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海賊編 第八章 棺
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「で、ここまでは、誰もが知っている表情報。
ここからは、とある筋、いやノーリア姫の執事ジイから仕入れた話さ」
「おいおい、実名出していいのかよ」
「この面子で隠す必要はないからね。
ジイの話だと、書状はノーリア姫を通して、国王へと持って行かれたらしい。
まあ、偉い人に頼むのは、不自然なことじゃないからね。
で、ノーリア姫が心を痛めているのは、海賊船にいるはずのラセ、あんたが居なかったことだ。
極秘で調査依頼を受けたあたいは、色々と調べ回ったよ。
役人であるクレイと李祝の領主チャナの恨みを買ったんだって?
あんたも運がないね」
「……チャナの件は、私にも責任があるから。
でも、クレイが怒っている理由が私にはわからない」
「クレイのやつは、ただの八つ当たりさ。ラセはなんにも悪くないよ」
「でも」
「それよりも、これからどうするつもりだい?
ノーリア姫はあんたに会いたがっているよ」
「……今は会えない。それよりも、棺を取り戻さないと」
「棺?ああ、さきほど研究機関で盗まてたって噂されていた」
「そう。その棺。私にはどうしても必要なものだから」
「わかった。あたいも棺探しを手伝うよ。
王都の情報なら誰よりも詳しいつもりだからね」
「ありがとう。マム」
「とりあえず、情報集めは、まかせな。
その間、ガベルにでも鍛えてもらえばいい。
ガベルは元盗賊だけあって腕の立つ男さ」
「おいおい。ただ働きさせる気か?」
「なんだい?金を取るのかい?けち臭い男だね。
ラセは、見込みのある子だよ。
あんた負けちまうかもしれないね」
マムはにやにやと笑いながら、ガベルを挑発する。
「誰が負けるかよ。
でも俺の技は独学だからな。
お前に付いてこられるか」
「……大丈夫。私の技は、あなたが開発したものだから」
「?」
ガベルは、ラセの言葉の意味がわからずに、首をかしげた。
「私、ガベルさんを親分と呼んでいたロティーラの弟子なの」
ラセが、ロティーラの弟子であることを告げると、ガベルは驚愕した後、口元をにやけさせた。
「ロティーラの弟子?なるほどな。確かに見込みがありそうだ。
わかった。指導してやるよ。マム。中庭借りるからな」
「あいよ。ラセしっかり鍛えてもらいな」
「はい!」
それから、マムの情報が来るまでの間、ラセは、ガベルより武術の指導を受けた。
「ていや!」
「踏み込みが甘い!しっかりかまえろ!」
「はい!」
ガベルの指導中。ラセはあえて精霊達の力を借りなかった。
ありのままの今の実力をガベルには見てほしかったからだ。
身体を動かして、汗をかいていると、嫌な事を忘れられた。
だからだろうか?
休憩時間になると、海賊船の事を思い出して不安になる。
今頃、海賊船の人達は何をしているのだろうか?
ラセは、この都市のどこかにいる海賊団の事を考えた。
ラセが海に突き落とされてから数日後。
海賊船は無事にエレメンタル大陸の水の国の都市へとやってきた。
ラセの件で不満を持つルイ達とクレイ達の間には、亀裂が入り、気まずい状態が続いていた。
船長のデチャニーは、この状態を好ましくは思ってはいなかったが、どう対処しようか頭を悩ませていた。
クレイとチャナは、依頼主だったノーリア姫のジイの元へと訪れた。
ジイとチャナはひさしぶりの再会を喜んだ。
李祝が一度は闇の帝国に堕ちたが、フォーチューン国が海の加護を得て、取り戻せる日が近いと知ると、安堵した。
ノーリア姫は、ラセが居ないことが不満の様子だった。
チャナは下品な男達がいる海賊船に嫌気がさしていたので、ノーリア姫に取り入り、ノーリア姫の客人としてしばらく滞在する事になった。
フォーチューン国からの書状は、ノーリア姫を通して王に渡されることになった。
ここからは、とある筋、いやノーリア姫の執事ジイから仕入れた話さ」
「おいおい、実名出していいのかよ」
「この面子で隠す必要はないからね。
ジイの話だと、書状はノーリア姫を通して、国王へと持って行かれたらしい。
まあ、偉い人に頼むのは、不自然なことじゃないからね。
で、ノーリア姫が心を痛めているのは、海賊船にいるはずのラセ、あんたが居なかったことだ。
極秘で調査依頼を受けたあたいは、色々と調べ回ったよ。
役人であるクレイと李祝の領主チャナの恨みを買ったんだって?
あんたも運がないね」
「……チャナの件は、私にも責任があるから。
でも、クレイが怒っている理由が私にはわからない」
「クレイのやつは、ただの八つ当たりさ。ラセはなんにも悪くないよ」
「でも」
「それよりも、これからどうするつもりだい?
ノーリア姫はあんたに会いたがっているよ」
「……今は会えない。それよりも、棺を取り戻さないと」
「棺?ああ、さきほど研究機関で盗まてたって噂されていた」
「そう。その棺。私にはどうしても必要なものだから」
「わかった。あたいも棺探しを手伝うよ。
王都の情報なら誰よりも詳しいつもりだからね」
「ありがとう。マム」
「とりあえず、情報集めは、まかせな。
その間、ガベルにでも鍛えてもらえばいい。
ガベルは元盗賊だけあって腕の立つ男さ」
「おいおい。ただ働きさせる気か?」
「なんだい?金を取るのかい?けち臭い男だね。
ラセは、見込みのある子だよ。
あんた負けちまうかもしれないね」
マムはにやにやと笑いながら、ガベルを挑発する。
「誰が負けるかよ。
でも俺の技は独学だからな。
お前に付いてこられるか」
「……大丈夫。私の技は、あなたが開発したものだから」
「?」
ガベルは、ラセの言葉の意味がわからずに、首をかしげた。
「私、ガベルさんを親分と呼んでいたロティーラの弟子なの」
ラセが、ロティーラの弟子であることを告げると、ガベルは驚愕した後、口元をにやけさせた。
「ロティーラの弟子?なるほどな。確かに見込みがありそうだ。
わかった。指導してやるよ。マム。中庭借りるからな」
「あいよ。ラセしっかり鍛えてもらいな」
「はい!」
それから、マムの情報が来るまでの間、ラセは、ガベルより武術の指導を受けた。
「ていや!」
「踏み込みが甘い!しっかりかまえろ!」
「はい!」
ガベルの指導中。ラセはあえて精霊達の力を借りなかった。
ありのままの今の実力をガベルには見てほしかったからだ。
身体を動かして、汗をかいていると、嫌な事を忘れられた。
だからだろうか?
休憩時間になると、海賊船の事を思い出して不安になる。
今頃、海賊船の人達は何をしているのだろうか?
ラセは、この都市のどこかにいる海賊団の事を考えた。
ラセが海に突き落とされてから数日後。
海賊船は無事にエレメンタル大陸の水の国の都市へとやってきた。
ラセの件で不満を持つルイ達とクレイ達の間には、亀裂が入り、気まずい状態が続いていた。
船長のデチャニーは、この状態を好ましくは思ってはいなかったが、どう対処しようか頭を悩ませていた。
クレイとチャナは、依頼主だったノーリア姫のジイの元へと訪れた。
ジイとチャナはひさしぶりの再会を喜んだ。
李祝が一度は闇の帝国に堕ちたが、フォーチューン国が海の加護を得て、取り戻せる日が近いと知ると、安堵した。
ノーリア姫は、ラセが居ないことが不満の様子だった。
チャナは下品な男達がいる海賊船に嫌気がさしていたので、ノーリア姫に取り入り、ノーリア姫の客人としてしばらく滞在する事になった。
フォーチューン国からの書状は、ノーリア姫を通して王に渡されることになった。
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