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海賊編 第十章 双子の王族
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「義賊テール行くわ!」
「義賊テールって、え?」
ルイは驚愕している間に、ラセは黒煙竜の背中から飛び降りた。
風の精霊が、ラセの身体を支えながら、ゆっくりと降下する。
降り立ったラセに海賊船の人々の視線が集まる。
ラセは、腕を天に伸ばした。
「この船は、今から、私が占拠したわ。大人しくティーラ姫を引き渡しなさい!」
「はあ?なにふざけたこと言っているんだ?」
「待て、あの長い髪。あれは義賊テールに違いねー」
「てことは、ティーラ姫は、闇の帝国とグルだったのか?」
海賊達の間にざわめきが訪れる。
「お前ら、動揺するな!」
クレイが、海賊達をかき分けて、現れた。
ラセは唾を飲み込む。
クレイが怖い。でも、逃げたくない!
「ティーラ姫は、何処!」
「あいにくだったな。ティーラ姫は、反対側の船だ。わざわざ火筒を偽装して油断させるとは、いい度胸している」
クレイは、剣を抜いた。
だが、ラセは、武器を構えなかった。
代わりに、不気味な笑みを浮かべる。
「あら、偽造などではないわ。本物を持っている人を人質に取ったの」
ラセは、黒煙竜を指差した。
身を乗り出して、様子を窺っていたルイとクレイの視線が合う。
「きさま!ルイを人質に取るなど何たる卑怯な!」
クレイが切りかかってくる。
ラセは、素早い動きで、剣先を交わした。
「ちょこまかと」
切りかかるクレイと、避けまくるラセ。
反対側の船からも、何事かと人が甲板に集まって来た。
その中には、ティーラ姫に媚を売って、質の良い船室を手に入れたチャナの姿もあった。
「あれは!」
チャナは、クレイと戦っている髪の長い少女が、ラセだと気付いて驚愕した。
「どうして、ラセは、チャナが確かに殺したはずであるよ」
ティーラ姫は、家臣達の制止を拒み甲板に来ていた。
「なぜ、あの子がここに」
ティーラは、他の人に気付かれないように、王家に伝わる水属性の魔法を唱えた。
忍び寄る水精霊の気配を感じて、ラセは、手をかざす。
「見つけた!ティーラ姫」
水精霊の攻撃が、ラセに襲い掛かる。
と思った瞬間ラセのかざした手に、水精霊の攻撃が粉砕された。
水しぶきが辺りに飛び散る。
「ど、どうして」
驚愕で足がすくむ。ティーラ姫。
「あの子は、嘘吐きで、精霊魔法すら扱えない子で」
ティーラ姫を見つけたラセは、反対側の船に渡る為、海へと飛び込んだ。
だが、水精霊の力を借りたラセの身体は、海水に沈まない。
まるで、足場があるかのように、海の上を平然と駆け抜けるラセの姿に誰もが驚愕して、動けずにいた。
「な、何をぼんやりしている!ティーラ姫を守れ!あの娘を打ち落とせ!」
大砲が、ラセに向けられても、歩みを止めなかった。
どんなに狙いを正確に定めても、見えない風の結界が、ラセを守って大砲の軌道をずらす。
風魔法と水魔法を同時に使い、ラセは、ティーラ姫がいる、船へと乗り込んだ。
動揺して、逃げ纏う人々を尻目に、ティーラ姫は、気丈に振る舞っていた。
「わたしになにか、御用かしら?」
ティーラ姫は、ラセの事を殺そうと暗躍していたことが、ばれたのではないかと、内心焦っていた。
だが、ラセが取った行動は、ティーラ姫の予想に反していた。
ラセは、ティーラ姫の前で片膝を付いて、頭を垂れた。
目上の身分の者にする正しい作法に、ティーラ姫は困惑する。
「ティーラ姫。ご無礼を承知で申し上げます。
今すぐに、私と一緒に、城へとお戻りください。
イハ王子が、貴方様のお帰りをお待ちしております」
「イハが?どうして?だってイハは、ノーリア姫と結婚するはずでは」
「イハ王子と、ノーリア姫は、今回の婚約を快く思っておりません。
イハ王子が、本当に傍に居てほしいお方は、ティーラ姫。貴方様なのです」
「そんな。だって、許されるはずが……」
「誰かに、許されなければ、いかないことなのですか?
