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コロンボの寺院にて
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かなり歴史と由緒があると思われる大きなお寺の広い境内です。
ここで映画『燃えよドラゴン』の冒頭シーンを思い出してください。
黄色い袈裟衣を着た僧侶たちの見守る中、ブルース・リーとサモ・ハン・キンポーの対戦シーン。
それによく似た光景が目の前で繰り広げられています。
「えいしゃー!」「いえーいっ!」
気合の入った稽古を見物していると、
「失礼します。日本のかたですか?」
稽古着を着たスリランカ人のひとりが近づいてきて言います。
「はあ・・そうですけど」
彼はニッコリと笑って
「よかったら、こちらへどうぞ。座って見学してください」
よく旅先で日本人が空手道場や大会を見学していると、ただ日本人というだけで来賓扱いされることがありますが、このときもそんな感じです。
「さあさあ、こちらへ・・・」
案内されて、木陰に並んだ椅子に座ります。ボウイも一緒についてきた。
「あのう、すみません。これはなんという道場の稽古なんですか?」
「合同稽古なんですよ。ヨーロッパの道場が主催で合宿しているんです」
・・・なるほど、それで白人が混じっているのか。
「おや、あなたは日本人ですかな?」
・・・・!・・・・ふいに日本語で話しかけられました。
隣の椅子に座っている、僧侶姿の男性です。年のころは60過ぎくらい?
「はい日本人です。あなたはどうして日本語を?」
僧侶はニッコリと微笑みながら
「日本に行ってたことがあるんですよ。1965年ごろです。エンジニアの勉強をしていました」
・・・エンジニアがなんで坊主に?・・・まあ、いいや。
「あなたはここの住職ですか?」
ニッコリとうなづきます。
「どうしてお寺で空手をやってるんですか?」尋ねてみます。
「今日、稽古をしている道場の先生のうち、何人かは私の教え子なんですよ」
「・・・すると・・あなたは空手の先生でもあると?」
「ははは・・・まあ、今は坊主ですがね。私、日本のトーキョーにいたとき空手を習ったんです。Y先生、N先生、K先生、それにO先生。あのころのトーキョーにはすごく強い先生が一杯いました」
・・・すごいビッグネームばかりだ!
「私、日本で5年稽古してスリランカに戻りました。多分スリランカ人で日本で黒帯をもらったのは私が最初かもしれません。それで私は技術者として成功しましたので、かたわらに当時の子供達に空手を教えていたのです。そのうちの何人かは、ああやって先生になっている」
・・・と、いうことはこの人、大先生じゃない!
「ところであなた、こうやって空手の見学をしているということは、あなたも空手をおやりですかな?」
「は・・・あ、いえ。かじった程度です。。」
まさか、スリランカに空手を教えに来たなんて言えない・・とても言えない。。
「あなたの眼から見て、どうですかな。スリランカの空手は」
「は・・・はい。ああすごいです。圧倒されてます」
・・・実際圧倒されています。
稽古場では組手が行われています。
スタイルとしては、いわゆる伝統派のスタイルで広いスタンスからのスピードのある攻防です。
何組かの組手が行われた後、白人の先生らしき人がスリランカ人の先生に耳打ちします。
スリランカ人の先生はうなづくと、生徒達の名を呼びます。
3人の生徒が稽古場の中央マットに立ちました。
・・・何をやるんだろう・・・?
「すごい人が来ているんですよ。フランスの方ですがね」
僧侶姿の大先生が言うと・・・!・・・なんだあれは!!
ブロンドの長髪をオールバックに撫で付けて、後でちょんまげのようにくくった白人です。
驚いたのは、その大きさ。
どう見ても身長2mはあるんじゃないか?
スティーブン・セガールを若くした感じをイメージしていただけば、かなり近いです。
3人並んだスリランカ人と向かい合わせに立ち、お互いに礼をして構えます。
掛け組手・・・いわゆる3人掛けをやるということか。
。
スリランカ人の3人は左右に分かれてじりじりと間合いを詰めます。
私から見て手前がわの男が、すばやいインステップから上段への連続突きを見せます。
が、ブロンドはそれを軽く片手でいなすと同時にボディへの横蹴り。
スリランカ人は・・・誇張でなく3mほど吹っ飛びました。
横蹴りの足を引き戻すと同時にクルリと回転して、もうひとりの男の腹に後ろ蹴りを入れます。
その男はその場にガクンと崩れ落ちる。
長身なのに信じられないスピードだ。
もうひとりはそれを見て、完全にひるんでいます。
ブロンドはゆっくりと構えなおし、ニヤリと笑いました。
「いやーーっ!!」やけくそのような気合で、最後の男が回し蹴りを見舞いますが、ブロンドはその足を片手で抱え込み、スパーンと軸足を払います。
そのまま振りかぶった手刀をブーンと振り下ろす。
ピタリ・・・と倒れた男の顔面の直前に止めます。
「それまで!」白人の先生が声を掛けます。
「・・・・どうですかな?」
大先生が聞きますが・・・私は声も出ない。。
「おや、あなたどうしました?顔色が悪いですよ。暑さのせいですかね。ちょっと向こうでお茶でも飲んで休んでいきなさい。さあ、私が案内します。付いて来なさい」
「トミー、トミー!どうした?なんか変だよ。お坊さんのいうとおり、休もうよ。な?」
ボウイに腕を支えられててふらふらと、大先生についていきます。
・・・スリランカに来たのは失敗だった。なんて身の程知らずだったんだろう・・・・
私はもうすっかり落ち込んでしまいました。
ここで映画『燃えよドラゴン』の冒頭シーンを思い出してください。
黄色い袈裟衣を着た僧侶たちの見守る中、ブルース・リーとサモ・ハン・キンポーの対戦シーン。
それによく似た光景が目の前で繰り広げられています。
「えいしゃー!」「いえーいっ!」
気合の入った稽古を見物していると、
「失礼します。日本のかたですか?」
稽古着を着たスリランカ人のひとりが近づいてきて言います。
「はあ・・そうですけど」
彼はニッコリと笑って
「よかったら、こちらへどうぞ。座って見学してください」
よく旅先で日本人が空手道場や大会を見学していると、ただ日本人というだけで来賓扱いされることがありますが、このときもそんな感じです。
「さあさあ、こちらへ・・・」
案内されて、木陰に並んだ椅子に座ります。ボウイも一緒についてきた。
「あのう、すみません。これはなんという道場の稽古なんですか?」
「合同稽古なんですよ。ヨーロッパの道場が主催で合宿しているんです」
・・・なるほど、それで白人が混じっているのか。
「おや、あなたは日本人ですかな?」
・・・・!・・・・ふいに日本語で話しかけられました。
隣の椅子に座っている、僧侶姿の男性です。年のころは60過ぎくらい?
