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海賊編 エピローグ
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「貴方はいつだって、己の意思を貫かれるお方でしたね」
「嫌になった?」
「いえ、貴方だからこそ、信じていられました。闇の霧に勝って下さると」
「まあ、ラセのおかげなのだけどね」
『では、そろそろ』
セントミアの冷静な声を聞いて、ラセは、大切な事を思い出す。
「セントミア。いままで、本当に有難う。一緒に戦ってくれて」
『いえ。私こそ、対価の為に、ラセを利用してしまった事、申し訳なく思っています』
「セントミア!」
ラセは、セントミアに抱き着いた。
セントミアは、大人しくラセの腕の中に収まる。
「セントミア。セントミア。本当に有難う。感謝しきれないくらい有難う」
ラセの目から涙が溢れる。
セントミアの目からもつられて、涙が溢れた。
セントミアは、対価の為に、ラセの協力をしていた。
対価を払えば、セントミアは願いが叶い、元の世界へと戻れる。
元の世界に戻れば、大切な人が待っていることも知っていた。
喜ばしい事のはずなのに、別れは、辛かった。
ひとしきり泣いた後、お互い身体を離す。
『私ラセの事、好きでした。大好きでした』
「私もセントミアの事、大好きだった。だから、セントミアには、幸せになってほしい」
「私もラセの幸せを願っています。
ラセが、どちらの殿方を選ばれるのか、私にはわかりませんが、幸せになってほしいです」
お互いの幸せを願う。
どんなに離れていても、世界が違っても、この想いだけは、変わらないから。
同じだから。
だから、笑顔で、さよならしようか?
これからの幸せを誓って。
ラセも、セントミアも微笑む。
涙にぬれた顔で微笑む。
水の大精霊が呪文を唱える。
セントミアと風の大精霊の周りに、水の膜が張られる。
『さあ。行きましょう。ブルー水晶の守護する星へ!』
水の大精霊が呪文を唱えると、風景はホークの屋敷に戻っていた。
あの後、いくら、水の大精霊への道を繋いでもらっても、出迎えてくれたのは、海の守護魔神だけだった。
水の大精霊もこの世界から去ったのだと知り、寂しさを覚える。
ルイの指に嵌められた指輪はきちんとパール王子に返却した。
ウェイルが、パール王子とルイが結婚すればいいのにと、冗談を言ってからかっていた。
その冗談にキラーは爆笑して、ホークは本気で慌てていた。
当然ルイがすぐに否定して、指輪はパール王子の手の中。
いつか、未来の花嫁様に授けられるその日まで。
潮風が心地よい。
やっぱり、海賊船の甲板からの風は最高だ。
気持ち良く、風の精霊達が、空を飛んでいく。
「ラセ、これから、海賊仲間としてよろしく」
「ラセちゃん。ごはん出来たよ」
「ラセ。あんた痩せた?もっと食べなさいよ」
「ラセ。今度は、この島に宝探しに行こうと思っているのだが、どうだ?」
「ラセ、また、星を一緒に見ようぜ」
ウェイルが新しく海賊船に加わって、
おいしいごはんを作ってくれるトタプさんがいて、
厳しいけど、やさしいアンナさんがいて、
海賊稼業が大好きな船長デチャニーさんがいて、
ルイがいて、
私はようやく、普通の幸せを手に入れることが出来た。
私が嘘偽りなく、私で居られる居場所を。
完
「嫌になった?」
「いえ、貴方だからこそ、信じていられました。闇の霧に勝って下さると」
「まあ、ラセのおかげなのだけどね」
『では、そろそろ』
セントミアの冷静な声を聞いて、ラセは、大切な事を思い出す。
「セントミア。いままで、本当に有難う。一緒に戦ってくれて」
『いえ。私こそ、対価の為に、ラセを利用してしまった事、申し訳なく思っています』
「セントミア!」
ラセは、セントミアに抱き着いた。
セントミアは、大人しくラセの腕の中に収まる。
「セントミア。セントミア。本当に有難う。感謝しきれないくらい有難う」
ラセの目から涙が溢れる。
セントミアの目からもつられて、涙が溢れた。
セントミアは、対価の為に、ラセの協力をしていた。
対価を払えば、セントミアは願いが叶い、元の世界へと戻れる。
元の世界に戻れば、大切な人が待っていることも知っていた。
喜ばしい事のはずなのに、別れは、辛かった。
ひとしきり泣いた後、お互い身体を離す。
『私ラセの事、好きでした。大好きでした』
「私もセントミアの事、大好きだった。だから、セントミアには、幸せになってほしい」
「私もラセの幸せを願っています。
ラセが、どちらの殿方を選ばれるのか、私にはわかりませんが、幸せになってほしいです」
お互いの幸せを願う。
どんなに離れていても、世界が違っても、この想いだけは、変わらないから。
同じだから。
だから、笑顔で、さよならしようか?
これからの幸せを誓って。
ラセも、セントミアも微笑む。
涙にぬれた顔で微笑む。
水の大精霊が呪文を唱える。
セントミアと風の大精霊の周りに、水の膜が張られる。
『さあ。行きましょう。ブルー水晶の守護する星へ!』
水の大精霊が呪文を唱えると、風景はホークの屋敷に戻っていた。
あの後、いくら、水の大精霊への道を繋いでもらっても、出迎えてくれたのは、海の守護魔神だけだった。
水の大精霊もこの世界から去ったのだと知り、寂しさを覚える。
ルイの指に嵌められた指輪はきちんとパール王子に返却した。
ウェイルが、パール王子とルイが結婚すればいいのにと、冗談を言ってからかっていた。
その冗談にキラーは爆笑して、ホークは本気で慌てていた。
当然ルイがすぐに否定して、指輪はパール王子の手の中。
いつか、未来の花嫁様に授けられるその日まで。
潮風が心地よい。
やっぱり、海賊船の甲板からの風は最高だ。
気持ち良く、風の精霊達が、空を飛んでいく。
「ラセ、これから、海賊仲間としてよろしく」
「ラセちゃん。ごはん出来たよ」
「ラセ。あんた痩せた?もっと食べなさいよ」
「ラセ。今度は、この島に宝探しに行こうと思っているのだが、どうだ?」
「ラセ、また、星を一緒に見ようぜ」
ウェイルが新しく海賊船に加わって、
おいしいごはんを作ってくれるトタプさんがいて、
厳しいけど、やさしいアンナさんがいて、
海賊稼業が大好きな船長デチャニーさんがいて、
ルイがいて、
私はようやく、普通の幸せを手に入れることが出来た。
私が嘘偽りなく、私で居られる居場所を。
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