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海賊編 第四章 凪
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誰が信じるだろうか?
ラセにしか感じられない存在を。
ルイには認識出来ない存在を。
きっと本当の事を話しても、嘘吐きと呼ばれる。
ルイには嘘吐きと呼ばれたくなかった。
「ごめんなさい」
ラセは、ルイから逃げるように駈け出した。
セントミアも、ラセの後を追って走る。
その後ろ姿を見ながら、なぜ謝ってくるのかわからないラセにルイは不思議そうに首を傾げた。
その後の船旅は順調だった。
「もうすぐ、フォーチューン国の海域に入る。
本島を通り過ぎてさらに南東に行った所が、李祝だ」
クレイの言葉を示すように、地平線の向こう側に小さな島々が見え始めた。
「李祝に行く前に、本島に寄り食料の調
達を行う」
凪の影響で予定よりも食料が不足している為、誰も反対しなかった。
あの地平線の向こうに、かつてたどり着くことが出来なかったフォーチューン国がある。
―君は、嘘吐きではないよー
精霊が見えることに対して、嘘吐きと呼ばなかったウェイルの故郷。
(そういえば)
ラセは、ウェイルから教わった文化の違いを思い出した。
―フォーチューン国では、水の精霊が見える者は、特別に敬われるんだよ。
だから、皆、水の精霊が見えるって嘘をつくんだ-
―じゃあ。私と逆ね―
―そうだね。でも君が嘘吐きでは無いこ
とを、僕は知っているから―
ウェイルは、池で休む水の精霊を見つめた。
ラセもウェイルと同じ水の精霊を見る。
ああ。やっと、同じ世界を見ることが出来る人間に出会えたのだと。
子供ながらに感動した。
その後、風の精霊がウェイルには見えないことに気付き、すこし寂しい気持ちになったのだが。
「うわ~」
ラセは、塀から身を乗り出し、感嘆の声を上げた。
海の色合いが、エレメンタル大陸側と、フォーチューン国側で違って見えるのだ。
エレメンタル大陸側は、スカイブルーに対して、フォーチューン側は、マリンブルーだ。
「これは、すごいな。噂以上の絶景だ」
海に落ちそうなほど、覗き込むラセの隣にクレイが立った。
「クレイは、この海域の事、知っていたの?」
「ああ。実物を見たのは初めてだが、役人試験の問題になっていたな」
「役人試験?なぜ?」
「王国を支える者は、他国にも情報通でなければいけないからな。
まあ、エレメンタル大陸の一般市民は、遠すぎてここまでは、めったに来ないから、知らなくても当然だけどな」
「そうなんだ」
「じゃあ。ここで、問題だ。
なぜ、海の色合いが異なっていると思う?」
クレイの問題に対して、答のわからなかったラセは、考えるそぶりをしながら、水の精霊を見た。
水の精霊は頷くと、答えをラセの耳に吹き込む。
目でお礼を告げた後、ラセはクレイに向き合った。
「異なる海流がぶつかり合う場所だから」
ラセの回答に対して、クレイは目を丸くした。
まさか、正解するとは思わなかったからだ。
「正解。よく見破りました。
では、次の問題。この現象を利用して、エレメンタル大陸とフォーチューン国は、取り決めをしました。その取り決めとはなんでしょうか?」
クレイは、今度こそはわからないだろうと、不敵な笑みを浮かべた。
水の精霊と風の精霊に目で訴えるが、両方とも首を振られてしまった。
精霊達は基本人間の制約には、しばられない。
唯一縛られるのは、エレメンタル大陸の五つの王国の加護、属性精霊の王族命令と、魔法のみだ。
よって、自然現象はわかっても、肝心のないことは、気にしない。
つまり、どこかで聞いたことはあったとしても、知識として覚えていないのだ。
ラセは、精霊に頼るのを諦めて、自分で考えた。
だが、いくら考えても答えは出なかった。
ラセにしか感じられない存在を。
ルイには認識出来ない存在を。
きっと本当の事を話しても、嘘吐きと呼ばれる。
ルイには嘘吐きと呼ばれたくなかった。
「ごめんなさい」
ラセは、ルイから逃げるように駈け出した。
セントミアも、ラセの後を追って走る。
その後ろ姿を見ながら、なぜ謝ってくるのかわからないラセにルイは不思議そうに首を傾げた。
その後の船旅は順調だった。
「もうすぐ、フォーチューン国の海域に入る。
本島を通り過ぎてさらに南東に行った所が、李祝だ」
クレイの言葉を示すように、地平線の向こう側に小さな島々が見え始めた。
「李祝に行く前に、本島に寄り食料の調
達を行う」
凪の影響で予定よりも食料が不足している為、誰も反対しなかった。
あの地平線の向こうに、かつてたどり着くことが出来なかったフォーチューン国がある。
―君は、嘘吐きではないよー
精霊が見えることに対して、嘘吐きと呼ばなかったウェイルの故郷。
(そういえば)
ラセは、ウェイルから教わった文化の違いを思い出した。
―フォーチューン国では、水の精霊が見える者は、特別に敬われるんだよ。
だから、皆、水の精霊が見えるって嘘をつくんだ-
―じゃあ。私と逆ね―
―そうだね。でも君が嘘吐きでは無いこ
とを、僕は知っているから―
ウェイルは、池で休む水の精霊を見つめた。
ラセもウェイルと同じ水の精霊を見る。
ああ。やっと、同じ世界を見ることが出来る人間に出会えたのだと。
子供ながらに感動した。
その後、風の精霊がウェイルには見えないことに気付き、すこし寂しい気持ちになったのだが。
「うわ~」
ラセは、塀から身を乗り出し、感嘆の声を上げた。
海の色合いが、エレメンタル大陸側と、フォーチューン国側で違って見えるのだ。
エレメンタル大陸側は、スカイブルーに対して、フォーチューン側は、マリンブルーだ。
「これは、すごいな。噂以上の絶景だ」
海に落ちそうなほど、覗き込むラセの隣にクレイが立った。
「クレイは、この海域の事、知っていたの?」
「ああ。実物を見たのは初めてだが、役人試験の問題になっていたな」
「役人試験?なぜ?」
「王国を支える者は、他国にも情報通でなければいけないからな。
まあ、エレメンタル大陸の一般市民は、遠すぎてここまでは、めったに来ないから、知らなくても当然だけどな」
「そうなんだ」
「じゃあ。ここで、問題だ。
なぜ、海の色合いが異なっていると思う?」
クレイの問題に対して、答のわからなかったラセは、考えるそぶりをしながら、水の精霊を見た。
水の精霊は頷くと、答えをラセの耳に吹き込む。
目でお礼を告げた後、ラセはクレイに向き合った。
「異なる海流がぶつかり合う場所だから」
ラセの回答に対して、クレイは目を丸くした。
まさか、正解するとは思わなかったからだ。
「正解。よく見破りました。
では、次の問題。この現象を利用して、エレメンタル大陸とフォーチューン国は、取り決めをしました。その取り決めとはなんでしょうか?」
クレイは、今度こそはわからないだろうと、不敵な笑みを浮かべた。
水の精霊と風の精霊に目で訴えるが、両方とも首を振られてしまった。
精霊達は基本人間の制約には、しばられない。
唯一縛られるのは、エレメンタル大陸の五つの王国の加護、属性精霊の王族命令と、魔法のみだ。
よって、自然現象はわかっても、肝心のないことは、気にしない。
つまり、どこかで聞いたことはあったとしても、知識として覚えていないのだ。
ラセは、精霊に頼るのを諦めて、自分で考えた。
だが、いくら考えても答えは出なかった。
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