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海賊編 第八章 棺
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しおりを挟むルイは、ロンの魔法に感心していた。
落ち着いた後、朝食を取りながら、ラセ達はロンについて話あった。
「とりあえず、ロンが黒い棺に入っていたことは理解したけど、闇の帝国の場所を知っているかは聞き出せていないのだな」
ルイは、ラセに寄り掛かって眠たそうに目を擦るロンに視線を向けた。
「聞いたけれども、話がかみあわないから」
「おい。闇の帝国の場所はどこだ?」
ルイが、今にも寝てしまいそうなロンを揺り動かした。
ロンは虚ろな瞳をぼんやりとルイに向ける。
『ボクの翼は、どこにでも飛んで行ける』
ロンは、ラセの肩に頭を預けると今度こそ寝息を立て始めた。
「……話にならないな」
「とりあえず、再び目覚めるのを待つしかない」
ラセは、気持ちよさそうに寝息を立てるロンを見て微笑んだ。
昨日よりもおだやかな表情を浮かべるラセを見て、ルイは安堵していた。
「ずっと、傍にいるから」
ルイもラセの肩に寄り掛かって目を閉じた。
「……重い」
両方の肩に寄り掛かり心地よさそうに目を閉じる二人を見て、ラセも目を閉じた。
ひさしぶりに、安らかな時が流れた。
「俺は、ラセの傍にいてやりたいんだ」
ラセがマムに連れられて去った後、ルイは夕暮れ時の街並みでトタプに告げた。
ノーリア姫達は、先に馬車で屋敷へと帰って行った。
歩いて帰ることになったルイ。トタプ。アンナ。デチャニー船長は、今後の事に着いて話をしていた。
「確かにラセちゃんの傍にはいてあげたいけれど、海賊船の料理長である僕が抜けるとクレイに怪しまれるだろうし」
「このあと海賊船は、ティーラ姫のお供として、フォーチューン国へと向かうことが決まっている。わしも今のクレイとチャナ嬢に支配された海賊船を放置して離れるわけにはいかん。それに、わしにも船長としてのプライドがある」
「……わたしもトタプの傍を離れるのは、嫌だわ。
ルイがラセの傍に居てやりたいと想う気持ちと同じように」
それぞれトタプ、アンナ、デチャニー船長には、海賊船に留まらなければいけない理由があった。
ラセの傍に居たいのは、ルイの我儘だと自覚してはいる。
それでも、今ラセの傍に居られないのは、自分を殺しているようで辛かった。
「俺だけでも、ラセの傍に居られるような口実を作れないか?」
ルイは三人に同行してもらうのを諦めて、自分だけでもラセの傍に居られる提案がないかと皆に聞いた。
「ルイ。あんた海賊船での生活しか知らないくせに、外の世界でやって行く気?」
アンナは心配そうに、ルイを見た。
「もう、決めたことだから」
ルイは決意に満ちた瞳を母親であるアンナに向けた。
「ルイももう十七歳だ。
いつまでも、親にすがって生きる年頃でもないだろう」
トタプは逞しい表情を浮かべるようになったルイを感慨深げに見つめた。
「ルイも旅立つときが来たか。わかった。
クレイにはルイは祖父であるガベルの元へしばらく滞在することになったと伝えて置く。
今日帰りが遅くなった理由もひさしぶりの旧友との再会に話が尽きなかったと言い訳をしようと考えて居たところだったしな」
「デチャニー船長。ありがとう!」
ルイは、海賊船から出て行くことを許可してくれたデチャニー船長に礼を述べた。
「わしにとっても孫のような存在のルイが居なくなるのは寂しいが、ガベルが共にいるのならば安心だ」
「ルイ元気でやりなさい」
アンナは旅立つ息子を抱きしめた。
「ルイ。ラセちゃんを守ってあげるんだよ」
父親であるトタプと視線を交わして、
「ああ。かならず守るよ!」
力強くうなずいた。
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