79 / 115
海賊編 第八章 棺
79
しおりを挟む
ノーリア姫は、書状を王に届ける為、城へと足を運んだ。
「せっかく来ていただいたのに、夫が仕事で手を離せなくてごめんなさいね」
「いえ、王妃自ら謝罪をしていただけるなんて、申し訳ないですわ」
ノーリア姫は、王妃ロティーラに誘われて、お茶に呼ばれていた。
「書状は確かに夫に渡して置きます」
ロティーラ王妃は、書状を近くに居た執事に頼み、王へと届けるようにと伝えた。
「あの、ではわたくしはこれで」
用事の済んだノーリア姫は退散しようとした。
「お待ちになって。ノーリア姫と前の様にお話をしたいの?
よろしいかしら?」
「お話ですか?どのような話で?」
席を立ちあがりかけたノーリア姫は座り直した。
「この間、ノーリア姫の母君、エコシェーザニ―とお茶を楽しんだのだけれども、その時に、ノーリア姫の所へ客人が来たと窺ったの。
その客人の話をわたしにくわしく教えてほしいの」
「客人ですか?李祝の領主チャナ様でしたら、まだいらっしゃいますが?お会いになりますか?」
ロティーラ王妃は首を横に振った。
「いいえ。わたしが聞きたいのは、ラセの事よ」
「ラセ。ではやはりラセは」
「ええ。公にはできないけれど、幼馴染だったノーリア姫には、お見通しのようね。
わたしは、あの子に武術を叩き込むことしか出来なかった」
「……ラセは海に落ちたと聞きましたわ。
ラセが海に落ちた位で死ぬとは思えませんが……」
「ラセは生きているわ。サダショーンスンが教えてくれたの」
ロティーラ王妃は、ドレスには似合わない首飾りに触れた。
魔法陣の描かれたペンダントは、懐中時計ほどの大きさだ。
ペンダントの中には、何でも願いを叶えてくれる魔神サダショーンスンが宿っている。
ロティーラ王妃は、どんな時も肌身離さずに身に着けていた。
「よかった。ラセは生きているのですね」
ノーリア姫は安堵の笑みを浮かべた。
「ええ。サダショーンスンの話によると、この都市にラセがもうすぐ来るらしいの。
お忍びで会いたいのだけれども、何かいい案はないかしら?」
「いい案ですか?」
「それならば」
謎の男の声がした後、闇の霧が発生した。
「誰!」
ロティーラ王妃は、テーブルの裏に隠していた短槍を取り出した。
ノーリア姫は恐怖におびえている。
「いい案があるのだけれども」
「あなたは!」
ロティーラ王妃は、懐かしい面影を残す青年に目を奪われた。
マムの情報屋に世話になった次の日。
「棺のありかわかったよ」
情報屋に戻って来たマムは稽古中のラセとガベルに告げた。
「場所はどこですか?」
「それがやっかいな所でね。城の地下にある、王族の墓だよ」
「はぁ?なんでそんなところに?」
「さあ?でも気負付けな。王族関係者に闇の帝国の者が取り入っているのかもしれないからね」
「わかった。注意して忍び込む」
「忍び込むのはいいけれど、今回の獲物は、棺で相当の重さがあるよ。
大きさもあるし、簡単に運び出せるものではないからね。
何か策を練らないと」
「そっか。どうしよう?」
「なら武器に紛れて忍び込むか?それなら荷車を持って入っても怪しまれないからな」
「ガベルいいのかい?」
「それが一番手っ取り早い」
「わかった。ならあたいが道案内するよ。くれぐれもばれるようなヘマするんじゃないよ」
「わかった」
ラセ達は城に忍び込むための準備を始めた。
「せっかく来ていただいたのに、夫が仕事で手を離せなくてごめんなさいね」
「いえ、王妃自ら謝罪をしていただけるなんて、申し訳ないですわ」
ノーリア姫は、王妃ロティーラに誘われて、お茶に呼ばれていた。
「書状は確かに夫に渡して置きます」
ロティーラ王妃は、書状を近くに居た執事に頼み、王へと届けるようにと伝えた。
「あの、ではわたくしはこれで」
用事の済んだノーリア姫は退散しようとした。
「お待ちになって。ノーリア姫と前の様にお話をしたいの?
