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翌朝・・・
「なあ、センパイ。タクシーで行かないか?」デワが言います。
「タクシー?ビクトリア公園まではそう遠くはないだろ。歩いていけばいいじゃん。もう疲れたか?」
「いや・・・別に歩くのは苦痛じゃないんだけど・・・あれがちょっと」
デワは後を振り向き指差します。
私とデワ、ボウイの3人は全員道衣を着てサンダルを履いてビクトリア公園に向かって歩いている最中です。下っ端のボウイはデモンストレーション用のスイカが入った麻袋を抱えています。
デワが指差したのは、ボウイのさらに後。
私達の後をサロンを腰に巻いた、薄汚れた子供たちが10数人、ぞろぞろと付いて来ます。
この奇妙なな行列を道行く人たちはニヤニヤ笑いながら見ています。
「なんか恥ずかしいでしょ?タクシーで行こうよ」
「何が恥ずかしいものか。いいかデワ、僕らは道場の宣伝をやってるんだぜ。これだけ目立てばかなりの宣伝効果じゃない。もっと堂々としろよ」
「はあ、そんなもんですかねえ。。付いてきてるのは子供だけだけど」
「子供をバカにするなよ。子供は空手道場の重要なお客様なんだぞ。せいぜいサービスしなきゃ」
そういうなり私は後ろを振り向き子供たちに手を振ります。
わー・・・と声を上げて子供たちが喜びます。
「な。子供たちには空手マンはヒーローなんだよ。せいぜいヒーローらしくしろよ」
そう言うと、スイカ袋を担いだボウイが
「それじゃあオレもヒーローなのかなあ・・・」
するとデワがすぐに言います。
「お前は白帯なんだからザコキャラだよ!」
「え!?ザコなんですか」
肩を落とすボウイに私は言います。
「まあ、お前もいずれはヒーローになれるさ。がんばって稽古すればさ」
「・・・オス。がんばります」
20分ほど歩くと公園が見えてきました。
こう書くとどうということも無いのですが、コロンボの猛暑の中、20分歩くのはかなりきついです。
私の空手着は汗を吸ってぐっしょりと濡れています。
しかしさすがに熱帯育ちのふたりはほとんど汗をかいておりません。
彼らの手前、私も疲れた顔はできません。
公園は美しい人口的な森と散歩道があります。
近所の学生や家族連れで賑わっている。
みんなが私達を見ています。
なかなかの宣伝効果が期待できそうだ。
散歩道に足を踏み入れると、足元がジャリジャリします。
「あー。。しまったな。この公園の地面はわりと小石が多いぞ。ここで裸足で演武するのは無理っぽい。足の裏が血だらけになるぞ。と言って、サンダル履きってのも様にならないしなあ・・・」
私は公園内を見渡します。
「デワ、あれは何だ?」私が向こうの方を指差して言うと
「ああ、あれはステージですね。イベントやるときの簡易なステージでしょう」
行って見るとそれはビール箱の上に板を並べて作ったようなシロモノですが、たしかにステージです。
「うん。ここにしよう。ここでデモンストレーションをやるぞ。デワ、ボウイ、準備しろ」
いよいよ私のコロンボにおける初の公開デモンストレーション開始です。
まずはお客を集める為につかみの演目から。
市内からくっついてきた子供たちに
「おーい。いまからカラテの技を見せるから、集まっといで」
と、声をかける。公園内の大人たちは遠巻きに見ています。
ステージの上に裸足になって上り、スイカ袋の中から、あらかじめ用意しておいた石とレンガを取り出す。
石は長さ25cm、幅5cm、厚さ3cmくらいの丸みのあるものが五つほど。
これは最も割りやすい形状のものを私が選びました。
レンガは石割の台に使います。これをステージの木の床の上に置き、そのうえにタオルを巻いて棒状にしたものを置きます。これは石を持つ手のクッションになる。
左手で一個の石を掴み、その手を床に置いたレンガに乗せます。
足を大きく広げて体勢を低く構えて手刀で石を押さえます。
何度か手を振り上げるポーズを取りながらあたりを見回すと、公園内にいた数人のカップルや散歩中の人々も「何が始まるんだ?」と言った風に集まってき始めています。よし。今だ!
「えいしゃーーーーっ!」
一気に手刀を振り下ろすと、石はパカッとふたつに割れる。
「ううわーー!」
子供たちが一斉に叫びます。
見ると数名いる大人たちもビックリした顔です。いける!
