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海賊編 第三章 ノリ―ア姫
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「王国所属の海賊を辞めて、これからフォーチューン国の李祝に行くだと?」
船長は、クレイと、トタプ達を睨み付けた。
「デチャニー船長。わたしが、そうしたいって言ったの」
アンナが、船長の腕に胸を押さえつけながら告げた。
船長は、だらけた顔をした。
「そうか。アンナがそうしたいのならば、しかたがないな」
「え、そんなに簡単に許可していいの?」
ラセが、不思議そうに聞くと、トタプが苦笑して答えた。
「デチャニー船長は、昔からアンナに甘いから」
「今日から、この海賊船は、王国非公認の海賊船になった。
皆、文句はねーな」
船長の言葉に、海賊達は皆賛同した。
「目的地は、フォーチューン国にある李祝だ。
長旅になるから、気合い入れろよ!」
船長の掛け声と共に、船が港を離れる。
遠ざかって行く街並みを眺めて、ラセは、服の上から指輪を握りしめた。
「ラセ。いいもの見せてやるよ」
夜の海を眺めていると、ルイから声をかけられた。
手招きされて、向かうと、マストの柱に沿って、梯子が付けられていた。
「ラセ。高い所平気?」
「うん。大丈夫」
ルイの後について行きながら、梯子を上る。
「こっち」
先に梯子を上り切っていた。ルイは、樽を広げたような大きさの見晴台に立っていた。
ラセもルイに倣い、塀を超えて、見晴台に立った。
「空、見て見ろよ」
風であおられる帽子を押さえつけながら、ラセは、空を見上げた。
夜空は、甲板の上で見るよりも、近くて、なにより海と地平線の狭間まで星が見えて幻想的だった。
「綺麗」
「だろ」
ルイが得意げに微笑んだ。
「ここ知らなかった」
「ああ。普段は、マストに隠れて、見張り台が発見しにくい位置にあるんだ。だからだろ」
「ルイは、ここで、星を見る為に上がっているの?」
「それもあるけど、まあ、見張りの仕事だな」
「いいな。私の仕事の当番表には、見張り台で監視なんてなかった」
「それは、クレイが、女には危ないから、外したんだろうな」
「私、この海賊船の誰よりも、身軽な自信がある」
「確かに、ラセよりも、身軽で素早いやつは、この船にはいないかもな。でも、ラセはやっぱり女の子なんだよ。だから、すこしでも、危険だと感じることは、やらせられないんだろ」
「それって、なんだか不公平?」
ラセは、拗ねて頬を膨らませた。
「まあ拗ねるなって、俺と一緒のときは、こっそりまた見張り台に、あげてやるからよ」
「約束だからね」
「ああ」
ラセとルイは、星空の下約束の指切りを交わした。
「あ、流れ星」
ラセは、身を乗り出して、星を見上げた。
「どれ?」
ルイも流れ星を探した。
生き生きと夜空を眺めるラセを見て、ルイは安心した。
いつもそっけなくて、時々底の見えない瞳をするラセが、心配でたまらなかったから。
ルイの提案で、楽しそうにしてくれるラセは、気を張っている時とは違って年相応よりも幼く見える。
きっと自分に妹がいたら、こんな感じだったのだろうかと。
ルイは、いつまでも飽きずに夜空を見上げるラセに、優しい眼差しを向けた。
船長は、クレイと、トタプ達を睨み付けた。
「デチャニー船長。わたしが、そうしたいって言ったの」
アンナが、船長の腕に胸を押さえつけながら告げた。
船長は、だらけた顔をした。
「そうか。アンナがそうしたいのならば、しかたがないな」
「え、そんなに簡単に許可していいの?」
ラセが、不思議そうに聞くと、トタプが苦笑して答えた。
「デチャニー船長は、昔からアンナに甘いから」
「今日から、この海賊船は、王国非公認の海賊船になった。
皆、文句はねーな」
船長の言葉に、海賊達は皆賛同した。
「目的地は、フォーチューン国にある李祝だ。
長旅になるから、気合い入れろよ!」
船長の掛け声と共に、船が港を離れる。
遠ざかって行く街並みを眺めて、ラセは、服の上から指輪を握りしめた。
「ラセ。いいもの見せてやるよ」
夜の海を眺めていると、ルイから声をかけられた。
手招きされて、向かうと、マストの柱に沿って、梯子が付けられていた。
「ラセ。高い所平気?」
「うん。大丈夫」
ルイの後について行きながら、梯子を上る。
「こっち」
先に梯子を上り切っていた。ルイは、樽を広げたような大きさの見晴台に立っていた。
ラセもルイに倣い、塀を超えて、見晴台に立った。
「空、見て見ろよ」
風であおられる帽子を押さえつけながら、ラセは、空を見上げた。
夜空は、甲板の上で見るよりも、近くて、なにより海と地平線の狭間まで星が見えて幻想的だった。
「綺麗」
「だろ」
ルイが得意げに微笑んだ。
「ここ知らなかった」
「ああ。普段は、マストに隠れて、見張り台が発見しにくい位置にあるんだ。だからだろ」
「ルイは、ここで、星を見る為に上がっているの?」
「それもあるけど、まあ、見張りの仕事だな」
「いいな。私の仕事の当番表には、見張り台で監視なんてなかった」
「それは、クレイが、女には危ないから、外したんだろうな」
「私、この海賊船の誰よりも、身軽な自信がある」
「確かに、ラセよりも、身軽で素早いやつは、この船にはいないかもな。でも、ラセはやっぱり女の子なんだよ。だから、すこしでも、危険だと感じることは、やらせられないんだろ」
「それって、なんだか不公平?」
ラセは、拗ねて頬を膨らませた。
「まあ拗ねるなって、俺と一緒のときは、こっそりまた見張り台に、あげてやるからよ」
「約束だからね」
「ああ」
ラセとルイは、星空の下約束の指切りを交わした。
「あ、流れ星」
ラセは、身を乗り出して、星を見上げた。
「どれ?」
ルイも流れ星を探した。
生き生きと夜空を眺めるラセを見て、ルイは安心した。
いつもそっけなくて、時々底の見えない瞳をするラセが、心配でたまらなかったから。
ルイの提案で、楽しそうにしてくれるラセは、気を張っている時とは違って年相応よりも幼く見える。
きっと自分に妹がいたら、こんな感じだったのだろうかと。
ルイは、いつまでも飽きずに夜空を見上げるラセに、優しい眼差しを向けた。
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