空手バックパッカー放浪記

冨井春義

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ヌワラエリヤ・バッドボーイズ 4

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滝を下りてまたバスに乗り、目的地のティーファクトリーです。

工場に入るなりボブは作業員のひとりに声をかけます。
「トミー、俺はちょっと買い物があるから待っててくれ」
言うと作業員と一緒に工場に奥に消えました。
・・・紅茶を買うのかな?

しばらくしてボブが戻ってきました。
手にはビニール袋に入った大量の茶葉・・・いや、似てるけど違う。

「ボブ、それはガンジャ(マリファナ)だね?」
「トミー、よく知ってるな。さすがラスタマンだ。アフタヌーンティーのかわりにこいつを楽しもうって寸法さ」

なるほどティーファクトリーの設備を利用して、こういう物も生産しているわけか。
おそらくは工場作業員たちの、ちょっとした小遣い稼ぎなのかもしれません。
しかしやはりこの3人組、バッドボーイズだったな(笑)

工場を出て、木陰に置かれた屋外テーブルの椅子に皆で腰かけます。
そこでボブが慣れた手つきでジョイント(紙巻)を作りはじめます。
まずタバコ箱の中の銀紙を取り出し、その紙の銀色部分をはがしました。
そこにガンジャの葉を置き、ほぐしたタバコの葉を混ぜよく揉み合わせます。
それをグルグルっと巻くと、ボブ・マーリーが咥えているようなラスタ風・太巻きガンジャの出来上がりです。

ヌワラエリヤ産のガンジャは、以前コロンボで体験したブッダスティックほど強力なものではありませんが、ブツは大量にありますので贅沢にガバガバと煙を吐き出しながら吸います。
マイケルが工場から借りてきたラジカセにカセットを放り込み、音楽をかけます。
もちろんそれはボブ・マーリー。驚くほど心地よい音楽です。
なるほど、レゲエミュージックはガンジャを決めながら聴くようにチューニングされた音楽だったんだ。

ティーファクトリーから市内に帰るバスの中。
窓から外の景色を眺めると、見渡す限りの高原に、行き道には気が付かなかった小さな薄紫の花が無数に咲いています。
この世のものとは思えない光景にしばし時を忘れます。
まだガンジャの効果が残っているせいもありましたが、この景色もいまだに私の脳裏を離れません。

このようにせっかくの楽しいピクニックの締めくくりなのに、この帰りのバス車内でひと悶着が起こりました。

スリンランカの奇妙なマナーなのですが、バスなどでお年寄りに席を譲るということはあまりしません。
そのかわり、なぜか学生には席を譲るのです。

このときも、途中からバスに乗り込んできた4人の若者たちが
「俺たちは学生だ。席を譲ってくれ」とボブに詰め寄りました。
私たちは仕方なく彼らに席を譲ります。

彼らは礼も言わず席に着くと、でかい態度と大声でおしゃべりを始めました。
苦虫を嚙み潰したような顔で、しばらく彼らの会話を聴いていたボブが突然!

「お前ら学生じゃねえな!」シンハラ語で怒鳴りつけます。
言うなり彼らの内のひとりの胸倉を掴み、無理やり立たせます。

「お前ら全員立て!トミー、こいつら学生じゃないよ。ここらのバッドボーイズだ。立たせるから座ってくれ」
そう言うと若者たち全員を立たせて、自分も席に座ります。
若者たちはブツブツと文句を言いながら立っています。

バスが急カーブを曲がりました。
若者たちのひとりがよろめいて、そのまま肘をボブの顔面に叩き込みました。
明らかに故意です。
肘打ちを食らったボブはそれほどダメージを受けていませんが、鋭い目つきで若者を睨みつけます。
若者たちはニヤニヤと笑っています。

ボブが暴れだすのではないかと心配しましたが、なぜか彼は黙っていました。

バスが市内に到着し、乗客は全員降車します。
私たちもバスから降りますが、降りた瞬間にボブはダッシュで走り出します。
さきほどボブに肘をくれた若者に追いつくと、いきなり後頭部を拳で殴りつけました。

「お前ら待ちやがれ!」ボブが叫びます。

いや、普通そのセリフは殴る前に言うだろ・・というか、これ完全に喧嘩の始まりだな。
やれやれ・・・
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