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海賊編 第一章 闇の霧対策部隊、王国所属の海賊
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「お宝の地図を見つけたぞ!」
海賊の一人が、島に寄った時に、見つけて来た地図。
そこには、×印で宝のありかが示されていた。
「本当に宛てになるのか?この地図?」
ルイが地図を取り上げて、ぶら下げた。
「おっと、大事にしろよな。宝が見つかったら俺達大金持ちだぜ」
クレイが、地図を覗き込んだ。
「ここは、まだ、開発が進んでいない、無人島か。
確かに、何かが埋もれていてもおかしくはないな」
「だろ。さすが、クレイの旦那は、話がわかるぜ」
海賊の男が、クレイの肩を掴んだ。
クレイは、顎に手を当てて考え込んだ後、顔を上げた。
「未開発地帯の調査も重要な国務だ。
宝探しもかねて、行ってみるか?船長もいいだろ?」
クレイが同意を求めると、船長も頷いた。
その合図と同時に海賊達が湧きたった。
ラセは、食事をかみしめながら、眺めていた。
「宝探しだって。楽しみだな。ラセ」
「別に」
ルイの楽しげな言葉を、相手にせずに、ラセは食事を続けた。
「おいおい。反応薄いな」
「私は、闇の霧しか興味がないから」
黙々と食事を続けるラセに、ルイは拍子抜けしてしまう。
ルイと、ラセの様子を眺めていたクレイはある提案が思い付き、にやりと微笑んだ。
「じゃあ。島の探索に行こうか?」
クレイが、小船から降りて、ルイとラセを見た。
「なぜ、私達だけなの?盛り上がっていた他の海賊の人たちは?」
そもそも地図を持ってきたあの海賊すらいない。
「だから、島は広いから、分担して捜索しようって話になっただろう」
ルイの説明に、ラセは納得のいかない表情を浮かべた。
「海賊船で留守番がよかったのに」
「まあまあ。そう言わずに、行こうか。道のりは長いぞ!」
王国の役人のくせに、クレイが一番宝探しに乗り気なのは気のせいだろうか?
「おれ達も行こうぜ」
ルイに促されて、ラセは仕方がなくついて行く。
あるのか、ないのか、わからない物を探すのは、無意味な行為だと思う。
ラセは、闇の霧の捜索の為、手探りで情報を探っていたから、曖昧な情報だけで、行動に移す危険性と、時間の無駄加減を良く知っていた。
もっと、緻密な、正確な情報を集めて、確信だと確証してから、行動した方が、無駄も危険もずっと少ない。
それなのに、この海賊集団は、お気楽と言うか、計画性がないと言うか。
ラセが、過ごしてきた、生活とは真逆の生き方をしている。
ラセは、この海賊集団に止まり続けることが、はたして正しいことなのかわからなくなる。
それでも、ここに留まっているのは、トタプの作る食事のおいしさにある。
あの食事は、手放したくなかった。
ずっと夢にまで見た味だったから。
「おっ。洞窟発見。入ってみるか?」
先を歩いていたクレイが、洞窟を発見したらしい。
荷物からランタンを取り出して、火をともした。
洞窟の中は、湿っていて薄暗い。
ランタンの明かりだけが、唯一道を照らす術だ。
三人は、クレイ。ルイ。ラセの順番で並んで歩く。
ラセは、念の為、風の精霊を先に奥へと向かわせ、様子を窺うようにお願いした。
「冒険しているって感じがしてわくわくするな」
ルイが、歩きながら、にやにやと笑っている。
「ああ。知らない所を探索するのは、面白い」
クレイもルイにならって、楽しそうな顔をしている。
ラセは、楽しそうにしている二人を呆れながら眺めていた。
やがて、行き止まりに辿りついた。
「あれ、ここで終わりか?」
「何もないただの空洞か。残念」
クレイとルイは、行き止まりだと気付くと、落胆した。
だが、ラセだけは、いるはずの風の精霊が居ないことに、不信感を抱いていた。
辺りを見渡して、風の流れが無いかを探す。
すると、ラセの服の裾がなびく場所があった。
ラセは、そこにある岩を押した。
すると、岩は動き、横へと地響きを立ててずれた。
「隠し通路か!」
移動した、岩の向こう側には、道がまだ続いていた。
通路には、風の精霊が待っていてくれた。
ラセは、風の精霊に小声でお礼を言い、又、探索をお願いした。
「やるな。ラセ」
ラセは、帽子の上から、クレイに頭を撫でられる。
落ちそうになる帽子を押さえながら、ラセは、クレイから離れた。
「あんまり、乱暴に扱うなよ。ラセは、人に触られるのが、苦手なんだ」
先日変態扱いされたルイは苦笑した。
「先に行こう」
ラセは、クレイとルイのやり取りを無視して、開かれた道に足を踏み入れた。
先ほどまでは、ただの宝探しと馬鹿にしていたが、隠し通路が見つかれば話は別だ。
隠し通路は、よく闇の霧の者が使う手段であることをラセはいままでの経験から知っていた。
やつらは、普段表舞台には姿を見せず、裏から貴族や商人に取り入り暗躍する。
唯一姿を現すのは、闇の霧を張り、人々を捕える時だけ。
闇の霧と称される集団の本当の名は、闇の帝国。
かつて、エレメンタル大陸に存在する五つの王国を混乱に陥れようと暗躍していた帝国だ。
その計画は、木の国の第三王女の護衛を務めた者達が食い止めて事なきを得ていたのだが。
闇の帝国自体は、未だのこの世界に存在している。
本拠地がわからないので、五つの王国は、協力して、捜索をしている。