立て続けに石を掴み、連続で4個割ります。
パカッ、パカッ・・・割り終わると同時に下段突きのフォームを決めて、「えいっ!」と気合を入れる。
一瞬の沈黙の後、数名の観客からパラパラと拍手が起こりました。
向こうから何人もの人々が走ってきます。
しばらく待つと、観客の数は数十名に増えました。
「デワ、通訳しろ・・・・ええー、皆さん、アーユーボーワン(こんにちは)。私は遠く日本からスリランカに本場日本のカラテを伝えるべくやってまいりました。ご覧のようにカラテは一切の武器を持たず、自らの肉体を武器化することができます。もし石を粉砕する手で皆さんの頭蓋骨を殴ればどういうことになるか?想像してみてください。しかし皆さん恐れないで下さい。カラテは争いの武器ではありません。肉体と精神を鍛えることによって、ブッダにも近づくことができる修行の道です。ここにいるデワ先生は私と共に日本でカラテを学んだエキスパートです。彼がこのたびオープンしました道場にぜひ来てください。皆さんもここで学べば、肉体を武器化し、精神を鍛えることができます・・・・おい、ボウイ。カードを配れ」
私は口からでまかせの演説をぶって、ボウイに道場のネームカードを観客に配らせます。
「ええー・・・では、続きまして・・・カラテの訓練を積んだ者は、前後を敵に挟まれた場合でも、いとも簡単に敵の頭部を破壊することができます。しかしホンモノの人間の頭を破壊するわけにはまいりませんので、ここではスイカを人間の頭部に見立ててのデモンストレーションをお見せしましょう」
デワとボウイが袋からスイカ(ハロウィン仕様)を取り出し、配置に付きます。
演説の間にも観客は増えましたので、かなりの群集が集まっています。
・・・・ん?あれは・・・・
見ると群集の中に・・・ひときわ目立つ白人の男がいます。
他のスリランカ人の頭の位置がちょうど胸のあたりという長身が飛び抜けています。
おそらく2mはゆうにある・・・あ!あれは・・・カッサバ先生の寺にいたフランスの空手家だ!
金髪の髪を後に束ねた男の顔は、ニヤニヤと笑っているようでした。
「なあ、センパイ。タクシーで行かないか?」デワが言います。
「タクシー?ビクトリア公園まではそう遠くはないだろ。歩いていけばいいじゃん。もう疲れたか?」
「いや・・・別に歩くのは苦痛じゃないんだけど・・・あれがちょっと」
デワは後を振り向き指差します。
私とデワ、ボウイの3人は全員道衣を着てサンダルを履いてビクトリア公園に向かって歩いている最中です。下っ端のボウイはデモンストレーション用のスイカが入った麻袋を抱えています。
デワが指差したのは、ボウイのさらに後。
私達の後をサロンを腰に巻いた、薄汚れた子供たちが10数人、ぞろぞろと付いて来ます。
この奇妙なな行列を道行く人たちはニヤニヤ笑いながら見ています。
「なんか恥ずかしいでしょ?タクシーで行こうよ」
「何が恥ずかしいものか。いいかデワ、僕らは道場の宣伝をやってるんだぜ。これだけ目立てばかなりの宣伝効果じゃない。もっと堂々としろよ」
「はあ、そんなもんですかねえ。。付いてきてるのは子供だけだけど」
「子供をバカにするなよ。子供は空手道場の重要なお客様なんだぞ。せいぜいサービスしなきゃ」
そういうなり私は後ろを振り向き子供たちに手を振ります。
わー・・・と声を上げて子供たちが喜びます。
「な。子供たちには空手マンはヒーローなんだよ。せいぜいヒーローらしくしろよ」
そう言うと、スイカ袋を担いだボウイが
「それじゃあオレもヒーローなのかなあ・・・」
するとデワがすぐに言います。
「お前は白帯なんだからザコキャラだよ!」
「え!?ザコなんですか」
肩を落とすボウイに私は言います。
「まあ、お前もいずれはヒーローになれるさ。がんばって稽古すればさ」
「・・・オス。がんばります」
20分ほど歩くと公園が見えてきました。
こう書くとどうということも無いのですが、コロンボの猛暑の中、20分歩くのはかなりきついです。
私の空手着は汗を吸ってぐっしょりと濡れています。
しかしさすがに熱帯育ちのふたりはほとんど汗をかいておりません。
彼らの手前、私も疲れた顔はできません。
公園は美しい人口的な森と散歩道があります。
近所の学生や家族連れで賑わっている。
