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海賊編 第九章 武道会

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「優勝おめでとう」
「嫌味か!」

 館に戻って来た一行は、ゲオルグの手当てを済ませた。
 包帯でぐるぐる巻きになったゲオルグは叫んだ。

「でも、これで、イハ王子よりも強い事が証明された。
 ゲオルグは、自信を持ってもいいと思う」
「確かに勝ちはしたけど、何かが違う気がする」

 ゲオルグは頭を抱えた。

「それで、いつノーリア姫に、告白をしに行くの?」
「こ、告白!」

 ゲオルグの顔が、真っ赤に染まった。

「告白しないの?」

 ラセは、首を傾げた。

「告白って心の準備が」
「ゲオルグ。お客様がいらしたのだけれども、通してもよろしいかしら?」
「え?ああ」

 ゲオルグが、いい加減に返事をすると、扉が開いた。
 現れたのは、今まさに話題になっていたその人で、ゲオルグは仰天した。

「ノ、ノーリア姫!どうしてこちらに」
「ゲオルグが武道会で優勝したと聞いてお祝いにやってきましたわ」

 ノーリア姫は抱えていた花束をゲオルグに手渡した。

「すばらしい、作戦でしたね」

 ジイも一礼してから、部屋へと入る。

「ああ。あの作戦はこいつが……あれいない?」

 ゲオルグは先ほどまで居たラセを探した。

「なぜ隅に隠れている?」

 ゲオルグは、ラセを見つけると近づいた。

「ねえ。ノーリア姫とジイさん以外に誰か一緒にいる?団子頭の女の子とか?」
「はあ?二人しかいないけど?」
「あら、ルイさん達もこちらにいらしたのですね」

 ノーリア姫は、ルイとガベルの姿を見つけるとほほえんだ。

「もしかして、ラセも?」

 ノーリア姫は、そわそわと辺りを見渡す。

「チャナは、連れてきていないのか?」

 ルイが表情を硬くして、ノーリア姫に聞いた。

「チャナ嬢もお誘いはしたのですが、外道な戦い方で優勝された方の祝などしたくないともうされたので、屋敷に残してきました」
「だってよ。ラセ。出てきても大丈夫だ」

 チャナがいない事を確認出来たラセは、隅から出てきた。

「まあ、このようなところにいらしたのですね。お会いできるとは光栄ですわ」

 ラセを見つけるとノーリア姫は飛びついた。
 ラセに飛びついたノーリア姫を見てショックのあまり、ゲオルグは、固まった。

「貴様!なぜノーリア姫に抱き着かれている!」

 ゲオルグは、指を震わせた。

「ノーリア姫。離れて。ゲオルグも落ち着いて」

 ノーリア姫は名残惜しそうに、ラセから離れた。
 ラセからノーリア姫が離れたことにより、ゲオルグも平常心を取り戻した。

「それにしても、ゲオルグの所にあなた達がいらっしゃるとは予想外でした」
「まあいろいろあって」
「もしかして、イハ王子を倒した策はラセが?」
「あれぐらいしか、勝つ方法が浮かばなかったから」
「まあ、素晴らしい。さすがわたくしの王子様ですわ」
「お、王子様だと!」

 ノーリア姫は、うっとりとした表情を浮かべて、ゲオルグは動揺した。

「まだひっぱるんだ。その王子様設定」

 ラセは、あきれ果てた。

「ということは、俺が真に倒さなければいけなかった相手は、イハ王子ではなくラセだったのか!」
「なぜそうなる」
「いて」

 ゲオルグの早とちりに頭を叩いて落ち着かせる。

「まるで、漫才を見ているみたいだ」
「そうだな」

 ルイとガベルは、のほほんと眺めていた。

「それよりも、ゲオルグ」

 ラセは、ゲオルグの裾をひっぱり、隅っこに寄った。

「なんだよ?」
「チャンス到来。告白タイム」
「何をほざいているんだ!」
「人が居て恥ずかしいのならば、席を外すけれども?」
「……自信がない」
「どうして?イハ王子よりも強い事は証明されたはず」
「俺、ノーリア姫を幸せにしてあげる自信がない。
 ノーリア姫は、セラ姫が居なくなってから、気丈にふるまってはいたけれど、心ここにあらずで、ずっと落ち込んでいた。俺にセラ姫の替りは出来ないんだ」
「ゲオルグは、ゲオルグ。セラ姫の替りをする必要などどこにもない」
「ラセ」
「誰にも取られたくなのでしょ。だったら取られる前に想いを伝えないと」
「でも」
「ゲオルグが、幼い頃から、ノーリア姫の事好きだったの、知っていた」
「まるで、見て来たかのように言うなよ」
「見て来たよ。いつも三人一緒だったから」
「え?」
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