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海賊編 第十一章 黒煙竜
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しばらく進むと、荒れ狂う嵐へと突入した。
黒煙竜の結界に守られたラセ達は、無事だが船で渡るのは確かに難しい海域だ。
黒い雨雲からは、雷が鳴り響く。
黒煙竜は、出っ張った岩などを避けながら、速度を落とさずに進む。
薄暗い雨の中。セントミアの宿るペンダントが珊瑚色に輝く。
すぐに蓋を開けると、珊瑚色に輝く獣が姿を現す。
セントミアは、現れると同時に、珊瑚色の結界を張る。
『闇の霧の気配が、近づいています』
『闇の帝国は、もうすぐだ』
ラセは、ペンダントから、短槍を取り出し、戦闘態勢を整える。
突然、強風が吹いた。
黒煙竜の身体が揺らぐ。
海からも、まるで、黒煙竜の足を捕えようとしているかのように、水が這い上がる。
「あれは!」
ラセは、闇化した風精霊と、水精霊の姿を見た。
黒煙竜が、身体を逸らすと、前方から火の玉が飛んできた。
ラセには、見えないが、闇化した火精霊が操っているのだろう。
ただでさえ視界が悪いのに、闇の霧の影響で、前が良く見えない。
地響きがして、見渡すと、岩肌がせりあがってくる。
真横に迫った尖った岩肌を、寸前の所で黒煙竜は回避する。
安堵しかけた時、岩肌にくっ付いていた蔓が急速に伸びた。
掴まれそうになるのを、槍で叩ききる。
『小賢しい。闇化した精霊達よ』
「ロンって、闇の帝国の守護魔神なのでしょ。
どうにかできないの?」
『闇化した精霊達は、闇の霧に操られている。
風の大精霊をどうにかしないことには、対処出来ない』
「そんな!」
「王族属性魔法は、使えないのか!」
『やめて置け。王族属性魔法が有効なのは、エレメンタル大陸に属している精霊達だけだ』
「嘘~!ならどうやって、風の大精霊を正気に戻すの!」
『清らかな心を持って接しろ』
「む、無責任な~!」
ラセ達が口論していると、地上に街並みが見えた。
闇化した人間達が、虚ろな表情で、徘徊している。
『闇の帝国には、闇の霧に侵された人間が連れてこられる。
ほとんどの者は、正気を失い、闇の霧をばら撒きに、不特定箇所に出現する』
「でも、私があった闇の霧の者の中には、明らかに、標的を定めている者もいたけれども?」
『闇の霧に侵された者の中には、初めから、心の中に、憎しみや、野望を持った者もいる。
そういった者達は、憎い対象や、野望の為に、闇の力を振るうことが多い』
「そうなんだ」
ラセは、彷徨っている住人を見つめた。
「ねえ。もし、風の大精霊を闇より解放出来たのならば、闇化した精霊や住人を助けるのかな?そうしたら、李祝の家臣や、クレイの両親は、元に戻るのかな?」
『……わからない。けれど、やる価値はあるだろう』
「ありがとう。今はその言葉だけで十分」
『風の大精霊は、大神殿にいる。急ごう』
黒い翼が、高くそびえたつ神殿に向けて、羽ばたいた。
黒煙竜の結界に守られたラセ達は、無事だが船で渡るのは確かに難しい海域だ。
黒い雨雲からは、雷が鳴り響く。
黒煙竜は、出っ張った岩などを避けながら、速度を落とさずに進む。
薄暗い雨の中。セントミアの宿るペンダントが珊瑚色に輝く。
すぐに蓋を開けると、珊瑚色に輝く獣が姿を現す。
セントミアは、現れると同時に、珊瑚色の結界を張る。
『闇の霧の気配が、近づいています』
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突然、強風が吹いた。
黒煙竜の身体が揺らぐ。
海からも、まるで、黒煙竜の足を捕えようとしているかのように、水が這い上がる。
「あれは!」
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黒煙竜が、身体を逸らすと、前方から火の玉が飛んできた。
ラセには、見えないが、闇化した火精霊が操っているのだろう。
ただでさえ視界が悪いのに、闇の霧の影響で、前が良く見えない。
地響きがして、見渡すと、岩肌がせりあがってくる。
真横に迫った尖った岩肌を、寸前の所で黒煙竜は回避する。
安堵しかけた時、岩肌にくっ付いていた蔓が急速に伸びた。
掴まれそうになるのを、槍で叩ききる。
『小賢しい。闇化した精霊達よ』
「ロンって、闇の帝国の守護魔神なのでしょ。
どうにかできないの?」
『闇化した精霊達は、闇の霧に操られている。
風の大精霊をどうにかしないことには、対処出来ない』
「そんな!」
「王族属性魔法は、使えないのか!」
『やめて置け。王族属性魔法が有効なのは、エレメンタル大陸に属している精霊達だけだ』
「嘘~!ならどうやって、風の大精霊を正気に戻すの!」
『清らかな心を持って接しろ』
「む、無責任な~!」
ラセ達が口論していると、地上に街並みが見えた。
闇化した人間達が、虚ろな表情で、徘徊している。
『闇の帝国には、闇の霧に侵された人間が連れてこられる。
ほとんどの者は、正気を失い、闇の霧をばら撒きに、不特定箇所に出現する』
「でも、私があった闇の霧の者の中には、明らかに、標的を定めている者もいたけれども?」
『闇の霧に侵された者の中には、初めから、心の中に、憎しみや、野望を持った者もいる。
そういった者達は、憎い対象や、野望の為に、闇の力を振るうことが多い』
「そうなんだ」
ラセは、彷徨っている住人を見つめた。
「ねえ。もし、風の大精霊を闇より解放出来たのならば、闇化した精霊や住人を助けるのかな?そうしたら、李祝の家臣や、クレイの両親は、元に戻るのかな?」
『……わからない。けれど、やる価値はあるだろう』
「ありがとう。今はその言葉だけで十分」
『風の大精霊は、大神殿にいる。急ごう』
黒い翼が、高くそびえたつ神殿に向けて、羽ばたいた。
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