その一つの手段として設立されたのが、王国所属の闇の霧対策部隊でもある。
海賊の一人が、島に寄った時に、見つけて来た地図。
そこには、×印で宝のありかが示されていた。
「本当に宛てになるのか?この地図?」
ルイが地図を取り上げて、ぶら下げた。
「おっと、大事にしろよな。宝が見つかったら俺達大金持ちだぜ」
クレイが、地図を覗き込んだ。
「ここは、まだ、開発が進んでいない、無人島か。
確かに、何かが埋もれていてもおかしくはないな」
「だろ。さすが、クレイの旦那は、話がわかるぜ」
海賊の男が、クレイの肩を掴んだ。
クレイは、顎に手を当てて考え込んだ後、顔を上げた。
「未開発地帯の調査も重要な国務だ。
宝探しもかねて、行ってみるか?船長もいいだろ?」
クレイが同意を求めると、船長も頷いた。
その合図と同時に海賊達が湧きたった。
ラセは、食事をかみしめながら、眺めていた。
「宝探しだって。楽しみだな。ラセ」
「別に」
ルイの楽しげな言葉を、相手にせずに、ラセは食事を続けた。
「おいおい。反応薄いな」
「私は、闇の霧しか興味がないから」
黙々と食事を続けるラセに、ルイは拍子抜けしてしまう。
ルイと、ラセの様子を眺めていたクレイはある提案が思い付き、にやりと微笑んだ。
「じゃあ。島の探索に行こうか?」
クレイが、小船から降りて、ルイとラセを見た。
「なぜ、私達だけなの?盛り上がっていた他の海賊の人たちは?」
そもそも地図を持ってきたあの海賊すらいない。
「だから、島は広いから、分担して捜索しようって話になっただろう」
ルイの説明に、ラセは納得のいかない表情を浮かべた。
「海賊船で留守番がよかったのに」
「まあまあ。そう言わずに、行こうか。道のりは長いぞ!」
王国の役人のくせに、クレイが一番宝探しに乗り気なのは気のせいだろうか?
「おれ達も行こうぜ」
ルイに促されて、ラセは仕方がなくついて行く。
あるのか、ないのか、わからない物を探すのは、無意味な行為だと思う。
ラセは、闇の霧の捜索の為、手探りで情報を探っていたから、曖昧な情報だけで、行動に移す危険性と、時間の無駄加減を良く知っていた。
もっと、緻密な、正確な情報を集めて、確信だと確証してから、行動した方が、無駄も危険もずっと少ない。
それなのに、この海賊集団は、お気楽と言うか、計画性がないと言うか。
ラセが、過ごしてきた、生活とは真逆の生き方をしている。
ラセは、この海賊集団に止まり続けることが、はたして正しいことなのかわからなくなる。
それでも、ここに留まっているのは、トタプの作る食事のおいしさにある。
あの食事は、手放したくなかった。
ずっと夢にまで見た味だったから。
「おっ。洞窟発見。入ってみるか?」
先を歩いていたクレイが、洞窟を発見したらしい。
荷物からランタンを取り出して、火をともした。
洞窟の中は、湿っていて薄暗い。
ランタンの明かりだけが、唯一道を照らす術だ。
三人は、クレイ。ルイ。ラセの順番で並んで歩く。
ラセは、念の為、風の精霊を先に奥へと向かわせ、様子を窺うようにお願いした。
「冒険しているって感じがしてわくわくするな」
ルイが、歩きながら、にやにやと笑っている。
「ああ。知らない所を探索するのは、面白い」
クレイもルイにならって、楽しそうな顔をしている。
ラセは、楽しそうにしている二人を呆れながら眺めていた。
やがて、行き止まりに辿りついた。
「あれ、ここで終わりか?」
「何もないただの空洞か。残念」
クレイとルイは、行き止まりだと気付くと、落胆した。
だが、ラセだけは、いるはずの風の精霊が居ないことに、不信感を抱いていた。
辺りを見渡して、風の流れが無いかを探す。
すると、ラセの服の裾がなびく場所があった。
ラセは、そこにある岩を押した。
すると、岩は動き、横へと地響きを立ててずれた。
「隠し通路か!」
移動した、岩の向こう側には、道がまだ続いていた。
通路には、風の精霊が待っていてくれた。
ラセは、風の精霊に小声でお礼を言い、又、探索をお願いした。
「やるな。ラセ」
ラセは、帽子の上から、クレイに頭を撫でられる。
落ちそうになる帽子を押さえながら、ラセは、クレイから離れた。
「あんまり、乱暴に扱うなよ。ラセは、人に触られるのが、苦手なんだ」
先日変態扱いされたルイは苦笑した。
「先に行こう」
ラセは、クレイとルイのやり取りを無視して、開かれた道に足を踏み入れた。
先ほどまでは、ただの宝探しと馬鹿にしていたが、隠し通路が見つかれば話は別だ。
隠し通路は、よく闇の霧の者が使う手段であることをラセはいままでの経験から知っていた。
やつらは、普段表舞台には姿を見せず、裏から貴族や商人に取り入り暗躍する。
唯一姿を現すのは、闇の霧を張り、人々を捕える時だけ。
闇の霧と称される集団の本当の名は、闇の帝国。
かつて、エレメンタル大陸に存在する五つの王国を混乱に陥れようと暗躍していた帝国だ。
その計画は、木の国の第三王女の護衛を務めた者達が食い止めて事なきを得ていたのだが。
闇の帝国自体は、未だのこの世界に存在している。
本拠地がわからないので、五つの王国は、協力して、捜索をしている。
その一つの手段として設立されたのが、王国所属の闇の霧対策部隊でもある。
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