「はい日本人です。あなたはどうして日本語を?」
僧侶はニッコリと微笑みながら
「日本に行ってたことがあるんですよ。1965年ごろです。エンジニアの勉強をしていました」
・・・エンジニアがなんで坊主に?・・・まあ、いいや。
「あなたはここの住職ですか?」
ニッコリとうなづきます。
「どうしてお寺で空手をやってるんですか?」尋ねてみます。
「今日、稽古をしている道場の先生のうち、何人かは私の教え子なんですよ」
「・・・すると・・あなたは空手の先生でもあると?」
「ははは・・・まあ、今は坊主ですがね。私、日本のトーキョーにいたとき空手を習ったんです。Y先生、N先生、K先生、それにO先生。あのころのトーキョーにはすごく強い先生が一杯いました」
・・・すごいビッグネームばかりだ!
「私、日本で5年稽古してスリランカに戻りました。多分スリランカ人で日本で黒帯をもらったのは私が最初かもしれません。それで私は技術者として成功しましたので、かたわらに当時の子供達に空手を教えていたのです。そのうちの何人かは、ああやって先生になっている」
・・・と、いうことはこの人、大先生じゃない!
「ところであなた、こうやって空手の見学をしているということは、あなたも空手をおやりですかな?」
「は・・・あ、いえ。かじった程度です。。」
まさか、スリランカに空手を教えに来たなんて言えない・・とても言えない。。
「あなたの眼から見て、どうですかな。スリランカの空手は」
「は・・・はい。ああすごいです。圧倒されてます」
・・・実際圧倒されています。
稽古場では組手が行われています。
スタイルとしては、いわゆる伝統派のスタイルで広いスタンスからのスピードのある攻防です。
何組かの組手が行われた後、白人の先生らしき人がスリランカ人の先生に耳打ちします。
スリランカ人の先生はうなづくと、生徒達の名を呼びます。
3人の生徒が稽古場の中央マットに立ちました。
・・・何をやるんだろう・・・?
「すごい人が来ているんですよ。フランスの方ですがね」
僧侶姿の大先生が言うと・・・!・・・なんだあれは!!
ブロンドの長髪をオールバックに撫で付けて、後でちょんまげのようにくくった白人です。
驚いたのは、その大きさ。
どう見ても身長2mはあるんじゃないか?
スティーブン・セガールを若くした感じをイメージしていただけば、かなり近いです。
3人並んだスリランカ人と向かい合わせに立ち、お互いに礼をして構えます。
掛け組手・・・いわゆる3人掛けをやるということか。
。
スリランカ人の3人は左右に分かれてじりじりと間合いを詰めます。
私から見て手前がわの男が、すばやいインステップから上段への連続突きを見せます。
が、ブロンドはそれを軽く片手でいなすと同時にボディへの横蹴り。
スリランカ人は・・・誇張でなく3mほど吹っ飛びました。
横蹴りの足を引き戻すと同時にクルリと回転して、もうひとりの男の腹に後ろ蹴りを入れます。
その男はその場にガクンと崩れ落ちる。
長身なのに信じられないスピードだ。
もうひとりはそれを見て、完全にひるんでいます。
ブロンドはゆっくりと構えなおし、ニヤリと笑いました。
「いやーーっ!!」やけくそのような気合で、最後の男が回し蹴りを見舞いますが、ブロンドはその足を片手で抱え込み、スパーンと軸足を払います。
そのまま振りかぶった手刀をブーンと振り下ろす。
ピタリ・・・と倒れた男の顔面の直前に止めます。
「それまで!」白人の先生が声を掛けます。
「・・・・どうですかな?」
大先生が聞きますが・・・私は声も出ない。。
「おや、あなたどうしました?顔色が悪いですよ。暑さのせいですかね。ちょっと向こうでお茶でも飲んで休んでいきなさい。さあ、私が案内します。付いて来なさい」
「トミー、トミー!どうした?なんか変だよ。お坊さんのいうとおり、休もうよ。な?」
ボウイに腕を支えられててふらふらと、大先生についていきます。
・・・スリランカに来たのは失敗だった。なんて身の程知らずだったんだろう・・・・
私はもうすっかり落ち込んでしまいました。
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