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任務完了?
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「なあにいい!!トミーお前、破壊王に会っただとおっ!?」
・・・ここは中空会コロンボ支部デワ道場。
出稽古に来ていたニコラが大声で私に怒鳴りつけました。
「僕は帰ってきて早々なのに怒鳴るなよニコラ。破壊王とはヌワラエリヤで会ったよ」
「ヌワラエリヤか・・・くそっ!もう少し足を延ばせばよかったのか」
「うん、そうだったね。それでちょっと立ち合ってきた」
「・・・なにい?」
言うとニコラは私の頭の先から足元までをじっくりと確かめるように眺めました。
「破壊王と立ち合ってきただって?それでお前どこも怪我してないってことはつまり・・・」
ニコラはほとんど泣き出しそうなくらい顔を歪めて、また怒鳴りました。
「トミーっ!てめえ、また何か卑怯な手を使いやがったな!それで勝ったのか?ああ腹立つ」
ニコラはまさに地団駄踏んでます。
「いやあ、別に勝ったとかそんな。軽く手合わせしただけさ」
「ふざけるなトミー!いままで破壊王と手合わせして五体無事で帰れた奴は居ないんだぞ」
身長2mの大男が身を捩らんばかりです。
「俺は悔しいぞお!ずっと恋焦がれていたお嬢さんを、ちょぼい詐欺師のジゴロに持ってかれたくらい悔しいぞおお!」
おお、それはなかなか良い例えです(笑)
本当のことを説明してやろうかとも思いましたが、ニコラが派手に悔しがるのが面白いのでしばらく放置することにしました。
私はなかなか性格が悪いのです。
・・・それより道場のことです。
「なあデワ。この道場生リストだけど、人数増えてないよな」
「はあ・・オス」デワが頼りない返事をします。
「だけどさ、練習生に僕の知らない顔が何人か混じってるんだけど、あれはみんなどこからかの出稽古なの?」
「いや、センパイが居ない間に入ってきた入門生ですね」
「じゃあ、なんでリストに無いのさ」
「あ、ちょっと僕も忙しかったもので、後回しになってたんです」
やはりこうなってたか。
本当にこいつに道場任せて大丈夫なんだろうか?
私は不安になりましたが、それを言いだすと私は一生日本に帰れません。
「とりあえず新入門生全員をリストに載せて、今日中に僕のところに持ってきて」
「オス、では後ほど」
・・・・・
「センパイ、リスト持ってきました」
稽古後に夕食を済ませて部屋で休んでいた時、デワがやってきました。
「おお、ご苦労さん。どれどれ」
私は道場生リストを確認します。
「ええと、おお!結構入門生が増えてるじゃない。バトウ先生の指導が好評だからかな」
「オス、でも辞めた生徒もいますので、それは打消し線を引いてあります」
・・・ふむふむ。
「まあ辞める生徒がいるのはある程度仕方ない。しかし定着率を上げるのは今後の課題だな」
「オス、そうですね」
「えっと、それで結局のところ現在の道場生の総数は・・と。ん?」
道場生の名前を指さしながら人数を数えましたが、これは。
「おい、デワ。これ達成してるじゃない50人!」
「あ、はあ・・・ええ?そうでしたっけ?」
・・・なるほど、そういうことか。
「デワ!お前、達成してるのを僕に隠そうとしてたな」
「いえ、決してそういうわけじゃないです。オス」
明らかにデワは狼狽しています。
「センパイ、達成したといってもまだ定着したわけじゃないですから。まさかもう日本に帰るなんて言わないですよね?」
「いや、帰る。このリストを日本にFAXして、中川先生に電話したら帰る」
「センパイ、お願いします。もう少しだけ、ここの道場運営が安定するまで居てください」
・・・ふう・・・やれやれだ。
「あのなあデワ。僕も正直言って今帰るのは不安だよ。でも、僕がここに居たら、いつまでたってもお前は僕に頼って支部長らしい仕事をやらないだろ。もうここらが潮時だと思うんだ」
「いや、でもほらセンパイ。せっかく僕が手を回してビザの延長したばかりだし、せめてその期間は」
なんとか引き留めようとデワも必死になります。
「ビザか・・そうだな、ビザはたしかにもったいないな」
「え、それじゃ残ってくれるんですか?」
・・・そういうわけじゃない。
「デワ、お前がなんといおうと、スリランカでの僕の任務は終了した。今日をもってこの道場はお前に引き渡す」
「ええ、それじゃあ・・・」
「でも僕はまだ少しスリランカには残るよ。また旅行に出かける。今度は海のほうへ行く、ビーチでのんびり休んでくる」
ビザの残り分、今度こそ本当の休暇を取ろうと思ったのです。
スリランカはビーチリゾートもたいへん有名だったので、そこに行ってないのは心残りだし。
「日本に帰る前には一度こっちに戻る。そのときには僕を安心して日本に帰れるようにしておいてくれ」
「センパ~イ・・・」
デワは思い切り情けない顔で私を見つめますが、これも後輩のためだ。あえて心を鬼にします。
そして明日からは、ビーチだビーチ!ひやっほー!
