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達人の教え 絶対に負けない方法 2
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「大切なのは自分のペースに相手を巻き込むことです。さっきの自分の土俵で戦うというのと関連するんですけどね」
言うとカッサバ師は右手の袖を捲り上げます。その手を私のほうに差し出して
「さあ、この手をしっかりと掴んでください」
私は言われるがままに手首を握り締めます・・・・痛て!!ガタン!!
あっという間にカッサバ師に手首の間接を内に曲げられてテーブルに押さえ込まれてしまいました。
カッサバ師はすぐに手を離して聞きます。
「わかりましたか?」
「・・・?今のは合気道か何かの関節技ですか?」
「違いますよ。私はこんな小手先の技を教えたいんじゃありません。こんなの実戦にはなんの役にも立たない。技が問題なんじゃないんです。私が手を差し出して『掴んでください』と言ったら、あなた掴みましたよね?この時点であなたは私のペースに巻き込まれているんです。これこそポイント」
「ああ、なるほど。。。」
「相手を自分のペースに乗せると言うことは、相手を意のままに操っているも同然です。これなら絶対に勝てるでしょう?」
「しかし、相手がいつもそう都合よく動いてくれますか?」
「アタマを使うことです。動いてくれなければ、こっちから動いてもいい。自分のペースで動けるのならなんでもいいんです。ほら、さっき立ち会ったとき、私から『やりましょう』と言って立ったでしょう?あなたはあまりやる気が無かった。でもしかたなしに立った。もうこれで私のペースなんです。逆に相手がやりたいやりたい・・・という態度の時にはやらない。これがコツです」
・・・これは何かすごく有益な話を聞いているようです。コツ・・などという軽い表現を使っておりますがもっと難しくもったいつけて語れば、極意とでも言えるんじゃないか??
カッサバ師は話を続けます。
「相手がエイッ!と気合を入れる。こっちがオー!と応える・・・これでは互角なんです。試合のときはそれでいいです。フェアプレイですから。でも絶対に勝たなきゃならないのなら、気合は受けてはいけない。相手が気合を入れたらはぐらかす、相手が怒りをあらわにしたら笑う・・・肩透かしを食わせることです。それで相手が拍子抜けしたところで笑ったまま、きつい一撃をガンと食らわせればいい。必勝です」
・・・・しかし・・・もっともな話ですが。。。
「それって・・・卑怯じゃないんですか?」
「ええ、卑怯ですよ」
カッサバ師はすました顔で言います。
「あなたの先生もおっしゃったんでしょう?どんな卑怯な手段を使っても勝て・・・って」
・・・たしかに中川先生はそう言っていましたが。
。。
「しかし、あなたは僧侶です。そんなことを教えてもいいんですか?」
カッサバ師は高笑いします。
「ははは・・僧は人を見て法を説くものです。誰にでも同じお説教をするものじゃありません。私は今のあなたに必要な事を説いているんです。これは実に仏法にかなったことなんですよ」
「ありがとうございます。私は今日、すごく勉強になったと思います」
「よろしい。アタマで理解するのと実際に使えるのは違いますから、今日からすべてにこの教えを応用してみることです。整理しましょう。その1.勝敗の判定は自分が決すること。その2.自分の土俵で戦うこと。その3.自分のペースに相手を巻き込むこと・・・・もし、自分が審判で自分の合図で始め、止めがかけられて、自分の都合でルールを自由に変更できる試合があれば、絶対に勝てるでしょう?それをやるんです。簡単でしょ?」
たしかにそれなら絶対に勝てます。
しかし、そんなに上手くいくものだろうか?
「あとは経験です。こころがけていれば自然と体得できますよ。また行き詰ったらここに来なさい。いつでも教えて差し上げますから。。。お布施は、アズ・ユー・ライクでよろしく」
しばらく後・・・ボウイと共に寺の外に出ます。
ボウイは私とカッサバ師のやりとりがずっと日本語だったため、ただ神妙にしていました。
「トミー、えらいお坊さんだったろう?」
「うん。すごくえらいお坊さんだった」
「いい話が聞けたかい?」
「うん・・・今の僕にすごく役に立つ話だった」
「なあ・・・トミー・・・俺、トミーの役に立ったよね?」
・・・ああ、そうか。。ポケットをまさぐります。
「ありがとうよ。これ、ガイド料」
200ルピー差し出します。
「オオー!フレンド。なんでも困ったことがあったら言ってくれ!」
私は帰り道のトゥクトゥクに乗りながら、今日のカッサバ師の教えを反芻していました。
よく、武道では「宇宙の理と一体になれば常勝す」などの比喩が用いられます。
こういう言い方をすると、すごく神秘的で深遠でごく一部の達人のみが体得できる境地のように思ってしまいますが、結局カッサバ師の言っていたことが真理なんじゃないだろうか?
