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プランB

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私はとにかく離れて大きく間合いを取って、ベビスの周りを跳ね回ります。
フットワークとか撹乱戦法とかじゃありません。
単なる時間稼ぎです。

・・・作戦変更だ、考えろ!作戦だ、作戦。プランBが必要だ!

「トミー、無駄な動きが多いぞ」

ベビスはそう言うと、ついに動き出しました。
すり足でスッと前に出たと思うと、ふっと・・・姿が消えた!
次の瞬間。

パン!と私の腹部で音が鳴りました。

私は驚いて飛びのきます。それはベビスの超低空な中段逆突きでした。
しかし私はダメージを受けていません。
私が突きを避けたのではなく、ベビスが私のTシャツ一枚、まさに皮一枚の寸止めをしたのです。

私はあわてて左右の回し蹴りを連続で繰り出します。
しかしもちろん当たらない。

「モーションが大きすぎる」
ベビスがそう言った次の瞬間、わたしは顔面に強烈な風圧を受けました。

目にも止まらないベビスの左上段刻み突きです。
これも鼻先に触れるか触れないかで寸止めされていました。
今のを顎に食らっていたら粉砕骨折。私は最後の武器を失っていたところです。

・・・顔だけは死守するつもりだったのに・・・

「守りも甘いな。甘すぎる。トミー、それでよく今まで無事に歴戦してこれたもんだな」

それは一度もまともに戦わなかったからです。
はったりと口車と小賢しい作戦で乗り切っていたからです。
そうだ、作戦。早く作戦を立てなきゃ・・・プランBはまだか?

ベビスが再び右中段逆突き。今度は見えた!と思った瞬間。

私の髪の毛が舞い上がりました。
右中段はフェイントで、左の上段回し蹴りです。これも寸止めされました。

・・・なんてことだ。蹴りも上手いんじゃないか。
しかもすべて寸止めって、破壊王は実力差を見せつけてなぶり殺しにするつもりか!

ダメだ・・・万策尽きた。
もはや小賢しい作戦など通じる相手ではありません。

こうなったら仕方が無い。
プランBは・・・

とにかく飛び込んで組み付いて喉を噛みちぎる!

私がそう決めたその時です。

「よくわかった。もうやめよう」
ベビスが言いました。

・・・え?

私はちょっと拍子抜けしました。
やめようって・・・それは有難いけど、それならそれで私には言うことがあります。

「やめるって?しかし僕は負けてないぞ」

ははは・・とベビスが笑って言います。
「トミー、これは稽古だよ、稽古。勝ち負けなんかあるもんか」

稽古?・・・なんかよく分からないけど、とにかく五体無事で助かったみたいだ。

私は全身の力がヘナヘナと抜けて地面に座り込みました。
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