
「本名です。もっとも苗字なんですよ。冨井です」
「ああなるほど」と言ってクスクス笑います。
「トミーさん、シンハラ語が喋れるんですね。スリランカは長いんですか?」
「ええ、仕事でコロンボに滞在していましたので片言なんですが」
そう言いながら、私は胸がドキドキと10代の思春期の少年のように高鳴るのを感じていました。
・・・この娘、カワイイぞ!
スリランカ女性のような美人顔ではありませんが、親しみやすそうなふっくらした顔立ち。
それにTシャツからチラリと覗く胸元の白さがとても新鮮です。
今にして思えば、私はスリランカに来てからこっち、大変に禁欲的な生活を送っていました。
男性の友人はたくさんできましたが、女性と触れ合う機会などほとんどなく、だからこそゴールでウェイトレスたちとの他愛もない会話にハマっていたのです。
私もスリランカの男性同様に、女性に飢えていたのが大きかったのかもしれません。
しかし、その時の私はこう考えていました。
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