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★読者への挑戦★

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 ふたたびお目にかかります、作者の冨井春義です。
 ここまで書き進めた時点で、不遜にも偉大なる先人エラリー・クイーンを模して、このページを差し挟みたい欲求に抗えなかったことをお許し願います。

 サイキック探偵・御影純一はようやく事件の真相にたどり着いたようです。
 それは表面に見えている連続殺人事件、そしてこれから起きようとしている安田総理予告殺人計画の裏に隠されていた、あまりにも利己的で理不尽な犯罪でした。

 しかし真相にたどり着いた御影は、突然現れた自動車によって跳ね飛ばされてしまった。
 彼はこれからしばらくの間、この物語の表舞台から消えることを余儀なくされてしまいました。

 以後はS.S.R.Iの宮下真奈美が主人公となって捜査を続行せざるを得ないのです。

 私は探偵小説を読むときいつも不満に思うのですが、なぜか名探偵というのは真相を掴んでも最後の瞬間までそれを教えない。
 さっさと話せばもっと早く事件が解決するだろうに、最後に関係者全員を集めて「さて、事件の解明ですが・・・」と一席打つまでは、思わせぶりなことしか言わない。

 どうやら御影純一もその先例に漏れなかったようで、おかげで宮下真奈美はこの後、たいへんな苦労をするわけです。

 仕方がないので、ここで読者の皆さんも宮下真奈美と一緒に、御影がたどり着いた真相を推理してください。

 ただし、この小説は普通の本格推理小説ではありません。
 サイキックというチートな能力がメイントリックという、はなはだアンフェアな物語です。
 思考するだけで人を殺し、他人の思考と行動を自在に操ることが出来る怪物が犯人です。
 真面目な推理小説愛好家なら「それはないだろう!」というような結末になるかもしれません。

 ですから「読者への挑戦」といっても、必ずしも論理的な回答は求めません。
 主人公たちに倣って、直観・第六感をフル活用して想像していただけば結構です。

 健闘をお祈りいたします。
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