悪役令嬢なにそれ?レベルのおっさん、美少年戦士に転生して異世界最強チートの勇者を目指します

冨井春義

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第二章:バチャタン奪還戦

巫女はかなりとんでもない奴のようだ

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薄々気づいてはいたのだが、この世界は単にRPG風の世界というだけでなく、転生前の世界のパラレルワールドらしい。
そしてこの世界のどこかには、ハポン国という日本に似た国が存在するようだ。

「俺はマーカスという空手使いの戦士だ。巫女さん、名前は?」

「私はレイナよ。空手使いの戦士さん?空手はもともと私の国の武術ですわ。どうりで巫女をご存知なわけですね」

飲んだくれの巫女はそう応えた。
いろいろ癖のありそうな女だが、戦闘系、回復系、どちらも使えるというのは魅力的だ。
ぜひ彼女をスカウトしたい。

「レイナ、俺たちのパーティーは今、魔法使いを募集中なんだ。力を貸してくれないか?」

「マーカスさん、あなたは美少年だからご一緒したいのはやまやまなんですけど、弱い人とはパーティーを組みたくないですわ。力を見せてくださる?」

俺をテストしようとは生意気な女だ。

「どうやって見せればいい?」

レイナはグラスを振って見せた。

「バーテンさん、同じものをふたつ頂戴。マーカスさん、どちらが先に潰れるか勝負ですわ」

おいおい飲み比べしようというのか?
マズい・・・俺は下戸なんだよな。。

「ちょっと待てレイナ。それじゃ力を見せることにならないだろ。他になにかないか?」

「あら、挑まれた勝負から逃げるおつもり?そんな弱い戦士のパーティーはご免ですわ」

・・・ああ、よりによって俺の数少ない弱点を突かれるとは。。


「その勝負、僕が受けよう」


・・・おお、助け船が来た。

「あなたは?」

「僕はマーカスのパーティーの一員。戦士ミエルだ。レイナ、勝負だ」

ミエルはそう言って胸を張った。
こんなに頼もしいミエルを見るのは初めてかもしれない。

「まあなんて素敵な戦士さん。よろしいですわ、まずは乾杯しましょう」

こうしてミエル vs レイナの飲酒対決が始まった。

レイナは外見はコスプレイベントから抜け出してきたような童顔少女なのだが、とにかく強い。
次々にグラスを空けてゆく。

しかしミエルも負けていない。奴も相当なウワバミである。
1時間、2時間、3時間たっても終わりの見えない戦いを、酒場中の客が見守っていた。
(レイナにひどい目にあわされた闘士くずれたちはミエルを応援している)

しかしキリが無いので、この場はミエルに任せることにして俺は酒場を出た。


村の仕立屋に行くと、先日注文した新しい道着が縫いあがっていた。
道着を羽織り黒帯を締めて鏡を見る。俺にはやはりこの姿がいい。

次に鍛冶屋で武器制作の進行状況を確かめて、外に出ると夕暮れ時だった。


酒場に戻ってみると、まだやってる。
ふたりともぜんぜんペースが落ちていない、まるでバケモノ対決だ。

あきれた俺はひとりで宿に戻った。

部屋ではライカが一心に何か機械を組み立てている。
例によって俺が帰って来たことにも気づかないほど没頭していた。


俺は退屈なのでベッドに横になりひと眠りした・・・


騒がしい声で目が覚めた。

宿の窓から外を見ると、ミエルとレイナが肩を組み仲良く大声で歌を歌いながら千鳥足でやってくる。

「なに、あれは?」

さすがのライカもこの騒ぎには気づいたようで、俺の隣で窓の外を見ていた。



ご機嫌で宿に入ってくるふたりを出迎える。

「結局、勝負はどうなったんだ?」

「あはは・・この子はほんとうに強いよ。ぜんぜん潰れない」

「私こそ驚きましたわ。うふふ♪こんなに強い殿方にお目にかかったは初めて」

なんだか分からないが、引き分けだったようである。

「ミエル、誰なのこの子?」

ライカが不機嫌そうに言う。

「ああライカ。ミンミンさんの後任のレイナだ。よろしく頼む。レイナ、科学者のライカだ」

「ライカさん、はじめまして。お世話になりますわ」

ライカは無言だ。なんか怒ってるぽい。

「レイナのために部屋をもう一つ取ったから、俺たちはそっちで飲みなおす。じゃあまた明日」

ミエルはそう言うと、ライカと肩を組んだまま部屋を出て行った。



「なんなのミエルは。あの女、およそミンミンちゃんとは真逆のタイプじゃない。なんでもありなの?」

ミエルが部屋を出てからも、ライカはプリプリと怒っていた。

「私は酔っ払いが大嫌いなの。知的生産性を著しく低下させる愚かな行為だわ。マーカスはあんな愚かなことしないよね?」

俺は下戸なので、したくてもできない体質なのだ。

「マーカス・・・私、今日はもう疲れた」

そう言ってライカがしなだれかかってくる。
うん、やはり俺にはこっちの方が向いているようだ。

その夜、俺はライカをベッドの中で何度も震えさせた。
彼女の知的生産性が落ちなければ良いのだが。。
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