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翌朝、私は1週間ほど滞在したゲストハウスを出て、デワの父親が経営する**ホテルに向かうことにしました。
デワはコロンボではかなりの富豪のドラ息子なのです。
ゲストハウスの外にはもうボウイが待ち構えています。
「おお、ボウイ。早いねえ」
「オス、センパイ。すぐタクシーを呼ぶから待っててよ」
「いいよ近いんだから歩けば」
そう言って私はさっさと歩き出します。
あわててボウイも後からついてくる。
私もこの1週間よく歩き回ったおかげで、コロンボの凶暴な暑さのなかでも5kmや6kmくらいは休まず歩けるようになっています。しかしさすがに走るのはまだ無理だ。
コロンボのフォート地区のオフィス街よりもずっと北・・・どちらかというと居住地区の多いあたりに目的のホテルはあります。
「センパイ。このへんはね、昼間はいいんだけど夜中に歩かない方がいいよ。歩くんなら街灯のある道だけにしたほうがいい。ここらはダウンタウンだから、物騒な連中も多いんだ」
「そうなのか。。すると**ホテルはダウンタウンの真ん中に建ってるんだな」
「そうそう。**は結構古いホテルでね。第二次大戦前からあるんじゃないかな?まあ中級ホテルだけどね」
さすがガイドボーイだけあって、ホテルには詳しいようだ。
「あ、センパイ。あったよ、あれが**ホテル」
ボウイが指差す先には、なるほど古びた建物ですが、おそらくイギリス人が建てたものと思われるヨーロッパ風のホテルがあります。
ホテルの入り口に居るのはドアボーイではなく、自動小銃を持った兵士のようなガードマン。
このあたりがスリランカらしいといえば、らしいです。
ガードマンの横をすり抜けホテルに入ります。
ボウイはすこし睨まれましたが、日本人である私の連れということで特に止められませんでした。
ホテルのロビーはあまり広くないですが、建物全体が骨董品のようなものなので雰囲気は悪くない。
私たちはレセプションに向かいます。
「いらっしゃいませ」
「あ、すみません。デワさんを呼んで欲しいんですが」
「え、ミスター・デワを?おそれいりますがあなた様は?」
「トミーと言ってもらえば分かります」
「はい・・・少々お待ちください」
レセプションの受付は内線電話をかけます。
「あ、お客様。すぐに見えるそうですので、おかけになってお待ちください」
言われるままに私たちは、ロビーの応接セットに腰掛けて待たせてもらうことにします。
・・・しばらくして、やってきました。
濃い茶色のスーツを着て、偉そうに口ヒゲを蓄えていますが間違いありません。デワです。
「トミーセンパ~イ!ようこそ!」・・・デワの日本語です。
「デワ。しばらくだな」
「待ってたよセンパイ。いつ着いたのさ?中川先生に電話したら、もう半月も前に日本を出たって言ってるから心配してたんですよ」
「うん。ちょっとあちこち下調べしてたんだ。大体コロンボの雰囲気は掴めたので来たんだよ」
「なんだ。連絡してくれたら迎えに行ったのに・・・なんだよ、そのナマイキなガイドボーイは。偉そうに一緒にソファーに座りやがって」
言うとデワはボウイに向かってなにやらシンハラ語で怒鳴りつけます。
「ああ、待てよデワ。彼は僕が連れて来た入門生だよ」
私はあわててとりなします。
「入門生って・・・センパイ、こいつはこの辺に巣食っている悪質なガイドボーイですよ。油断してたら旅行者のポケットを狙うような奴だよ。冗談じゃない」
デワは不服気に言います。
私は少々ムカッときました。
「デワ。お前いつからそんなに偉くなったんだよっ。僕が連れて来た入門生に文句があるのか?」
「いや、別にそんな文句とかじゃなくて・・・・」
「押忍はどうしたんだよ!押忍は!」
「オ・・・オス。。」
しぶしぶデワは言います。
