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第二章:バチャタン奪還戦

俺たちはバチャタンに到着した

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バチャタンはニット村から北へ馬車で2日ほどの距離だ。

そこにたどり着くまでには、それなりに小規模なモンスターとのバトルや冒険があったのだが、それをいちいち記していたのでは話が進まず、ますます読者離れが加速しそうなので割愛させていただく。

さて、俺たちは今、バチャタンの入り口前に居る。
ここにはバチャタン入りしようとする旅人たちの行列が出来ている。

バチャタンはいわゆる要塞都市になっている。
DQのメルキドとかをイメージしていただくとかなり近い。ただし要塞の入り口を守っているのはゴーレムではない。

「ここから見たところでは、以前とまったく変わりないなあ。しかし多分、入り口の関所の役人たちは新王都の連中に代わっているんだろうね」
ミエルがそう言った。

「さて、間もなく俺たちの番だけどどうする?商人のフリするにしても、武器やらなにやら見られたら厄介だしな。強行突破するか?」

「マーカス、あなたどれだけ無謀なのよ。そんなことしたらバチャタンに入る前にパーティー全滅するわ」
ライカが呆れ声でそう言った。

「ここは私にお任せいただけますか?」
これはレイナだ。

「レイナ、何か策があるのか?」

「私の特技のひとつをお見せしますわ」

レイナはそう言うと、懐から筆と紙を取り出し、なにやら呪符のようなものをしたためはじめた。

ここで関所の役人が俺たちに声を掛ける。

「お前たちは何者だ」

「私たちは旅の商人です」
とりあえず俺がそう応える。

「商人だと?そうは見えんな。馬車を検(あらた)めさせてもらう。お前ら全員、身体検査するぞ」

ここでレイナがにこにこ笑いながら役人に近づいた。
レイナは大酒飲みでサディストのアブナい女だが、こういう風にしていると人懐っこそうな童顔の美少女である。
役人はまったく警戒心を持たない。

「お役人様、素敵なお召し物ですねえ」
そんなことを言いながら役人の肩から背中を撫でまわした。
役人もまんざらではない顔をしている。

その隙にレイナはさきほどしたためた呪符を役人の背中に貼り付けていた。
そして猫なで声で言った。

「私たちはただの商人のパーティーですわ。別に検める必要は無いのじゃありませんか?」

役人はそれに応えてこう言った。

「うむ、検める必要は無いな。通って良し」

俺たちはそのまま馬車ごとバチャタン市街に入場した。


「レイナ、さっきのあれは一体どうしたんだ?」
ミエルが尋ねる。

「式神使役術を使ったのですわ。式神という目に見えない使い魔をあの役人に憑りつかせましたの。それであの方は私の操り人形ですわ」

面白い術だ。まるでスターウォーズのオビ=ワン・ケノービのフォースのようである。

バチャタン市街地はまさに商都らしく活気に溢れている。
多くの商店が立ち並ぶ大都市であり、行きかう人も多く賑やかだ。

「ミエル、新王都軍が制圧したといっても、別に圧制を布いている様子はないな。確かに商人にとっては王国でも新王都でも問題なさそうだ」

「だから制圧されていることに気づいてない旅人も多いと思うよ。ああいうものに目を留めない限りね」

ミエルが指さす建物の壁には数枚のポスターが貼られていた。

『民を栄えさせるマシウス新王と共にバチャタンを独立させよう』

『民衆に生活苦を与える王国政治に抵抗し、豊かな民衆の国を築こう』

それらのポスターを見たライカが言う。

「新王都って別に問題ないんじゃないかしら?無理に奪還する必要ある?私たちが政治に関与する必要はないわけだし」

ライカの言うのには一理ある。
別に王国が絶対正義というわけではないし、新王都が絶対悪であるとは限らない。

しかし・・・

俺たちは別に正義の味方ではない。
武名を上げ、勇者パーティーとなりこの世界でのし上がるには、バチャタン奪還は絶好のチャンスなのだ。

「ライカ、もし変異種のモンスターを多発させている黒幕がここのマシウス新王であるなら、どうせ碌な奴じゃないぞ。やはり倒さなきゃだめだ」

俺はややコジツケではあるが、大義名分を掲げた。

「ライカ、この街を制圧したモンスターの数が分かるか?」

「モンスターの数はそれほど多くは無いわ。せいぜい30体ほどね。ただし高戦闘力のモンスターばかりだけど。特にヤバいのはドラゴンが一匹居ることよ。それも普通のじゃない変異種のドラゴンよ」

「ドラゴンなら僕に任せろ。僕のドラゴンカッターはたとえ変異種であろうが切り刻めるさ」

ミエルがそう言って胸を張った。

「さすがはミエルさんですわ。頼もしいこと」

レイナがそう言うと、ライカはまたむすっと不機嫌そうな顔をした。
ミンミンのときもそうだったが、ライカは同性と仲良くなるのが苦手らしい。

「じゃあモンスターはなんとかなるとして、後の問題は人間の軍勢よ。これはモンスター探査機では調べられない。数千、あるいは万の軍勢が居るかもしれないわよ」

「そちらは私がなんとかしますわ」

レイナが微笑みながらそう言った。
彼女の性格を知らなければ、いわゆる萌えな笑顔だ。

「私は新王都軍の指揮官に接触しますわ。ひとまずここで失礼します。後ほどまたお会いしましょう」

そういうと馬車を飛び降り、街角に立っている警備の兵士に歩み寄った。
関所の役人のときと同様に笑いかけながら呪符を貼り付けている。
なるほど、ああやって指揮官のところまで案内させるつもりのようだ。

レイナは敵に回したくないタイプだが、味方だと非常に頼りになる女だ。
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