よろしいかしら?」
「お話ですか?どのような話で?」
席を立ちあがりかけたノーリア姫は座り直した。
「この間、ノーリア姫の母君、エコシェーザニ―とお茶を楽しんだのだけれども、その時に、ノーリア姫の所へ客人が来たと窺ったの。
その客人の話をわたしにくわしく教えてほしいの」
「客人ですか?李祝の領主チャナ様でしたら、まだいらっしゃいますが?お会いになりますか?」
ロティーラ王妃は首を横に振った。
「いいえ。わたしが聞きたいのは、ラセの事よ」
「ラセ。ではやはりラセは」
「ええ。公にはできないけれど、幼馴染だったノーリア姫には、お見通しのようね。
わたしは、あの子に武術を叩き込むことしか出来なかった」
「……ラセは海に落ちたと聞きましたわ。
ラセが海に落ちた位で死ぬとは思えませんが……」
「ラセは生きているわ。サダショーンスンが教えてくれたの」
ロティーラ王妃は、ドレスには似合わない首飾りに触れた。
魔法陣の描かれたペンダントは、懐中時計ほどの大きさだ。
ペンダントの中には、何でも願いを叶えてくれる魔神サダショーンスンが宿っている。
ロティーラ王妃は、どんな時も肌身離さずに身に着けていた。
「よかった。ラセは生きているのですね」
ノーリア姫は安堵の笑みを浮かべた。
「ええ。サダショーンスンの話によると、この都市にラセがもうすぐ来るらしいの。
お忍びで会いたいのだけれども、何かいい案はないかしら?」
「いい案ですか?」
「それならば」
謎の男の声がした後、闇の霧が発生した。
「誰!」
ロティーラ王妃は、テーブルの裏に隠していた短槍を取り出した。
ノーリア姫は恐怖におびえている。
「いい案があるのだけれども」
「あなたは!」
ロティーラ王妃は、懐かしい面影を残す青年に目を奪われた。
マムの情報屋に世話になった次の日。
「棺のありかわかったよ」
情報屋に戻って来たマムは稽古中のラセとガベルに告げた。
「場所はどこですか?」
「それがやっかいな所でね。城の地下にある、王族の墓だよ」
「はぁ?なんでそんなところに?」
「さあ?でも気負付けな。王族関係者に闇の帝国の者が取り入っているのかもしれないからね」
「わかった。注意して忍び込む」
「忍び込むのはいいけれど、今回の獲物は、棺で相当の重さがあるよ。
大きさもあるし、簡単に運び出せるものではないからね。
何か策を練らないと」
「そっか。どうしよう?」
「なら武器に紛れて忍び込むか?それなら荷車を持って入っても怪しまれないからな」
「ガベルいいのかい?」
「それが一番手っ取り早い」
「わかった。ならあたいが道案内するよ。くれぐれもばれるようなヘマするんじゃないよ」
「わかった」
ラセ達は城に忍び込むための準備を始めた。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど
富士とまと
ファンタジー
一緒に異世界に召喚された従妹は魔力が高く、私は魔力がゼロだそうだ。
「私は聖女になるかも、姉さんバイバイ」とイケメンを侍らせた従妹に手を振られ、私は王都を追放された。
魔力はないけれど、霊感は日本にいたころから強かったんだよね。そのおかげで「英霊」だとか「精霊」だとかに盲愛されています。
――いや、あの、精霊の指輪とかいらないんですけど、は、外れない?!
――ってか、イケメン幽霊が号泣って、私が悪いの?
私を追放した王都の人たちが困っている?従妹が大変な目にあってる?魔力ゼロを低級民と馬鹿にしてきた人たちが助けを求めているようですが……。
今更、魔力ゼロの人間にしか作れない特級魔力回復薬が欲しいとか言われてもね、こちらはあなたたちから何も欲しいわけじゃないのですけど。
重複投稿ですが、改稿してます
異世界でお取り寄せ生活
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。
突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。
貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。
意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。
貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!?
そんな感じの話です。
のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。
※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。
【完結】魔王様、溺愛しすぎです!
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
「パパと結婚する!」
8万年近い長きにわたり、最強の名を冠する魔王。勇者を退け続ける彼の居城である『魔王城』の城門に、人族と思われる赤子が捨てられた。その子を拾った魔王は自ら育てると言い出し!? しかも溺愛しすぎて、周囲が大混乱!
拾われた子は幼女となり、やがて育て親を喜ばせる最強の一言を放った。魔王は素直にその言葉を受け止め、嫁にすると宣言する。
シリアスなようでコメディな軽いドタバタ喜劇(?)です。
【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう
【表紙イラスト】しょうが様(https://www.pixiv.net/users/291264)
挿絵★あり
【完結】2021/12/02
※2022/08/16 第3回HJ小説大賞前期「小説家になろう」部門 一次審査通過
※2021/12/16 第1回 一二三書房WEB小説大賞、一次審査通過
※2021/12/03 「小説家になろう」ハイファンタジー日間94位
※2021/08/16、「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過作品
※2020年8月「エブリスタ」ファンタジーカテゴリー1位(8/20〜24)
※2019年11月「ツギクル」第4回ツギクル大賞、最終選考作品
※2019年10月「ノベルアップ+」第1回小説大賞、一次選考通過作品
※2019年9月「マグネット」ヤンデレ特集掲載作品
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜
西園寺わかばEX
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。
4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。
そんな彼はある日、追放される。
「よっし。やっと追放だ。」
自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。
- この話はフィクションです。
- カクヨム様でも連載しています。
パーティを抜けた魔法剣士は憧れの冒険者に出会い、最強の冒険者へと至る
一ノ瀬一
ファンタジー
幼馴染とパーティを組んでいた魔法剣士コルネは領主の息子が入ってきたいざこざでパーティを抜ける。たまたま目に入ったチラシは憧れの冒険者ロンドが開く道場のもので、道場へ向かったコルネはそこで才能を開花させていく。
※毎日更新
小説家になろう、カクヨムでも同時連載中!
https://ncode.syosetu.com/n6654gw/
https://kakuyomu.jp/works/16816452219601856526
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる