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第一章:転生と旅立ち
屋根の上の少女はこの世のものとは思えないほど美しかった
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ギシギシと軋むような音がした。
屋敷の屋根に設置された滑車が動き出したのだ。
鉄の鎖がガラガラと音を立てて巻き上がってゆく。
しばらく見ていると、エレベーターのようにベッドのようなものがせりあがって来た。
そのベッドの上には白い布で包まれた人体のようなものが見える。
・・・あれがミンミンか?
「さあ、坊や。雷を呼ぶなら今だよ」
いつの間にかメアリー・シェリーが外に出てきていた。
「わかった。呪文を唱えるぞ・・」
俺はそう言うと両手を空に掲げて神に祈った。
・・・この雷に生命が宿りますように。。
「エ、レ、ク、ト、ロ !!!!」
晴れ渡った空が一瞬で黒くなる。
雷雲が空を覆いつくしたのだ。
次の瞬間、バーン!と爆弾が落ちるような轟音が響き、目が眩むほどの雷光が閃いた。
屋敷の屋根に巨大な火花が飛び散り、ミンミンの身体を包んでいる白布に引火した。
その火はすぐに炎となって燃え上がる。
「だめだ!ミンミンが燃えてしまう!」
俺は慌てたが、そのとき滝のような豪雨が天から降って来た。
その雨が炎の勢いを弱め、ついには鎮火した。これは神の恵みだろうか?
・・しかしおかしい。
前にエレクトロを使ったときは、落雷が終わると同時に空は元通りになった。
なのに今回まだ空は黒雲に覆われ、雲の間には雷光が閃いている。
そして再び轟音と閃光とともに巨大な火花が飛び散った。
そのあまりの眩しさに、その場の誰もが目を伏せていた。
光が鎮まり、再び屋根に目を向ける。
激しい雨が降る暗闇の中、屋根に立つ人影が見えた。
そして黒い雲の間で閃く雷光がその人影を照らした。
それはこの世のものとは思えないほど美しい裸の少女であった。
雨に濡れた肌は輝くように白く、細くしなやかな体は中性的な美しさをたたえている。
そして背中まで届く栗色の巻き毛から覗く両耳は長く尖っていた。
少女の顔は無表情で、大きな瞳は虚空を見つめている。
あれはミンミンなのか・・・?
「ミンミン!大丈夫か?」
俺が声を掛けると、少女は無表情のまま見下ろすように瞳をこちらに向けた。
その視線はぞっとするほど冷たかった。
「ミンミン、俺だ、マーカスだ。わかるか?」
しかし少女は俺の声に関心を示す様子はなかった。
そのまま再び虚空を見つめると
「テレポ・・・」
呪文を唱えた。
空は一瞬で青空に戻り、それと同時に屋根の上の少女の姿は消えていた。
「エルフだ・・・」
ミエルがつぶやいた。
「ミンミンさんはエルフだったんだ」
ミンミンが頑なにローブを脱がなかった理由が今わかった。
ミンミンは人間ではなかった。
エルフである姿を俺たちに見られたくなかったのだ。
「マーカス、ミンミンさんはテレポの呪文を唱えた。マリプの町に戻っているはずだ。僕たちも戻ろう」
ミエルがそう言ったが、俺は首を横に振った。
「いや、戻らない。俺たちは予定通りバチャタンに向かう」
「どうしてだ?ミンミンさんを探さないのか?」
俺は鞄の裏蓋にあるパーティーのステータス表示を確認して言った。
「テレポの呪文はパーティー全員に効力がある。しかしミンミンはひとりでテレポーテーションした」
「・・・?」
「ミンミンは俺たちのパーティーを自分の意思で離れたんだ。本来なら俺が解雇しないかぎりできないはずなんだけど、それだけ強い意思なんだろう」
「・・マーカス、君はそれでいいのか?」
俺は大きく頷いた。
「ミンミンは生き返った。俺にはそれだけで十分だ。ミンミンはこれからは自分の人生を歩むだろう。俺たちは俺たちのやるべきことをやろう」
屋敷の屋根に設置された滑車が動き出したのだ。
鉄の鎖がガラガラと音を立てて巻き上がってゆく。
しばらく見ていると、エレベーターのようにベッドのようなものがせりあがって来た。
そのベッドの上には白い布で包まれた人体のようなものが見える。
・・・あれがミンミンか?
