66 / 115
炸裂!秘技・三角飛び
しおりを挟む
空手最大の秘技「三角飛び」・・・
劇画などで有名になった技ですが、これはけっして劇画原作者によるまったくの創作ではありません。
古書を紐解けば空手の歴史に伝説として伝わる秘術であることがわかります。
『唐手術に三角飛びの極意あり。この極意を授けられし者、最早天下に恐るべきものなし』
一説には沖縄の空手の大家であった喜屋武長徳がこの三角飛びの使い手であり、彼の残した型には密かにその極意が隠されているともいわれます。
劇画などではこの技は、いったん敵とは方向違いの壁などにに向かって飛び、その壁を蹴る反動で空中を三角に飛び、死角より敵に蹴りを決めるといった描写が多いです。
また古書によれば、この術には2種類あるそうです。
ひとつは飛び上がると同時にひとりの敵を片足で蹴り、残る足でもうひとりを蹴る。
もうひとつは地面に対して水平に飛び、片足、片手、頭の三つの武器を使い3人の敵を攻撃する。
いずれにしてもあまり現実的とは思えませんが、要するに三角飛びというのは複数の敵に囲まれた際に、同時にそれらの敵を倒す技ということでしょう。
このように「三角飛び」には明確な型が存在せず、名前のみが独り歩きしている幻の技なのです。
「これが三角飛びだ」という具体的なものは特に存在しないので、私がはったりで技を創作してもまあ許されるんじゃないかと考えていたわけです。
私は2人の空手部員にキックミットを持たせ、1mほどの間隔でこちら向けに立たせました。
結び立ちで彼らに礼をしてから、型の演武のように用意姿勢を取りながら大声で叫びました。
「三角飛び・初段っ!」
猫足立ち手刀受けの構えで前進し、間合いに入ったところで左足から飛び上がり向かって左のミットを蹴り、その反動で右足を上げ向かって右のミットを蹴ります。
これは二段蹴りの応用で左右に蹴り分けただけです。
着地すると同時に猫足立ちの構えに戻り、十分な残身を取ってから直れの姿勢になり礼をします。
パチパチと拍手の音。
以前も書きましたが、海外で技を見せる場合は、技それ自体が大したことなくても、前後のポーズを決めるとそれなりに見えるものです。
つづいて、今度はミットを上段から下向けに構えさせます。
「三角飛び・二段!」
猫足立ちの構えから両足で飛んで足を左右に開いて同時に蹴ります。
これはジャッキー・チェンの映画で覚えた蹴りです。
ふたたび残身を取ってから礼。さっきより大きな拍手。
悪くない手ごたえです。
そして次は私の最大の大技です。
自分を時計の中心と見るなら、部員を12時と9時の方向にミットを構えて立たせます。
「三角飛び・三段!」
プロレスのドロップキックのように地面に水平に飛んで、左足を9時方向にまっすぐに伸ばすと同時に右足を90度の角度に広げて12時方向に伸ばします。
これはかつてデワの書斎にあったカンフー雑誌”Inside Kung fu”で見た女性の表演にヒントを得て練習したはったり三角飛びです。
バシ、バシッとミットが連続して良い音を立てました。
私は両手で受け身を取ってから、床を前転するようにころがり起きて構えを取ります。
おおっ!と声があがり、一層大きな拍手。
はったり大成功のようです。
「これで三角飛びの演武を終わります。ありがとうございました。押忍」
監督さんが駆け寄ってきて、握手を求めます。
「今日は貴重な秘技を公開していただき、ありがとうございました。三角飛び、話には聞いたことありますが実際に見たのは初めてです」
・・・そうでしょうね。私は一度も見たことありません。
「ウチの部員もたいへんな勉強になったと思います」
「いえ、お粗末なものをお見せしました。こちらこそ勉強させていただきました」
「このあとお時間ございますか?よろしければ食事でもご一緒させてください」
とのことで、監督さんと夕食の約束をしました。
ええと、派手なバトルとかを期待されていた読者の皆さんには申し訳ありませんが、ニコラ戦みたいなのを毎回やっていたのでは私の身が持ちません。
私はほとんどの場合、このように口車とはったりで乗り切っていました。
それでも・・・ごく、たまーにですが・・・命の危険にさらされたこともありますが、それはまた後の話。
劇画などで有名になった技ですが、これはけっして劇画原作者によるまったくの創作ではありません。
古書を紐解けば空手の歴史に伝説として伝わる秘術であることがわかります。
『唐手術に三角飛びの極意あり。この極意を授けられし者、最早天下に恐るべきものなし』
一説には沖縄の空手の大家であった喜屋武長徳がこの三角飛びの使い手であり、彼の残した型には密かにその極意が隠されているともいわれます。