「・・わかりましたセンパイ。でも入門するんならちゃんと会費は払えるんでしょうね?」
・・・と言ってシンハラ語でボウイにも話しかけます。
「なあトミー・・・センパイ・・・オレ、今日はお金持ってないんだよ。。。貸してくれないか?」
ボウイが私に小声で言います。
「オーケー。貸してやるよ・・・心配するな」
仕方がありません・・・もちろんこの場合の「貸す」とは「あげる」ということです。。
「まずはセンパイ。部屋に荷物を下ろして一休みしてよ。用意してるのは僕の書斎だけど、ちょっと面白いですよ」
デワに案内されホテルの客室ではない一室に入ります。
大きな扉を開けると、なかなか広い部屋と高い天井。戦前の建物らしい贅沢な造りです。
しかし、それより驚いたのは壁一面の書棚。
「オオッ!これは!」
私は書棚に駆け寄りました。
「”This is KARATE”じゃないか!すごいな。実物をはじめて見たぞ」
”This is KARATE”は日本人が書いた世界初の英文空手技術書です。
高価な豪華本なので簡単に買える代物ではありません。
パラパラとめくってみますが、分解写真が豊富で実に優れた技術書です。これをいつでも読めると思うとここでの滞在も楽しみになる。
「センパイ、こっちには”Black Belt”のバックナンバーがあるよ。全部アメリカから取り寄せたんだ」
「すごいな。こっちは中国武術の本か・・・・お前なかなかの空手オタクだなあ。。」
富豪のドラ息子の道楽が空手というわけです。
で、その道楽のひとつに空手道場をやろうというわけで、その手伝いに日本から来たのが私と言うわけだ。
・・・すると私はデワにとっては、この本同様海外から取り寄せた道具に過ぎないと言うことか。。まあ、それもいいだろう。
「デワ。この資料はかなり参考に出来ると思うぞ。なにしろ僕はほら、教える技のバリエーションが少ないから。この本を見て、教える技の在庫を増やすことにするよ」
・・・私もこの程度の人間ですから。
デワはコロンボではかなりの富豪のドラ息子なのです。
ゲストハウスの外にはもうボウイが待ち構えています。
「おお、ボウイ。早いねえ」
「オス、センパイ。すぐタクシーを呼ぶから待っててよ」
「いいよ近いんだから歩けば」
そう言って私はさっさと歩き出します。
あわててボウイも後からついてくる。
私もこの1週間よく歩き回ったおかげで、コロンボの凶暴な暑さのなかでも5kmや6kmくらいは休まず歩けるようになっています。しかしさすがに走るのはまだ無理だ。
コロンボのフォート地区のオフィス街よりもずっと北・・・どちらかというと居住地区の多いあたりに目的のホテルはあります。
「センパイ。このへんはね、昼間はいいんだけど夜中に歩かない方がいいよ。歩くんなら街灯のある道だけにしたほうがいい。ここらはダウンタウンだから、物騒な連中も多いんだ」
「そうなのか。。すると**ホテルはダウンタウンの真ん中に建ってるんだな」
「そうそう。**は結構古いホテルでね。第二次大戦前からあるんじゃないかな?まあ中級ホテルだけどね」
さすがガイドボーイだけあって、ホテルには詳しいようだ。
「あ、センパイ。あったよ、あれが**ホテル」
ボウイが指差す先には、なるほど古びた建物ですが、おそらくイギリス人が建てたものと思われるヨーロッパ風のホテルがあります。
ホテルの入り口に居るのはドアボーイではなく、自動小銃を持った兵士のようなガードマン。
このあたりがスリランカらしいといえば、らしいです。
ガードマンの横をすり抜けホテルに入ります。
ボウイはすこし睨まれましたが、日本人である私の連れということで特に止められませんでした。
ホテルのロビーはあまり広くないですが、建物全体が骨董品のようなものなので雰囲気は悪くない。
私たちはレセプションに向かいます。
「いらっしゃいませ」