みんなが私達を見ています。
なかなかの宣伝効果が期待できそうだ。
散歩道に足を踏み入れると、足元がジャリジャリします。
「あー。。しまったな。この公園の地面はわりと小石が多いぞ。ここで裸足で演武するのは無理っぽい。足の裏が血だらけになるぞ。と言って、サンダル履きってのも様にならないしなあ・・・」
私は公園内を見渡します。
「デワ、あれは何だ?」私が向こうの方を指差して言うと
「ああ、あれはステージですね。イベントやるときの簡易なステージでしょう」
行って見るとそれはビール箱の上に板を並べて作ったようなシロモノですが、たしかにステージです。
「うん。ここにしよう。ここでデモンストレーションをやるぞ。デワ、ボウイ、準備しろ」
いよいよ私のコロンボにおける初の公開デモンストレーション開始です。
まずはお客を集める為につかみの演目から。
市内からくっついてきた子供たちに
「おーい。いまからカラテの技を見せるから、集まっといで」
と、声をかける。公園内の大人たちは遠巻きに見ています。
ステージの上に裸足になって上り、スイカ袋の中から、あらかじめ用意しておいた石とレンガを取り出す。
石は長さ25cm、幅5cm、厚さ3cmくらいの丸みのあるものが五つほど。
これは最も割りやすい形状のものを私が選びました。
レンガは石割の台に使います。これをステージの木の床の上に置き、そのうえにタオルを巻いて棒状にしたものを置きます。これは石を持つ手のクッションになる。
左手で一個の石を掴み、その手を床に置いたレンガに乗せます。
足を大きく広げて体勢を低く構えて手刀で石を押さえます。
何度か手を振り上げるポーズを取りながらあたりを見回すと、公園内にいた数人のカップルや散歩中の人々も「何が始まるんだ?」と言った風に集まってき始めています。よし。今だ!
「えいしゃーーーーっ!」
一気に手刀を振り下ろすと、石はパカッとふたつに割れる。
「ううわーー!」
子供たちが一斉に叫びます。
見ると数名いる大人たちもビックリした顔です。いける!
立て続けに石を掴み、連続で4個割ります。
パカッ、パカッ・・・割り終わると同時に下段突きのフォームを決めて、「えいっ!」と気合を入れる。
一瞬の沈黙の後、数名の観客からパラパラと拍手が起こりました。
向こうから何人もの人々が走ってきます。
しばらく待つと、観客の数は数十名に増えました。
「デワ、通訳しろ・・・・ええー、皆さん、アーユーボーワン(こんにちは)。私は遠く日本からスリランカに本場日本のカラテを伝えるべくやってまいりました。ご覧のようにカラテは一切の武器を持たず、自らの肉体を武器化することができます。もし石を粉砕する手で皆さんの頭蓋骨を殴ればどういうことになるか?想像してみてください。しかし皆さん恐れないで下さい。カラテは争いの武器ではありません。肉体と精神を鍛えることによって、ブッダにも近づくことができる修行の道です。ここにいるデワ先生は私と共に日本でカラテを学んだエキスパートです。彼がこのたびオープンしました道場にぜひ来てください。皆さんもここで学べば、肉体を武器化し、精神を鍛えることができます・・・・おい、ボウイ。カードを配れ」
私は口からでまかせの演説をぶって、ボウイに道場のネームカードを観客に配らせます。
「ええー・・・では、続きまして・・・カラテの訓練を積んだ者は、前後を敵に挟まれた場合でも、いとも簡単に敵の頭部を破壊することができます。しかしホンモノの人間の頭を破壊するわけにはまいりませんので、ここではスイカを人間の頭部に見立ててのデモンストレーションをお見せしましょう」
デワとボウイが袋からスイカ(ハロウィン仕様)を取り出し、配置に付きます。
演説の間にも観客は増えましたので、かなりの群集が集まっています。
・・・・ん?あれは・・・・
見ると群集の中に・・・ひときわ目立つ白人の男がいます。
他のスリランカ人の頭の位置がちょうど胸のあたりという長身が飛び抜けています。
おそらく2mはゆうにある・・・あ!あれは・・・カッサバ先生の寺にいたフランスの空手家だ!
金髪の髪を後に束ねた男の顔は、ニヤニヤと笑っているようでした。
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