上 下
10 / 44
第一章:転生と旅立ち

魔法少女とパーティーを組んだ

しおりを挟む
冒険者ロビーに戻って、依頼を受けるためのクエスト・カウンターに向かった。

クエストというのは本来は探求,追求という意味だが、この世界では依頼を指すことが多い。

冒険者は基本、旅をするので旅の資金が必要である。
その資金を稼ぐために依頼を受けるのだ。

冒険者への依頼といえばモンスター退治が定番である。
モンスター退治にも性質があって、ひとつは害虫、害獣駆除を目的とするもの。
もうひとつはそのモンスターが食用や衣服、工芸品の材料になるなど、つまりその体に価値があるものだ。

「すみません、レベル1冒険者向けの依頼は何かありますか?」

俺が尋ねると、クエストカウンターの受付(彼女も美人である)がファイルを取り出した。

「そうですね、初めてのクエストでしたらラビットかスライムはいかがですか?」

「あ、じゃあどっちもやります」

「両方ですね。では冒険者IDカードをお願いします」

俺がIDを提示すると、受付嬢が目を丸くする。
そろそろこういう反応されるのにも慣れたんだけど。

「マーカスさん、戦士なんですか?戦士がなんでまたレベル1のクエストを?」

「まあいろいろ事情がありまして。とにかくそれでお願いします」

「わかりました。ラビットもスライムも10体からが買い取りの対象になります。買取単価は300キルトです」

ラビットは肉が美味いし、毛皮の材料にもなる。
スライムはもともとは害虫(?)扱いだったが、最近ではその消化能力をゴミ処理に役立てているようだ。


俺は受注伝票にサインをして依頼書を受け取った。依頼達成期限は受注から1週間である。


「戦士様、戦士様」

誰かを呼ぶ声がする。戦士様・・・? 俺の事か?

振り返ると、子供が立ってこちらを見ていた。

黒いフード付きのローブをかぶった、おそらく9~10歳くらいの少年だ。
栗色の巻き毛がフードから覗いている。
丸顔に大きな目と、低くて丸い小さな鼻のかわいらしい坊やだ。

しかしなんで冒険者ロビーに子供が?
誰か冒険者の子供なのだろうか?

「坊や、どうしたんだい?お父さんかお母さんは居ないの?」

するとその子は俺にこう言った。

「坊やって失礼ですわ、戦士様。私は女です!」

「ああ女の子だったの?ごめんごめん、フードかぶってるからよくわからなかった」

「それに私は子供じゃありません。18歳の魔法使い、名前はミンミンです」

え・・・18歳!それにしちゃ幼く見えるなあ。。

「本当に?じゃあ俺と同い歳じゃない。それは失礼したミンミン。俺はマーカスだ。で、何か用?」

ミンミンと名乗る魔法使いの少女は、少しもじもじした様子で話し始めた。

「マーカス様、あなた今、ラビットとスライムの依頼を受けましたよね?」

「ああ受けた。それが何か?」

「どうか私をマーカス様のパーティーにお加えください。必ず役に立ちます」

「パーティーだって?レベル1の依頼にそんなの必要ないだろう」

「失礼ですがマーカス様、初めてのクエストですよね?いったいどこで狩りをするおつもりですか?」

「どこって町の外を適当に歩き回ったら出て来るんじゃないの?」

ミンミンは白い手袋を付けた、太短い人差し指を顔の前で振りながら言った。

「それは甘いお考えですわ。ラビットやスライムは達成難易度の低いぶん、人気の獲物なのですよ。誰も自分の狩場は教えませんわ」

それは知らなかった。ゲームなら簡単に遭遇できるのに。

「私なら魔法で獲物をおびきよせることができます。マーカス様はただ獲物を倒してくれればいいのです」

なるほど、それは効率が良さそうだ。
俺はミンミンとパーティーを組んでみるのもいいかと考えた。

「報酬は俺が7割、ミンミンが3割だ。それでよければパーティーに加えよう」

ミンミンはうれしそうに満面の笑みを浮かべた。

「ありがとうございますマーカス様。ミンミン、一生懸命働きます」


ミンミンと共に冒険者ギルドの建物の外に出ると、3人の女の子たちが駆け寄って来た。
3人ともすらりと背が高く、スレンダーだが豊かな胸を持った美少女たちだ。

「「マーカス様、お待ちしてました」」

「はあ・・ええと誰だっけ?」

美少女たちは一様にはにかむようにうつむき加減である。
そのうちのひとりが意を決したように言った。

「あの、私たちは上級冒険者サロンで働いている者です。仕事が終わりましたのでマーカス様と外でお会いしたくてお待ちしていたのです」

ああそうか。サロンの女の子なら選りすぐりの美少女なわけだ。

そしてこれはいわゆる『出待ち』されていたんだな。
そうそう俺は美少年でとてもモテるのだった。

「マーカス様、この子たちはなんですか?」

そう言いながらミンミンが俺の服の裾を引っ張る。
その様子を見て美少女たちのひとりが言った。

「あら、マーカス様。お子様ですか?かわいい坊やですね」

「違います!私は女魔法使い。マーカス様のパーティーの一員です!」

それを聞いた美少女たちは顔を見合わせてくすくす笑った。

「何がおかしいんですか!」

いきり立つミンミンを、まあまあとなだめてから言った。

「ミンミン、今日はもう遅くなるからクエストは明日からだ。明日朝に冒険者ロビーに集合しよう。じゃあ、ここで」

ポカンとしているミンミンはとりあえずここに放置することにした。

俺は見た目は純朴そうな美少年であるが、中身はおっさんである。
目の前に美味しそうな美少女たちがお皿に乗っているのを見逃すわけにはいかない。

「君たち、よかったらこれからご飯でも食べにいかないか?」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界に来たのでVtuberになろうかと思う

月乃糸
大衆娯楽
男女比が1:720という世界に転生主人公、都道幸一改め天野大知。 男に生まれたという事で悠々自適な生活を送ろうとしていたが、ふとVtuberを思い出しVtuberになろうと考えだす。 ブラコンの姉妹に囲まれながら楽しく活動!

処理中です...