・・・ここは中空会コロンボ支部デワ道場。
出稽古に来ていたニコラが大声で私に怒鳴りつけました。
「僕は帰ってきて早々なのに怒鳴るなよニコラ。破壊王とはヌワラエリヤで会ったよ」
「ヌワラエリヤか・・・くそっ!もう少し足を延ばせばよかったのか」
「うん、そうだったね。それでちょっと立ち合ってきた」
「・・・なにい?」
言うとニコラは私の頭の先から足元までをじっくりと確かめるように眺めました。
「破壊王と立ち合ってきただって?それでお前どこも怪我してないってことはつまり・・・」
ニコラはほとんど泣き出しそうなくらい顔を歪めて、また怒鳴りました。
「トミーっ!てめえ、また何か卑怯な手を使いやがったな!それで勝ったのか?ああ腹立つ」
ニコラはまさに地団駄踏んでます。
「いやあ、別に勝ったとかそんな。軽く手合わせしただけさ」
「ふざけるなトミー!いままで破壊王と手合わせして五体無事で帰れた奴は居ないんだぞ」
身長2mの大男が身を捩らんばかりです。
「俺は悔しいぞお!ずっと恋焦がれていたお嬢さんを、ちょぼい詐欺師のジゴロに持ってかれたくらい悔しいぞおお!」
おお、それはなかなか良い例えです(笑)
本当のことを説明してやろうかとも思いましたが、ニコラが派手に悔しがるのが面白いのでしばらく放置することにしました。
私はなかなか性格が悪いのです。
・・・それより道場のことです。
「なあデワ。この道場生リストだけど、人数増えてないよな」
「はあ・・オス」デワが頼りない返事をします。
「だけどさ、練習生に僕の知らない顔が何人か混じってるんだけど、あれはみんなどこからかの出稽古なの?」
「いや、センパイが居ない間に入ってきた入門生ですね」
「じゃあ、なんでリストに無いのさ」
「あ、ちょっと僕も忙しかったもので、後回しになってたんです」
やはりこうなってたか。
本当にこいつに道場任せて大丈夫なんだろうか?
私は不安になりましたが、それを言いだすと私は一生日本に帰れません。
「とりあえず新入門生全員をリストに載せて、今日中に僕のところに持ってきて」
「オス、では後ほど」
・・・・・
「センパイ、リスト持ってきました」
稽古後に夕食を済ませて部屋で休んでいた時、デワがやってきました。
「おお、ご苦労さん。どれどれ」
私は道場生リストを確認します。
「ええと、おお!結構入門生が増えてるじゃない。バトウ先生の指導が好評だからかな」
「オス、でも辞めた生徒もいますので、それは打消し線を引いてあります」
・・・ふむふむ。
「まあ辞める生徒がいるのはある程度仕方ない。しかし定着率を上げるのは今後の課題だな」
「オス、そうですね」
「えっと、それで結局のところ現在の道場生の総数は・・と。ん?」
道場生の名前を指さしながら人数を数えましたが、これは。
「おい、デワ。これ達成してるじゃない50人!」
「あ、はあ・・・ええ?そうでしたっけ?」
・・・なるほど、そういうことか。
「デワ!お前、達成してるのを僕に隠そうとしてたな」
「いえ、決してそういうわけじゃないです。オス」
明らかにデワは狼狽しています。
「センパイ、達成したといってもまだ定着したわけじゃないですから。まさかもう日本に帰るなんて言わないですよね?」
「いや、帰る。このリストを日本にFAXして、中川先生に電話したら帰る」
「センパイ、お願いします。もう少しだけ、ここの道場運営が安定するまで居てください」
・・・ふう・・・やれやれだ。
「あのなあデワ。僕も正直言って今帰るのは不安だよ。でも、僕がここに居たら、いつまでたってもお前は僕に頼って支部長らしい仕事をやらないだろ。もうここらが潮時だと思うんだ」
「いや、でもほらセンパイ。せっかく僕が手を回してビザの延長したばかりだし、せめてその期間は」
なんとか引き留めようとデワも必死になります。
「ビザか・・そうだな、ビザはたしかにもったいないな」
「え、それじゃ残ってくれるんですか?」
・・・そういうわけじゃない。
「デワ、お前がなんといおうと、スリランカでの僕の任務は終了した。今日をもってこの道場はお前に引き渡す」
「ええ、それじゃあ・・・」
「でも僕はまだ少しスリランカには残るよ。また旅行に出かける。今度は海のほうへ行く、ビーチでのんびり休んでくる」
ビザの残り分、今度こそ本当の休暇を取ろうと思ったのです。
スリランカはビーチリゾートもたいへん有名だったので、そこに行ってないのは心残りだし。
「日本に帰る前には一度こっちに戻る。そのときには僕を安心して日本に帰れるようにしておいてくれ」
「センパ~イ・・・」
デワは思い切り情けない顔で私を見つめますが、これも後輩のためだ。あえて心を鬼にします。
そして明日からは、ビーチだビーチ!ひやっほー!
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