盗賊は風を纏い、海賊は水を纏う。

覗見ユニシア

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海賊編 第一章 闇の霧対策部隊、王国所属の海賊

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 しばらく、洞窟の中を歩くと、開けた空間へと出た。
 空間の中央には、棺ほどの大きさの箱が横たわっていた。

「なんだ。これ?」

 棺に近づいたルイは、蓋を開けようと力をこめたが、びくともしない。

「開かないぞ。この棺」
「どれ」

 クレイが、力を合わせるが、やはり棺の蓋は、開かなかった。

「鍵が、付いているようにも、見えないのだが」

 クレイは、棺の周りをランタンで照らして確かめた。
 重いから開かないのか?それとも特殊な封印がされているのか?
 首を傾げていると、突然黒い霧が立ち込めた。

「これは、闇の霧!」

 クレイ達が驚いて立ち上がると、声が洞窟に響いた。

「まあ、今回は、いいところまで来たかな」

 闇の霧が集まり、人影を作り上げた。
 霧が晴れると、そこには、一人の青年が立っていた。
 長身で、緩やかな身のこなし。
 程よく引き締まった体躯。
 肩に届く砂色の髪。
 海を映したかのような瞳。

「ウェイル」

 ラセは、目の前に現れた見覚えのあり過ぎる姿を凝視した。

「姿を見せたのは、ご褒美だよ。ラセ」

 姿を現したウェイルは、にっこりと微笑んだ。

「どうして、ウェイルがここに」

 ウェイルは、棺を軽く叩いた。

「ちょっと、これの護衛にね」
「護衛?」
「この棺の中には、闇の帝国にとって大切な物が入っているんだ」

 不敵に微笑むウェイル。

「あいつ。ラセの知り合いか?」
「ウェイルは」

 ラセは、服の上から指輪を握りしめた。

「私の婚約者」
「えっ?」

 ラセの驚愕の言葉に、ルイが固まる。

「でも、せっかくここまで、たどり着いたのに、残念。
 これは渡せないよ」

 ウェイルの手のひらに、水が集まり出す。

「気を付けて!ウェイルは、水魔法の使い手なの!」
「水魔法って、水の国の王族以外使えないんじゃ!」

 ルイの言葉が、終わる前に、水魔法が放たれる。

「ルイ!」

 ぼーと立ち尽くしていたルイをクレイが庇って、水魔法を避ける。

「何ぼやっとしている!相手は、闇の霧なのだぞ!」

 クレイは、腰から剣を取り出し、ウェイルに向き合った。

「悪い」

 ルイもナイフを懐から取り出し構えた。

「魔法に物理攻撃が利くと思っているの?」

 ウェイルは、余裕の表情で、二発目を用意する。

「二人は下がって」

 ラセは、武器を構えたルイとクレイの前へと進み出た。

「おい、ラセ危ない」
「ラセ君。君は下がって居なさい」

 ラセは、一瞬だけ振り返ると、安心されるように、頷いた。

「私は、大丈夫だから」

 ラセの自信に満ちたまなざしに、動けなくなるルイとクレイ。

「ああ。ラセの相手は、したくなかったんだけどな」
「どうしても、戦うの?ウェイル?」
「君が、僕を闇の帝国より解き放ってくれるまでは」
「……わかった」

 ウェイルが、水魔法をラセに向かって放つ。
 ラセは、それを避けようともしない。
 ラセに水魔法がぶつかりかけたその時。
 ラセを守るように、風の障壁が現れた。
 風の障壁は、水魔法を取り込むと、その反動を利用して、ウェイルに飛んでいく。
 風と水が混ざり合った魔法にウェイルは、舌打ちをした。

「強くなったね。僕のお姫様」

 ウェイルは、ラセに微笑みかけると、闇の霧となり、姿をくらませた。
 ラセが放った風と水の混合魔法は、洞窟の壁に激突し、削り取った後消滅した。

「逃がした」

 ラセは、ウェイルが居なくなったところを凝視した。

「ラセ。お前すげーな」

 ルイは素直にラセの魔法に感動していた。
 だが、クレイは、難しい顔をしていた。
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