劇画などではこの技は、いったん敵とは方向違いの壁などにに向かって飛び、その壁を蹴る反動で空中を三角に飛び、死角より敵に蹴りを決めるといった描写が多いです。
また古書によれば、この術には2種類あるそうです。
ひとつは飛び上がると同時にひとりの敵を片足で蹴り、残る足でもうひとりを蹴る。
もうひとつは地面に対して水平に飛び、片足、片手、頭の三つの武器を使い3人の敵を攻撃する。
いずれにしてもあまり現実的とは思えませんが、要するに三角飛びというのは複数の敵に囲まれた際に、同時にそれらの敵を倒す技ということでしょう。
このように「三角飛び」には明確な型が存在せず、名前のみが独り歩きしている幻の技なのです。
「これが三角飛びだ」という具体的なものは特に存在しないので、私がはったりで技を創作してもまあ許されるんじゃないかと考えていたわけです。
私は2人の空手部員にキックミットを持たせ、1mほどの間隔でこちら向けに立たせました。
結び立ちで彼らに礼をしてから、型の演武のように用意姿勢を取りながら大声で叫びました。
「三角飛び・初段っ!」
猫足立ち手刀受けの構えで前進し、間合いに入ったところで左足から飛び上がり向かって左のミットを蹴り、その反動で右足を上げ向かって右のミットを蹴ります。
これは二段蹴りの応用で左右に蹴り分けただけです。
着地すると同時に猫足立ちの構えに戻り、十分な残身を取ってから直れの姿勢になり礼をします。
パチパチと拍手の音。
以前も書きましたが、海外で技を見せる場合は、技それ自体が大したことなくても、前後のポーズを決めるとそれなりに見えるものです。
つづいて、今度はミットを上段から下向けに構えさせます。
「三角飛び・二段!」
猫足立ちの構えから両足で飛んで足を左右に開いて同時に蹴ります。
これはジャッキー・チェンの映画で覚えた蹴りです。
ふたたび残身を取ってから礼。さっきより大きな拍手。
悪くない手ごたえです。
そして次は私の最大の大技です。
自分を時計の中心と見るなら、部員を12時と9時の方向にミットを構えて立たせます。
「三角飛び・三段!」
プロレスのドロップキックのように地面に水平に飛んで、左足を9時方向にまっすぐに伸ばすと同時に右足を90度の角度に広げて12時方向に伸ばします。
これはかつてデワの書斎にあったカンフー雑誌”Inside Kung fu”で見た女性の表演にヒントを得て練習したはったり三角飛びです。
バシ、バシッとミットが連続して良い音を立てました。
私は両手で受け身を取ってから、床を前転するようにころがり起きて構えを取ります。
おおっ!と声があがり、一層大きな拍手。
はったり大成功のようです。
「これで三角飛びの演武を終わります。ありがとうございました。押忍」
監督さんが駆け寄ってきて、握手を求めます。
「今日は貴重な秘技を公開していただき、ありがとうございました。三角飛び、話には聞いたことありますが実際に見たのは初めてです」
・・・そうでしょうね。私は一度も見たことありません。
「ウチの部員もたいへんな勉強になったと思います」
「いえ、お粗末なものをお見せしました。こちらこそ勉強させていただきました」
「このあとお時間ございますか?よろしければ食事でもご一緒させてください」
とのことで、監督さんと夕食の約束をしました。
ええと、派手なバトルとかを期待されていた読者の皆さんには申し訳ありませんが、ニコラ戦みたいなのを毎回やっていたのでは私の身が持ちません。
私はほとんどの場合、このように口車とはったりで乗り切っていました。
それでも・・・ごく、たまーにですが・・・命の危険にさらされたこともありますが、それはまた後の話。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
心の交差。
ゆーり。
ライト文芸
―――どうしてお前は・・・結黄賊でもないのに、そんなに俺の味方をするようになったんだろうな。
―――お前が俺の味方をしてくれるって言うんなら・・・俺も、伊達の味方でいなくちゃいけなくなるじゃんよ。
ある一人の少女に恋心を抱いていた少年、結人は、少女を追いかけ立川の高校へと進学した。
ここから桃色の生活が始まることにドキドキしていた主人公だったが、高校生になった途端に様々な事件が結人の周りに襲いかかる。
恋のライバルとも言える一見普通の優しそうな少年が現れたり、中学時代に遊びで作ったカラーセクト“結黄賊”が悪い噂を流され最悪なことに巻き込まれたり、
大切なチームである仲間が内部でも外部でも抗争を起こし、仲間の心がバラバラになりチーム崩壊へと陥ったり――――