カッサバ師はごく簡単に、わかりやすく説明していましたが真理とは実はそういうもので、それをあえて難しく、神秘的に語る人が多いだけではないかと。
トゥクトゥクがゲストハウスに到着しました。
言うとカッサバ師は右手の袖を捲り上げます。その手を私のほうに差し出して
「さあ、この手をしっかりと掴んでください」
私は言われるがままに手首を握り締めます・・・・痛て!!ガタン!!
あっという間にカッサバ師に手首の間接を内に曲げられてテーブルに押さえ込まれてしまいました。
カッサバ師はすぐに手を離して聞きます。
「わかりましたか?」
「・・・?今のは合気道か何かの関節技ですか?」
「違いますよ。私はこんな小手先の技を教えたいんじゃありません。こんなの実戦にはなんの役にも立たない。技が問題なんじゃないんです。私が手を差し出して『掴んでください』と言ったら、あなた掴みましたよね?この時点であなたは私のペースに巻き込まれているんです。これこそポイント」
「ああ、なるほど。。。」
「相手を自分のペースに乗せると言うことは、相手を意のままに操っているも同然です。これなら絶対に勝てるでしょう?」
「しかし、相手がいつもそう都合よく動いてくれますか?」
「アタマを使うことです。動いてくれなければ、こっちから動いてもいい。自分のペースで動けるのならなんでもいいんです。ほら、さっき立ち会ったとき、私から『やりましょう』と言って立ったでしょう?あなたはあまりやる気が無かった。でもしかたなしに立った。もうこれで私のペースなんです。逆に相手がやりたいやりたい・・・という態度の時にはやらない。これがコツです」
・・・これは何かすごく有益な話を聞いているようです。コツ・・などという軽い表現を使っておりますがもっと難しくもったいつけて語れば、極意とでも言えるんじゃないか??
カッサバ師は話を続けます。
「相手がエイッ!と気合を入れる。こっちがオー!と応える・・・これでは互角なんです。試合のときはそれでいいです。フェアプレイですから。でも絶対に勝たなきゃならないのなら、気合は受けてはいけない。相手が気合を入れたらはぐらかす、相手が怒りをあらわにしたら笑う・・・肩透かしを食わせることです。それで相手が拍子抜けしたところで笑ったまま、きつい一撃をガンと食らわせればいい。必勝です」
・・・・しかし・・・もっともな話ですが。。。
「それって・・・卑怯じゃないんですか?」
「ええ、卑怯ですよ」
カッサバ師はすました顔で言います。
「あなたの先生もおっしゃったんでしょう?どんな卑怯な手段を使っても勝て・・・って」
・・・たしかに中川先生はそう言っていましたが。
。。
「しかし、あなたは僧侶です。そんなことを教えてもいいんですか?」
カッサバ師は高笑いします。
「ははは・・僧は人を見て法を説くものです。誰にでも同じお説教をするものじゃありません。私は今のあなたに必要な事を説いているんです。これは実に仏法にかなったことなんですよ」
「ありがとうございます。私は今日、すごく勉強になったと思います」
「よろしい。アタマで理解するのと実際に使えるのは違いますから、今日からすべてにこの教えを応用してみることです。整理しましょう。その1.勝敗の判定は自分が決すること。その2.自分の土俵で戦うこと。その3.自分のペースに相手を巻き込むこと・・・・もし、自分が審判で自分の合図で始め、止めがかけられて、自分の都合でルールを自由に変更できる試合があれば、絶対に勝てるでしょう?それをやるんです。簡単でしょ?」
たしかにそれなら絶対に勝てます。
しかし、そんなに上手くいくものだろうか?
「あとは経験です。こころがけていれば自然と体得できますよ。また行き詰ったらここに来なさい。いつでも教えて差し上げますから。。。お布施は、アズ・ユー・ライクでよろしく」
しばらく後・・・ボウイと共に寺の外に出ます。
ボウイは私とカッサバ師のやりとりがずっと日本語だったため、ただ神妙にしていました。
「トミー、えらいお坊さんだったろう?」
「うん。すごくえらいお坊さんだった」
「いい話が聞けたかい?」
「うん・・・今の僕にすごく役に立つ話だった」
「なあ・・・トミー・・・俺、トミーの役に立ったよね?」
・・・ああ、そうか。。ポケットをまさぐります。
「ありがとうよ。これ、ガイド料」
200ルピー差し出します。
「オオー!フレンド。なんでも困ったことがあったら言ってくれ!」
私は帰り道のトゥクトゥクに乗りながら、今日のカッサバ師の教えを反芻していました。
よく、武道では「宇宙の理と一体になれば常勝す」などの比喩が用いられます。
こういう言い方をすると、すごく神秘的で深遠でごく一部の達人のみが体得できる境地のように思ってしまいますが、結局カッサバ師の言っていたことが真理なんじゃないだろうか?
カッサバ師はごく簡単に、わかりやすく説明していましたが真理とは実はそういうもので、それをあえて難しく、神秘的に語る人が多いだけではないかと。
トゥクトゥクがゲストハウスに到着しました。
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