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海賊編 第八章 棺

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 ノーリア姫は、書状を王に届ける為、城へと足を運んだ。

「せっかく来ていただいたのに、夫が仕事で手を離せなくてごめんなさいね」
「いえ、王妃自ら謝罪をしていただけるなんて、申し訳ないですわ」

 ノーリア姫は、王妃ロティーラに誘われて、お茶に呼ばれていた。

「書状は確かに夫に渡して置きます」

 ロティーラ王妃は、書状を近くに居た執事に頼み、王へと届けるようにと伝えた。

「あの、ではわたくしはこれで」

 用事の済んだノーリア姫は退散しようとした。

「お待ちになって。ノーリア姫と前の様にお話をしたいの?
 よろしいかしら?」
「お話ですか?どのような話で?」

 席を立ちあがりかけたノーリア姫は座り直した。

「この間、ノーリア姫の母君、エコシェーザニ―とお茶を楽しんだのだけれども、その時に、ノーリア姫の所へ客人が来たと窺ったの。
 その客人の話をわたしにくわしく教えてほしいの」
「客人ですか?李祝の領主チャナ様でしたら、まだいらっしゃいますが?お会いになりますか?」

 ロティーラ王妃は首を横に振った。

「いいえ。わたしが聞きたいのは、ラセの事よ」
「ラセ。ではやはりラセは」
「ええ。公にはできないけれど、幼馴染だったノーリア姫には、お見通しのようね。
 わたしは、あの子に武術を叩き込むことしか出来なかった」
「……ラセは海に落ちたと聞きましたわ。
 ラセが海に落ちた位で死ぬとは思えませんが……」
「ラセは生きているわ。サダショーンスンが教えてくれたの」

 ロティーラ王妃は、ドレスには似合わない首飾りに触れた。
 魔法陣の描かれたペンダントは、懐中時計ほどの大きさだ。
 ペンダントの中には、何でも願いを叶えてくれる魔神サダショーンスンが宿っている。
 ロティーラ王妃は、どんな時も肌身離さずに身に着けていた。

「よかった。ラセは生きているのですね」

 ノーリア姫は安堵の笑みを浮かべた。

「ええ。サダショーンスンの話によると、この都市にラセがもうすぐ来るらしいの。
 お忍びで会いたいのだけれども、何かいい案はないかしら?」
「いい案ですか?」
「それならば」

 謎の男の声がした後、闇の霧が発生した。

「誰!」

 ロティーラ王妃は、テーブルの裏に隠していた短槍を取り出した。
 ノーリア姫は恐怖におびえている。

「いい案があるのだけれども」
「あなたは!」

 ロティーラ王妃は、懐かしい面影を残す青年に目を奪われた。




 マムの情報屋に世話になった次の日。

「棺のありかわかったよ」

 情報屋に戻って来たマムは稽古中のラセとガベルに告げた。

「場所はどこですか?」
「それがやっかいな所でね。城の地下にある、王族の墓だよ」
「はぁ?なんでそんなところに?」
「さあ?でも気負付けな。王族関係者に闇の帝国の者が取り入っているのかもしれないからね」
「わかった。注意して忍び込む」
「忍び込むのはいいけれど、今回の獲物は、棺で相当の重さがあるよ。
 大きさもあるし、簡単に運び出せるものではないからね。
 何か策を練らないと」
「そっか。どうしよう?」
「なら武器に紛れて忍び込むか?それなら荷車を持って入っても怪しまれないからな」
「ガベルいいのかい?」
「それが一番手っ取り早い」
「わかった。ならあたいが道案内するよ。くれぐれもばれるようなヘマするんじゃないよ」
「わかった」

 ラセ達は城に忍び込むための準備を始めた。



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