「あ、すみません。デワさんを呼んで欲しいんですが」
「え、ミスター・デワを?おそれいりますがあなた様は?」
「トミーと言ってもらえば分かります」
「はい・・・少々お待ちください」
レセプションの受付は内線電話をかけます。
「あ、お客様。すぐに見えるそうですので、おかけになってお待ちください」
言われるままに私たちは、ロビーの応接セットに腰掛けて待たせてもらうことにします。
・・・しばらくして、やってきました。
濃い茶色のスーツを着て、偉そうに口ヒゲを蓄えていますが間違いありません。デワです。
「トミーセンパ~イ!ようこそ!」・・・デワの日本語です。
「デワ。しばらくだな」
「待ってたよセンパイ。いつ着いたのさ?中川先生に電話したら、もう半月も前に日本を出たって言ってるから心配してたんですよ」
「うん。ちょっとあちこち下調べしてたんだ。大体コロンボの雰囲気は掴めたので来たんだよ」
「なんだ。連絡してくれたら迎えに行ったのに・・・なんだよ、そのナマイキなガイドボーイは。偉そうに一緒にソファーに座りやがって」
言うとデワはボウイに向かってなにやらシンハラ語で怒鳴りつけます。
「ああ、待てよデワ。彼は僕が連れて来た入門生だよ」
私はあわててとりなします。
「入門生って・・・センパイ、こいつはこの辺に巣食っている悪質なガイドボーイですよ。油断してたら旅行者のポケットを狙うような奴だよ。冗談じゃない」
デワは不服気に言います。
私は少々ムカッときました。
「デワ。お前いつからそんなに偉くなったんだよっ。僕が連れて来た入門生に文句があるのか?」
「いや、別にそんな文句とかじゃなくて・・・・」
「押忍はどうしたんだよ!押忍は!」
「オ・・・オス。。」
しぶしぶデワは言います。
「・・わかりましたセンパイ。でも入門するんならちゃんと会費は払えるんでしょうね?」
・・・と言ってシンハラ語でボウイにも話しかけます。
「なあトミー・・・センパイ・・・オレ、今日はお金持ってないんだよ。。。貸してくれないか?」
ボウイが私に小声で言います。
「オーケー。貸してやるよ・・・心配するな」
仕方がありません・・・もちろんこの場合の「貸す」とは「あげる」ということです。。
「まずはセンパイ。部屋に荷物を下ろして一休みしてよ。用意してるのは僕の書斎だけど、ちょっと面白いですよ」
デワに案内されホテルの客室ではない一室に入ります。
大きな扉を開けると、なかなか広い部屋と高い天井。戦前の建物らしい贅沢な造りです。
しかし、それより驚いたのは壁一面の書棚。
「オオッ!これは!」
私は書棚に駆け寄りました。
「”This is KARATE”じゃないか!すごいな。実物をはじめて見たぞ」
”This is KARATE”は日本人が書いた世界初の英文空手技術書です。
高価な豪華本なので簡単に買える代物ではありません。
パラパラとめくってみますが、分解写真が豊富で実に優れた技術書です。これをいつでも読めると思うとここでの滞在も楽しみになる。
「センパイ、こっちには”Black Belt”のバックナンバーがあるよ。全部アメリカから取り寄せたんだ」
「すごいな。こっちは中国武術の本か・・・・お前なかなかの空手オタクだなあ。。」
富豪のドラ息子の道楽が空手というわけです。
で、その道楽のひとつに空手道場をやろうというわけで、その手伝いに日本から来たのが私と言うわけだ。
・・・すると私はデワにとっては、この本同様海外から取り寄せた道具に過ぎないと言うことか。。まあ、それもいいだろう。
「デワ。この資料はかなり参考に出来ると思うぞ。なにしろ僕はほら、教える技のバリエーションが少ないから。この本を見て、教える技の在庫を増やすことにするよ」
・・・私もこの程度の人間ですから。
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