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海賊編 第六章 フォーチューン国本島
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フォーチューン国本島へと海賊船は、たどり着いた。
李祝が闇の霧に奪われたことと、住民の移住願いの為、クレイ達は役場を訪れることにした。
ラセは、本島に上陸する気はなかったのだが、チャナについてきてほしいと言われて断れなかった。
「李祝は、闇の霧に奪われ、移住を望むと」
「そうである」
役人の言葉に、チャナは同意を示した。
「そうか。ではこちらに移住する人間の情報を記入してくれ。
それから、正式な住まいが振り分けられるまでは、使用していないホールを利用してくれ。防寒用に毛布も用意されている。食事は役場にある食堂を利用してくれ。この券を渡せばただで食事をもらえる」
役人の男は、食券の束を数個チャナに放り投げた。
「それから、文化の違いは多々あると思うが、本島に合わせるように。
歴史書を一冊支給して置く。以上だ。何か質問は?」
「李祝を闇の霧から助ける為の援軍は出せないであるか?」
「……残念だが、本島には戦力がない。
正直移住民を養うだけでもきついのだ」
役人は、話はこれで終わりだと切り上げるかのように席をたった。
「待ってほしいである。精霊。精霊を扱える者がここにいるである!
その者を本島に差し出すである。それならば、李祝を救ってくれるであろう?」
差し出すと指を指されたラセは、チャナの突然の提案に困惑した。
「おい。ラセは物じゃねーんだ。ほいほい誰かに渡せるかよ!」
付いてきたルイが反論した。
役人の男性は、じっとラセを見つめた後、嘆息した。
「水の精霊が見えると嘘を付く者は、本島には山の数ほどいる。
その様な嘘に騙されているほど、我々は暇ではない」
「ウェイルが言っていたことって本当だったんだ」
思わずラセは、感心してつぶやいていた。
今まで厄介事だとしか思っていなかった役人が驚いた様にラセを見た。
「貴様、ウェイル様にお会いしたことがあるのか?」
「えっ、えっと」
役人の迫力にラセの方が驚いてしまう。
「ウェイルって闇の霧の者だよな。確かラセの婚」
「わー。わー。わー!」
ラセは慌てて、ルイの口を塞いだ。
すっかり忘れていた。ウェイルはこの国にとって重要人物だったのだ。
婚約者だと知られれば、間違いなくラセの正体がばれる。
少なくとも、目の前に立つ堅苦しい容姿の深海色の髪をした役人は、知っているだろう。
ラセは曖昧にごまかし笑いを浮かべた。
「闇の霧を追っている時に、出会ったのです。特に深い関係ではありません」
ひっしにごまかすラセを、訝しげにクレイは見つめた。
ルイがラセの腕を叩いている。
そこでようやくルイの口を塞いでいたことを思いだしたラセは手を離した。
「うはー。息苦しかった。どうしたんだよ。いきなり」
「えっと、ごめんなさい」
ラセが謝るとルイはこれ以上追及してはこなかった。
空気が読めていないようで、聞いてほしくないことは聞かないルイの性格が、ラセには居心地がよかった。
「ウェイル様は、お元気でしたか?」
役人の男性の目が和らぐ。
少なくとも、ウェイルに悪意を持っているわけではなさそうだ。
「はい。元気そうでした。闇の霧には侵されていましたけど」
「そうか。よかった。ずっと安否を確認したいと思っていた」
役人の男性は、安堵の表情を浮かべた。
「私は、ホークと言う。貴方の名前は?」
ホークは、名刺をラセに手渡した。
「あの、ラセです」
ラセは仕方がなくホークに名を名乗った。
「そうか。ラセか。覚えておこう。
また今度ウェイル様のお話が聞きたい」
ホークは、今度こそ席を立つと、事務処理へと戻って行った。
李祝が闇の霧に奪われたことと、住民の移住願いの為、クレイ達は役場を訪れることにした。
ラセは、本島に上陸する気はなかったのだが、チャナについてきてほしいと言われて断れなかった。
「李祝は、闇の霧に奪われ、移住を望むと」
「そうである」
役人の言葉に、チャナは同意を示した。
「そうか。ではこちらに移住する人間の情報を記入してくれ。
それから、正式な住まいが振り分けられるまでは、使用していないホールを利用してくれ。防寒用に毛布も用意されている。食事は役場にある食堂を利用してくれ。この券を渡せばただで食事をもらえる」
役人の男は、食券の束を数個チャナに放り投げた。
「それから、文化の違いは多々あると思うが、本島に合わせるように。
歴史書を一冊支給して置く。以上だ。何か質問は?」
「李祝を闇の霧から助ける為の援軍は出せないであるか?」
「……残念だが、本島には戦力がない。
正直移住民を養うだけでもきついのだ」
役人は、話はこれで終わりだと切り上げるかのように席をたった。
「待ってほしいである。精霊。精霊を扱える者がここにいるである!
その者を本島に差し出すである。それならば、李祝を救ってくれるであろう?」
差し出すと指を指されたラセは、チャナの突然の提案に困惑した。
「おい。ラセは物じゃねーんだ。ほいほい誰かに渡せるかよ!」
付いてきたルイが反論した。
役人の男性は、じっとラセを見つめた後、嘆息した。
「水の精霊が見えると嘘を付く者は、本島には山の数ほどいる。
その様な嘘に騙されているほど、我々は暇ではない」
「ウェイルが言っていたことって本当だったんだ」
思わずラセは、感心してつぶやいていた。
今まで厄介事だとしか思っていなかった役人が驚いた様にラセを見た。
「貴様、ウェイル様にお会いしたことがあるのか?」
「えっ、えっと」
役人の迫力にラセの方が驚いてしまう。
「ウェイルって闇の霧の者だよな。確かラセの婚」
「わー。わー。わー!」
ラセは慌てて、ルイの口を塞いだ。
すっかり忘れていた。ウェイルはこの国にとって重要人物だったのだ。
婚約者だと知られれば、間違いなくラセの正体がばれる。
少なくとも、目の前に立つ堅苦しい容姿の深海色の髪をした役人は、知っているだろう。
ラセは曖昧にごまかし笑いを浮かべた。
「闇の霧を追っている時に、出会ったのです。特に深い関係ではありません」
ひっしにごまかすラセを、訝しげにクレイは見つめた。
ルイがラセの腕を叩いている。
そこでようやくルイの口を塞いでいたことを思いだしたラセは手を離した。
「うはー。息苦しかった。どうしたんだよ。いきなり」
「えっと、ごめんなさい」
ラセが謝るとルイはこれ以上追及してはこなかった。
空気が読めていないようで、聞いてほしくないことは聞かないルイの性格が、ラセには居心地がよかった。
「ウェイル様は、お元気でしたか?」
役人の男性の目が和らぐ。
少なくとも、ウェイルに悪意を持っているわけではなさそうだ。
「はい。元気そうでした。闇の霧には侵されていましたけど」
「そうか。よかった。ずっと安否を確認したいと思っていた」
役人の男性は、安堵の表情を浮かべた。
「私は、ホークと言う。貴方の名前は?」
ホークは、名刺をラセに手渡した。
「あの、ラセです」
ラセは仕方がなくホークに名を名乗った。
「そうか。ラセか。覚えておこう。
また今度ウェイル様のお話が聞きたい」
ホークは、今度こそ席を立つと、事務処理へと戻って行った。
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