「さあ、坊や。雷を呼ぶなら今だよ」
いつの間にかメアリー・シェリーが外に出てきていた。
「わかった。呪文を唱えるぞ・・」
俺はそう言うと両手を空に掲げて神に祈った。
・・・この雷に生命が宿りますように。。
「エ、レ、ク、ト、ロ !!!!」
晴れ渡った空が一瞬で黒くなる。
雷雲が空を覆いつくしたのだ。
次の瞬間、バーン!と爆弾が落ちるような轟音が響き、目が眩むほどの雷光が閃いた。
屋敷の屋根に巨大な火花が飛び散り、ミンミンの身体を包んでいる白布に引火した。
その火はすぐに炎となって燃え上がる。
「だめだ!ミンミンが燃えてしまう!」
俺は慌てたが、そのとき滝のような豪雨が天から降って来た。
その雨が炎の勢いを弱め、ついには鎮火した。これは神の恵みだろうか?
・・しかしおかしい。
前にエレクトロを使ったときは、落雷が終わると同時に空は元通りになった。
なのに今回まだ空は黒雲に覆われ、雲の間には雷光が閃いている。
そして再び轟音と閃光とともに巨大な火花が飛び散った。
そのあまりの眩しさに、その場の誰もが目を伏せていた。
光が鎮まり、再び屋根に目を向ける。
激しい雨が降る暗闇の中、屋根に立つ人影が見えた。
そして黒い雲の間で閃く雷光がその人影を照らした。
それはこの世のものとは思えないほど美しい裸の少女であった。
雨に濡れた肌は輝くように白く、細くしなやかな体は中性的な美しさをたたえている。
そして背中まで届く栗色の巻き毛から覗く両耳は長く尖っていた。
少女の顔は無表情で、大きな瞳は虚空を見つめている。
あれはミンミンなのか・・・?
「ミンミン!大丈夫か?」
俺が声を掛けると、少女は無表情のまま見下ろすように瞳をこちらに向けた。
その視線はぞっとするほど冷たかった。
「ミンミン、俺だ、マーカスだ。わかるか?」
しかし少女は俺の声に関心を示す様子はなかった。
そのまま再び虚空を見つめると
「テレポ・・・」
呪文を唱えた。
空は一瞬で青空に戻り、それと同時に屋根の上の少女の姿は消えていた。
「エルフだ・・・」
ミエルがつぶやいた。
「ミンミンさんはエルフだったんだ」
ミンミンが頑なにローブを脱がなかった理由が今わかった。
ミンミンは人間ではなかった。
エルフである姿を俺たちに見られたくなかったのだ。
「マーカス、ミンミンさんはテレポの呪文を唱えた。マリプの町に戻っているはずだ。僕たちも戻ろう」
ミエルがそう言ったが、俺は首を横に振った。
「いや、戻らない。俺たちは予定通りバチャタンに向かう」
「どうしてだ?ミンミンさんを探さないのか?」
俺は鞄の裏蓋にあるパーティーのステータス表示を確認して言った。
「テレポの呪文はパーティー全員に効力がある。しかしミンミンはひとりでテレポーテーションした」
「・・・?」
「ミンミンは俺たちのパーティーを自分の意思で離れたんだ。本来なら俺が解雇しないかぎりできないはずなんだけど、それだけ強い意思なんだろう」
「・・マーカス、君はそれでいいのか?」
俺は大きく頷いた。
「ミンミンは生き返った。俺にはそれだけで十分だ。ミンミンはこれからは自分の人生を歩むだろう。俺たちは俺たちのやるべきことをやろう」
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