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海賊編 第二章 義賊テール
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「仲が良くないと言うよりは、馬が合わないとおっしゃいますか」
「おだまり。ノーリア姫は、あんたと仲良くしたそうだって噂だよ」
マムの情報の正確さに、ラセは感心した。
なんとなく気付いていたが、ノーリア姫の周りには、他にもマムの伝手が存在しているらしい。
「マムのおっしゃる通りです。ノーリア姫との仲が芳しくないのは、私の我儘でしかありません」
「我儘ね」
いつもは、愚痴の一つもこぼさずに、仕事を忠実にこなすラセらしくない言葉に、マムは、興味を持った。
「過去に何かあったかい」
「!」
マムの言葉に身体が、震えた。
マムは、無言で居続けるラセの反応を窺って肯定と認識した。
「まあ、あんたを拾った時、いくら過去を調べても、何にも出てこなかったし、あんたも何も言わなかったから、目をつぶっていたけれども」
マムは、ここで言葉を一度切ると、ラセを見据えた。
「これからの事に、過去を持ち込むんじゃないよ。仕事の邪魔になる」
マムは、言い切ると、後ろを向いてしまった。
マムの言葉が、ラセの胸に染みた。
過去は、どうであれ、今は……。
過ぎ去ってしまった日々は決して取り戻せない。
取り戻せるのは、これからの時間だけだから。
「はい!」
ラセは、気合いの入った返事をして、部屋から出て行った。
「過去ね」
マムは、昔に出会った、ラセと同じ髪色をした幼女の事を思い浮かべた。
「もしも、過去へと戻れるのならば」
はたして、自分は、あの子に何をしてあげられただろうか?
舞踏会当日。
ラセは、使用人のふりをして、舞踏会会場である水の国の城へと忍び込むことに成功した。
当然会場には、ノーリア姫とそのお供達も来ていた。
顔の割れているラセは、出来るだけノーリア姫達と接触しないように、細心の注意をした。
舞踏会は、特に問題なく進行しているように思える。
王族の言葉も無事に終わった。
後は、国王と王妃の言葉だけだ。
「皆様本日は、お忙しい中、お集まりいただき有難うございます」
美しいドレスを着た王妃が、優雅に挨拶をした。
皆の注目を集める王妃。
それなのに、ラセだけは、王妃の姿を凝視出来なくて、目を背けた。
「今年で、双子のイハ王子とティーラ姫が、二十歳を迎えます。
とてもめでたい年です」
王妃の言葉に、皆喜びの拍手をした。
「皆さん。ありがとうございます。
そして、セラが亡くなってから、十年の月日が過ぎました」
セラの名前に、皆動揺した。
「おい、セラって」
「あの、闇の霧に堕落した」
「しっ。王妃の御前だぞ!」
隣に居た、国王が、王妃の言葉を遮るように、発言をした。
「闇の帝国の脅威は、未だにこの世界から消えぬ。
なんとしても、今年こそは、闇の霧を根倒しにしてみせよう!」
国王の掲げた拳に、客達は賛同の声を上げた。
王妃は、何かを言いたげだったが、国王に肩を抱かれて、黙り込んだ。
「では、皆の者。今日は、楽しい宴としよう!」
国王の乾杯の合図と共に、ワルツが流れ出す。
ある者は、食事を楽しみ。
ある者は、雑談に花を咲かせ。
ある者は、ダンスにドレスの裾を広げる。
それぞれが、舞踏会を楽しんでいた。
そんな中、ラセだけが、物陰に屈みこんで、身動きが取れずにいた。
身体が恐怖で震える。
「どこか具合でも悪いのですか?僕のお姫様」
声に釣られて顔を上げるとそこには、砂色の髪をした青年が、執事服を着こなしていた。
「ウェイル?」
「そうだよ。僕のお姫様」
ラセは、敵対しているとわかっていながらも、ウェイルに抱き着いた。
「おだまり。ノーリア姫は、あんたと仲良くしたそうだって噂だよ」
マムの情報の正確さに、ラセは感心した。
なんとなく気付いていたが、ノーリア姫の周りには、他にもマムの伝手が存在しているらしい。
「マムのおっしゃる通りです。ノーリア姫との仲が芳しくないのは、私の我儘でしかありません」
「我儘ね」
いつもは、愚痴の一つもこぼさずに、仕事を忠実にこなすラセらしくない言葉に、マムは、興味を持った。
「過去に何かあったかい」
「!」
マムの言葉に身体が、震えた。
マムは、無言で居続けるラセの反応を窺って肯定と認識した。
「まあ、あんたを拾った時、いくら過去を調べても、何にも出てこなかったし、あんたも何も言わなかったから、目をつぶっていたけれども」
マムは、ここで言葉を一度切ると、ラセを見据えた。
「これからの事に、過去を持ち込むんじゃないよ。仕事の邪魔になる」
マムは、言い切ると、後ろを向いてしまった。
マムの言葉が、ラセの胸に染みた。
過去は、どうであれ、今は……。
過ぎ去ってしまった日々は決して取り戻せない。
取り戻せるのは、これからの時間だけだから。
「はい!」
ラセは、気合いの入った返事をして、部屋から出て行った。
「過去ね」
マムは、昔に出会った、ラセと同じ髪色をした幼女の事を思い浮かべた。
「もしも、過去へと戻れるのならば」
はたして、自分は、あの子に何をしてあげられただろうか?
舞踏会当日。
ラセは、使用人のふりをして、舞踏会会場である水の国の城へと忍び込むことに成功した。
当然会場には、ノーリア姫とそのお供達も来ていた。
顔の割れているラセは、出来るだけノーリア姫達と接触しないように、細心の注意をした。
舞踏会は、特に問題なく進行しているように思える。
王族の言葉も無事に終わった。
後は、国王と王妃の言葉だけだ。
「皆様本日は、お忙しい中、お集まりいただき有難うございます」
美しいドレスを着た王妃が、優雅に挨拶をした。
皆の注目を集める王妃。
それなのに、ラセだけは、王妃の姿を凝視出来なくて、目を背けた。
「今年で、双子のイハ王子とティーラ姫が、二十歳を迎えます。
とてもめでたい年です」
王妃の言葉に、皆喜びの拍手をした。
「皆さん。ありがとうございます。
そして、セラが亡くなってから、十年の月日が過ぎました」
セラの名前に、皆動揺した。
「おい、セラって」
「あの、闇の霧に堕落した」
「しっ。王妃の御前だぞ!」
隣に居た、国王が、王妃の言葉を遮るように、発言をした。
「闇の帝国の脅威は、未だにこの世界から消えぬ。
なんとしても、今年こそは、闇の霧を根倒しにしてみせよう!」
国王の掲げた拳に、客達は賛同の声を上げた。
王妃は、何かを言いたげだったが、国王に肩を抱かれて、黙り込んだ。
「では、皆の者。今日は、楽しい宴としよう!」
国王の乾杯の合図と共に、ワルツが流れ出す。
ある者は、食事を楽しみ。
ある者は、雑談に花を咲かせ。
ある者は、ダンスにドレスの裾を広げる。
それぞれが、舞踏会を楽しんでいた。
そんな中、ラセだけが、物陰に屈みこんで、身動きが取れずにいた。
身体が恐怖で震える。
「どこか具合でも悪いのですか?僕のお姫様」
声に釣られて顔を上げるとそこには、砂色の髪をした青年が、執事服を着こなしていた。
「ウェイル?」
「そうだよ。僕のお姫様」
ラセは、敵対しているとわかっていながらも、ウェイルに抱き着いた。
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