本当の想いを押し殺して、嘘を付いて、挙句の果てに、闇に呑まれて。
今のイハ王子を救えるのは、ティーラ姫、貴方様だけなのです」
「救うって?イハに何かあったの?ねえ!」
「義賊テールって、え?」
ルイは驚愕している間に、ラセは黒煙竜の背中から飛び降りた。
風の精霊が、ラセの身体を支えながら、ゆっくりと降下する。
降り立ったラセに海賊船の人々の視線が集まる。
ラセは、腕を天に伸ばした。
「この船は、今から、私が占拠したわ。大人しくティーラ姫を引き渡しなさい!」
「はあ?なにふざけたこと言っているんだ?」
「待て、あの長い髪。あれは義賊テールに違いねー」
「てことは、ティーラ姫は、闇の帝国とグルだったのか?」
海賊達の間にざわめきが訪れる。
「お前ら、動揺するな!」
クレイが、海賊達をかき分けて、現れた。
ラセは唾を飲み込む。
クレイが怖い。でも、逃げたくない!
「ティーラ姫は、何処!」
「あいにくだったな。ティーラ姫は、反対側の船だ。わざわざ火筒を偽装して油断させるとは、いい度胸している」
クレイは、剣を抜いた。
だが、ラセは、武器を構えなかった。
代わりに、不気味な笑みを浮かべる。
「あら、偽造などではないわ。本物を持っている人を人質に取ったの」
ラセは、黒煙竜を指差した。
身を乗り出して、様子を窺っていたルイとクレイの視線が合う。
「きさま!ルイを人質に取るなど何たる卑怯な!」
クレイが切りかかってくる。
ラセは、素早い動きで、剣先を交わした。
「ちょこまかと」
切りかかるクレイと、避けまくるラセ。
反対側の船からも、何事かと人が甲板に集まって来た。
その中には、ティーラ姫に媚を売って、質の良い船室を手に入れたチャナの姿もあった。
「あれは!」
チャナは、クレイと戦っている髪の長い少女が、ラセだと気付いて驚愕した。
「どうして、ラセは、チャナが確かに殺したはずであるよ」
ティーラ姫は、家臣達の制止を拒み甲板に来ていた。
「なぜ、あの子がここに」
ティーラは、他の人に気付かれないように、王家に伝わる水属性の魔法を唱えた。
忍び寄る水精霊の気配を感じて、ラセは、手をかざす。
「見つけた!ティーラ姫」
水精霊の攻撃が、ラセに襲い掛かる。
と思った瞬間ラセのかざした手に、水精霊の攻撃が粉砕された。
水しぶきが辺りに飛び散る。
「ど、どうして」
驚愕で足がすくむ。ティーラ姫。
「あの子は、嘘吐きで、精霊魔法すら扱えない子で」
ティーラ姫を見つけたラセは、反対側の船に渡る為、海へと飛び込んだ。
だが、水精霊の力を借りたラセの身体は、海水に沈まない。
まるで、足場があるかのように、海の上を平然と駆け抜けるラセの姿に誰もが驚愕して、動けずにいた。
「な、何をぼんやりしている!ティーラ姫を守れ!あの娘を打ち落とせ!」
大砲が、ラセに向けられても、歩みを止めなかった。
どんなに狙いを正確に定めても、見えない風の結界が、ラセを守って大砲の軌道をずらす。
風魔法と水魔法を同時に使い、ラセは、ティーラ姫がいる、船へと乗り込んだ。
動揺して、逃げ纏う人々を尻目に、ティーラ姫は、気丈に振る舞っていた。
「わたしになにか、御用かしら?」
ティーラ姫は、ラセの事を殺そうと暗躍していたことが、ばれたのではないかと、内心焦っていた。
だが、ラセが取った行動は、ティーラ姫の予想に反していた。
ラセは、ティーラ姫の前で片膝を付いて、頭を垂れた。
目上の身分の者にする正しい作法に、ティーラ姫は困惑する。
「ティーラ姫。ご無礼を承知で申し上げます。
今すぐに、私と一緒に、城へとお戻りください。
イハ王子が、貴方様のお帰りをお待ちしております」
「イハが?どうして?だってイハは、ノーリア姫と結婚するはずでは」
「イハ王子と、ノーリア姫は、今回の婚約を快く思っておりません。
イハ王子が、本当に傍に居てほしいお方は、ティーラ姫。貴方様なのです」
「そんな。だって、許されるはずが……」
「誰かに、許されなければ、いかないことなのですか?
本当の想いを押し殺して、嘘を付いて、挙句の果てに、闇に呑まれて。
今のイハ王子を救えるのは、ティーラ姫、貴方様だけなのです」
「救うって?イハに何かあったの?ねえ!」
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