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何がミスリードだったのか?

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 病室の穂積恵子は御影の身に起きた出来事を聞くと激しく動揺して号泣した。
 そのため彼女が気を取り直すまで、真奈美と田村はしばらくの間待たなければならかなった。
 ようやく少し平静を取り戻した穂積恵子から、真奈美は話を聞きだした。

「ミスリードに引っかかっていた。御影さんはそう言ったのですね。後催眠暗示ですか・・・たしかにそれなら不可解な点が多いです」

 真奈美は御影が何を考えたのかを想像してみた。
 私たちが引っかかっていたミスリードとは、一体何だったのか?

「穂積さん、あなたのコンピューターのパスワード・・・ああ、もういいです」

 真奈美は穂積の脳裏に浮かんだパスワードを瞬時に読み取っていた。

「宮下君、今電話で山科さんに警察の警護をお願いした。サイキックは超人ではない。物理攻撃には御影君ですらやられたんだからね。君も狙われる可能性がある」

 真奈美と田村は病院の休憩室に移動した。
 真奈美は黙って考え込んでいた。

 ・・・御影さんがこんなことになってしまった今、私が考えなければならない。御影さんが至った真相を突き止めなければ。。

 間もなくして、山科警部補が3人の刑事を連れてやって来た。

「田村さん、宮下君、実は御影君に頼まれていたことがあったんだ。彼の事務所のエレベーターの監視カメラ映像が見たいってね。ところが警備会社は捜査令状が無ければ開示できないって突っぱねやがった。しかし御影君がこんなことになって、捜査の意図がわからない。令状を取るにも時間がかかりそうなんだ」

 ・・・エレベーターの映像?それはなんのためだったんだろう?

「御影さんの事務所に行かなければ・・・御影さんはデパートの防犯カメラの映像を確認するって言ってたんです」

 見落としていたものがそこにあるはずだ。
 ミスリードに引っかかり、見なければならないものを見逃していたのだろう。
 しかし、何がミスリードだったのか?

「わかった。では宮下君は我々が警護するから、警察の車で行こう。田村さんは?」

 田村は少し考えてから言った。

「私は本部に戻ります。明日の安田総理の警護について、内閣調査室の鮫島さんと相談せねばならなくなった」

 真奈美はその事も気になっていた。

「御影さんが動けない今、どうやって警護するおつもりなんですか?」

 田村は少し微笑んで答えた。

「御影君の最初の作戦で行くよ。御影君のかわりに僕が総理を警護する。宮下君はコスモエナジー救世会だ」

「所長・・・大丈夫なんですか?」

「宮下君、S.S.R.I所長を舐めてもらっては困る。御影君ほどではないが、僕はこれでも日本屈指のサイキックなんだよ」

 田村は胸を張った。
 その姿は、真奈美がS.S.R.Iに勤務して以来初めて見る、頼もしい田村所長の姿だった。
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