そこから生まれる裏切りや別れ、涙や絆を描く少年たちの熱い青春物語がここに始まる。
【THE TRANSCEND-MEN】 ー超越せし者達ー
タツマゲドン
SF
約138億年前、宇宙が生まれた。
約38億年前、地球で「生物」が誕生し長い年月を掛けて「進化」し始めた。
約600万年前、「知識」と「感情」を持つ「人類」が誕生した。
人類は更にそれらを磨いた。
だが人類には別の「変化」が起こっていた。
新素粒子「エネリオン」「インフォーミオン」
新物質「ユニバーシウム」
新兵器「トランセンド・マン」
21世紀、これらの発見は人類史に革命を起こし、科学技術を大いに発展させた。
「それ」は「見え」ない、「聞こえ」ない、「嗅げ」ない、「味わえ」ない、「触れ」られない。
しかし確実に「そこ」にあり「感じる」事が出来る。
時は「地球暦」0017年、前世紀の「第三次世界大戦」により人類の総人口は10億人にまで激減し、「地球管理組織」なる組織が荒廃した世界の実権を握っていた。
だがそれに反抗する者達も現れた。
「管理」か「自由」か、2つに分かれた人類はまたしても戦いを繰り広げていた。
戦争の最中、1人の少年が居た。
彼には一切の記憶が無かった。
彼には人類を超える「力」があった。
彼には人類にある筈の「感情」が無かった。
「地球管理組織」も、反抗する者達も、彼を巡って動き出す。
しかし誰も知らない。
正体を、目的を、世界を変える力がある事も。
「超越」せよ。
その先に「真実」がある。
翡翠色の空の下で~古本の旅行ガイドブック片手に異世界旅行~
八百十三
ファンタジー
知っている人は知っている、有名な旅行ガイドブック、「みるぶ」。
とある土曜日、神保町の古書店を訪れた女性・澤 実里(さわ みのり)は、少々使用感の目立つ「みるぶ」が、他の本に紛れるようにして棚に収まっているのを見つける。
そのタイトル、「みるぶ異世界」。
中を開くと書かれているのはどれを取っても胡散臭い内容。それでも暇つぶしにはいいだろう、とジョークグッズのつもりでお買い上げ。代金200円と消費税8%。
本を収めたビニール袋片手に古書店の外に出ると――そこはまさしく異世界だった。
なんで異世界だと分かったか?何故なら、頭の上に広がる空が、どこまでも澄み切った緑色なのだ。
剣と魔法の世界ではない、けれど異種族が入り混じり、人種差別しつつされつつ暮らす近世チックな異世界にて。
元の世界に帰る時が来るまで、実里は古都フーグラーのギルドで雇った獣人族の通訳と共に、自身が迷い込んだマー大公国内を旅行することにしたのである。
●コンテスト・小説大賞選考結果記録
読者を増やそう!エブリスタのトップに載れるコンテスト 受賞
第9回ネット小説大賞 一次選考通過
第12回ネット小説大賞 一次選考通過
※カクヨム様、小説家になろう様、ノベルアップ+様、エブリスタ様、ノベルピア様にも並行して投稿しております。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054888255850
https://ncode.syosetu.com/n5542fg/
https://novelup.plus/story/990704739
https://estar.jp/novels/25627829
https://novelpia.jp/novel/319
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
可不可 §ボーダーライン・シンドローム§ サイコサスペンス
竹比古
ライト文芸
先生、ぼくたちは幸福だったのに、異常だったのですか?
周りの身勝手な人たちは、不幸そうなのに正常だったのですか?
世の人々から、可ではなく、不可というレッテルを貼られ、まるで鴉(カフカ)を見るように厭な顔をされる精神病患者たち。
USA帰りの青年精神科医と、その秘書が、総合病院の一角たる精神科病棟で、或いは行く先々で、ボーダーラインの向こう側にいる人々と出会う。
可ではなく、不可をつけられた人たちとどう向き合い、接するのか。
何か事情がありそうな少年秘書と、青年精神科医の一話読みきりシリーズ。
大雑把な春名と、小舅のような仁の前に現れる、今日の患者は……。
※以前、他サイトで掲載していたものです。
※一部、性描写(必要描写です)があります。苦手な方はお気を付けください。
※表紙画:フリーイラストの加工です。
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる