93 / 115
海賊編 第九章 武道会
93
しおりを挟む
「優勝おめでとう」
「嫌味か!」
館に戻って来た一行は、ゲオルグの手当てを済ませた。
包帯でぐるぐる巻きになったゲオルグは叫んだ。
「でも、これで、イハ王子よりも強い事が証明された。
ゲオルグは、自信を持ってもいいと思う」
「確かに勝ちはしたけど、何かが違う気がする」
ゲオルグは頭を抱えた。
「それで、いつノーリア姫に、告白をしに行くの?」
「こ、告白!」
ゲオルグの顔が、真っ赤に染まった。
「告白しないの?」
ラセは、首を傾げた。
「告白って心の準備が」
「ゲオルグ。お客様がいらしたのだけれども、通してもよろしいかしら?」
「え?ああ」
ゲオルグが、いい加減に返事をすると、扉が開いた。
現れたのは、今まさに話題になっていたその人で、ゲオルグは仰天した。
「ノ、ノーリア姫!どうしてこちらに」
「ゲオルグが武道会で優勝したと聞いてお祝いにやってきましたわ」
ノーリア姫は抱えていた花束をゲオルグに手渡した。
「すばらしい、作戦でしたね」
ジイも一礼してから、部屋へと入る。
「ああ。あの作戦はこいつが……あれいない?」
ゲオルグは先ほどまで居たラセを探した。
「なぜ隅に隠れている?」
ゲオルグは、ラセを見つけると近づいた。
「ねえ。ノーリア姫とジイさん以外に誰か一緒にいる?団子頭の女の子とか?」
「はあ?二人しかいないけど?」
「あら、ルイさん達もこちらにいらしたのですね」
ノーリア姫は、ルイとガベルの姿を見つけるとほほえんだ。
「もしかして、ラセも?」
ノーリア姫は、そわそわと辺りを見渡す。
「チャナは、連れてきていないのか?」
ルイが表情を硬くして、ノーリア姫に聞いた。
「チャナ嬢もお誘いはしたのですが、外道な戦い方で優勝された方の祝などしたくないともうされたので、屋敷に残してきました」
「だってよ。ラセ。出てきても大丈夫だ」
チャナがいない事を確認出来たラセは、隅から出てきた。
「まあ、このようなところにいらしたのですね。お会いできるとは光栄ですわ」
ラセを見つけるとノーリア姫は飛びついた。
ラセに飛びついたノーリア姫を見てショックのあまり、ゲオルグは、固まった。
「貴様!なぜノーリア姫に抱き着かれている!」
ゲオルグは、指を震わせた。
「ノーリア姫。離れて。ゲオルグも落ち着いて」
ノーリア姫は名残惜しそうに、ラセから離れた。
ラセからノーリア姫が離れたことにより、ゲオルグも平常心を取り戻した。
「それにしても、ゲオルグの所にあなた達がいらっしゃるとは予想外でした」
「まあいろいろあって」
「もしかして、イハ王子を倒した策はラセが?」
「あれぐらいしか、勝つ方法が浮かばなかったから」
「まあ、素晴らしい。さすがわたくしの王子様ですわ」
「お、王子様だと!」
ノーリア姫は、うっとりとした表情を浮かべて、ゲオルグは動揺した。
「まだひっぱるんだ。その王子様設定」
ラセは、あきれ果てた。
「ということは、俺が真に倒さなければいけなかった相手は、イハ王子ではなくラセだったのか!」
「なぜそうなる」
「いて」
ゲオルグの早とちりに頭を叩いて落ち着かせる。
「まるで、漫才を見ているみたいだ」
「そうだな」
ルイとガベルは、のほほんと眺めていた。
「それよりも、ゲオルグ」
ラセは、ゲオルグの裾をひっぱり、隅っこに寄った。
「なんだよ?」
「チャンス到来。告白タイム」
「何をほざいているんだ!」
「人が居て恥ずかしいのならば、席を外すけれども?」
「……自信がない」
「どうして?イハ王子よりも強い事は証明されたはず」
「俺、ノーリア姫を幸せにしてあげる自信がない。
ノーリア姫は、セラ姫が居なくなってから、気丈にふるまってはいたけれど、心ここにあらずで、ずっと落ち込んでいた。俺にセラ姫の替りは出来ないんだ」
「ゲオルグは、ゲオルグ。セラ姫の替りをする必要などどこにもない」
「ラセ」
「誰にも取られたくなのでしょ。だったら取られる前に想いを伝えないと」
「でも」
「ゲオルグが、幼い頃から、ノーリア姫の事好きだったの、知っていた」
「まるで、見て来たかのように言うなよ」
「見て来たよ。いつも三人一緒だったから」
「え?」
「嫌味か!」
館に戻って来た一行は、ゲオルグの手当てを済ませた。
包帯でぐるぐる巻きになったゲオルグは叫んだ。
「でも、これで、イハ王子よりも強い事が証明された。
ゲオルグは、自信を持ってもいいと思う」
「確かに勝ちはしたけど、何かが違う気がする」
ゲオルグは頭を抱えた。
「それで、いつノーリア姫に、告白をしに行くの?」
「こ、告白!」
ゲオルグの顔が、真っ赤に染まった。
「告白しないの?」
ラセは、首を傾げた。
「告白って心の準備が」
「ゲオルグ。お客様がいらしたのだけれども、通してもよろしいかしら?」
「え?ああ」
ゲオルグが、いい加減に返事をすると、扉が開いた。
現れたのは、今まさに話題になっていたその人で、ゲオルグは仰天した。
「ノ、ノーリア姫!どうしてこちらに」
「ゲオルグが武道会で優勝したと聞いてお祝いにやってきましたわ」
ノーリア姫は抱えていた花束をゲオルグに手渡した。
「すばらしい、作戦でしたね」
ジイも一礼してから、部屋へと入る。
「ああ。あの作戦はこいつが……あれいない?」
ゲオルグは先ほどまで居たラセを探した。
「なぜ隅に隠れている?」
ゲオルグは、ラセを見つけると近づいた。
「ねえ。ノーリア姫とジイさん以外に誰か一緒にいる?団子頭の女の子とか?」
「はあ?二人しかいないけど?」
「あら、ルイさん達もこちらにいらしたのですね」
ノーリア姫は、ルイとガベルの姿を見つけるとほほえんだ。
「もしかして、ラセも?」
ノーリア姫は、そわそわと辺りを見渡す。
「チャナは、連れてきていないのか?」
ルイが表情を硬くして、ノーリア姫に聞いた。
「チャナ嬢もお誘いはしたのですが、外道な戦い方で優勝された方の祝などしたくないともうされたので、屋敷に残してきました」
「だってよ。ラセ。出てきても大丈夫だ」
チャナがいない事を確認出来たラセは、隅から出てきた。
「まあ、このようなところにいらしたのですね。お会いできるとは光栄ですわ」
ラセを見つけるとノーリア姫は飛びついた。
ラセに飛びついたノーリア姫を見てショックのあまり、ゲオルグは、固まった。
「貴様!なぜノーリア姫に抱き着かれている!」
ゲオルグは、指を震わせた。
「ノーリア姫。離れて。ゲオルグも落ち着いて」
ノーリア姫は名残惜しそうに、ラセから離れた。
ラセからノーリア姫が離れたことにより、ゲオルグも平常心を取り戻した。
「それにしても、ゲオルグの所にあなた達がいらっしゃるとは予想外でした」
「まあいろいろあって」
「もしかして、イハ王子を倒した策はラセが?」
「あれぐらいしか、勝つ方法が浮かばなかったから」
「まあ、素晴らしい。さすがわたくしの王子様ですわ」
「お、王子様だと!」
ノーリア姫は、うっとりとした表情を浮かべて、ゲオルグは動揺した。
「まだひっぱるんだ。その王子様設定」
ラセは、あきれ果てた。
「ということは、俺が真に倒さなければいけなかった相手は、イハ王子ではなくラセだったのか!」
「なぜそうなる」
「いて」
ゲオルグの早とちりに頭を叩いて落ち着かせる。
「まるで、漫才を見ているみたいだ」
「そうだな」
ルイとガベルは、のほほんと眺めていた。
「それよりも、ゲオルグ」
ラセは、ゲオルグの裾をひっぱり、隅っこに寄った。
「なんだよ?」
「チャンス到来。告白タイム」
「何をほざいているんだ!」
「人が居て恥ずかしいのならば、席を外すけれども?」
「……自信がない」
「どうして?イハ王子よりも強い事は証明されたはず」
「俺、ノーリア姫を幸せにしてあげる自信がない。
ノーリア姫は、セラ姫が居なくなってから、気丈にふるまってはいたけれど、心ここにあらずで、ずっと落ち込んでいた。俺にセラ姫の替りは出来ないんだ」
「ゲオルグは、ゲオルグ。セラ姫の替りをする必要などどこにもない」
「ラセ」
「誰にも取られたくなのでしょ。だったら取られる前に想いを伝えないと」
「でも」
「ゲオルグが、幼い頃から、ノーリア姫の事好きだったの、知っていた」
「まるで、見て来たかのように言うなよ」
「見て来たよ。いつも三人一緒だったから」
「え?」
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています
空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。
『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。
「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」
「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」
そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。
◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)
異世界に行けるようになったんだが自宅に令嬢を持ち帰ってしまった件
シュミ
ファンタジー
高二である天音 旬はある日、女神によって異世界と現実世界を行き来できるようになった。
旬が異世界から現実世界に帰る直前に転びそうな少女を助けた結果、旬の自宅にその少女を持ち帰ってしまった。その少女はリーシャ・ミリセントと名乗り、王子に婚約破棄されたと話し───!?
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
神様のミスで女に転生したようです
結城はる
ファンタジー
34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。
いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。
目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。
美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい
死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。
気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。
ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。
え……。
神様、私女になってるんですけどーーーー!!!
小説家になろうでも掲載しています。
URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」
異世界でネットショッピングをして商いをしました。
ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。
それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。
これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ)
よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m
hotランキング23位(18日11時時点)
本当にありがとうございます
誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。
稀代の大賢者は0歳児から暗躍する〜公爵家のご令息は運命に抵抗する〜
撫羽
ファンタジー
ある邸で秘密の会議が開かれていた。
そこに出席している3歳児、王弟殿下の一人息子。実は前世を覚えていた。しかもやり直しの生だった!?
どうしてちびっ子が秘密の会議に出席するような事になっているのか? 何があったのか?
それは生後半年の頃に遡る。
『ばぶぁッ!』と元気な声で目覚めた赤ん坊。
おかしいぞ。確かに俺は刺されて死んだ筈だ。
なのに、目が覚めたら見覚えのある部屋だった。両親が心配そうに見ている。
しかも若い。え? どうなってんだ?
体を起こすと、嫌でも目に入る自分のポヨンとした赤ちゃん体型。マジかよ!?
神がいるなら、0歳児スタートはやめてほしかった。
何故だか分からないけど、人生をやり直す事になった。実は将来、大賢者に選ばれ魔族討伐に出る筈だ。だが、それは避けないといけない。
何故ならそこで、俺は殺されたからだ。
ならば、大賢者に選ばれなければいいじゃん!と、小さな使い魔と一緒に奮闘する。
でも、それなら魔族の問題はどうするんだ?
それも解決してやろうではないか!
小さな胸を張って、根拠もないのに自信満々だ。
今回は初めての0歳児スタートです。
小さな賢者が自分の家族と、大好きな婚約者を守る為に奮闘します。
今度こそ、殺されずに生き残れるのか!?
とは言うものの、全然ハードな内容ではありません。
今回も癒しをお届けできればと思います。
異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。
桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。
だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。
そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる