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海賊編 第一章 闇の霧対策部隊、王国所属の海賊
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「おかわり!」
海賊達が呆れる中、一人平然とした顔で、ラセは、食事の追加をお願いした。
「ラセちゃんは、よく食べるね」
代わりのスープを入れて来たトタプが、嬉しそうに微笑んだ。
「食費高くなりそうね」
色気のある気の強そうな女性が、ため息をついた。
「まあ、そう言わないであげてよ。アンナ」
「食費は、国家予算から出ているから、別にかまわないだろ」
クレイは、既に食べ終わっており、楊枝を口にくわえていた。
「あなた、それでも、国家から派遣された役人?って、そういう問題じゃなくて、船に詰める食料はかぎられているのよ。ただでさえ、大食いの男どもがいるのに、これ以上悪化したら、目的地にたどり着く前に食料が尽きるわよ。
だいたい、捕虜だった頃は、御かわりなんて要求しなかったじゃない!」
アンナの言葉に、ラセは、反省したのか、食べ終わった皿を置いた。
「ごめんなさい。トタプさんの料理がおいしくてつい。明日からは、御かわりはしない」
ごちそうさまと、告げると、ラセは、席を立った。
皆が食べ終わった食器をテーブルから片付けて、皿洗いを始める。
「ああ。ラセちゃん。僕がやるからいいよ」
「平気。皿洗いはなれているから」
手慣れた様子で、大量の皿を片付けるラセ。
「終わった」
短時間で片付けられた皿は、どれも、新品同様の輝きを放っている。
海賊達が、見惚れていると、ラセは、淡々とした口調で告げた。
「で、次は?」
ラセは、働き者だった。
誰よりも丁寧な仕事で、常に完璧。
教えても居ないのに、大砲の整備や、道具の扱いも達人並。
それは、全て風の精霊と水の精霊の力を借りてのことだったのだが、誰もラセの手際の良さを疑わなかった。
ラセに仕事を取られた他の海賊達が、次第に遊びほうけるようになった。
その事に対して、船長であるデチャニーとクレイは、頭を悩ませた。
「ラセ君」
「はい?」
いつも通り甲板の掃除をしていると、クレイに呼び止められた。
「仕事の事なのだが、当番制にしよう。正直、君が、他の者の仕事を取ってしまっていて、困っている」
「どうして、他の人の仕事を奪ってはいけないの?
使用人をしていた時は、皆の仕事を代わりにしたら、喜ばれた」
「君は、使用人だったのか?」
「他にも色々な職種を経験した。
全ては、闇の霧の手がかりを得る為に」
真っ直ぐに見上げてくる透き通る黄緑色の瞳は、何が間違っているのかわからないと、クレイに訴えていた。
この子供は、役割分担の大切さが、よく理解出来ていないようだ。
全ての事を、一人で出来てしまうがゆえに。
「とにかく、当番制は、この海賊船の規則だ。規則は、守ってもらわなければ困る」
クレイの言葉に、ラセは、半信半疑ながらも頷いた。
「わかった。当番制。守る」
「いい子だ」
クレイは、ラセの頭を撫でて立ち去った。
聞き分けの良い子は扱いやすくて、嫌いではない。
人とは感性が、すこしずれたところが、難点ではあるが。
クレイが去った後、ラセは、甲板掃除を終わらせて、道具を片付けた。
潮風が、心地よい。
ラセは、塀に身を預けて、潮風を思いっきり浴びた。
心地よさそうに、舞う精霊達。
この船を運んでいるのは、潮の流れと、風の精霊達の風圧だ。
風に揺れるマストを眺めながら、空を眺める。
いつになったら、ウェイルの元へとたどり着けるのだろうか?
ラセは、ペンダントを取り出した。
鎖につながれている、婚約指輪を眺める。
その時、懐中時計程のペンダントが、淡い珊瑚色の光を放った。
「忘れていた」
ラセは、甲板に誰も居ないのを確認すると、ペンダントの蓋を開けた。
中から飛び出す珊瑚色の光は、甲板に着地した。
『ここは、気持ちがいい所ですね』
出てきた小動物は、珊瑚色の毛並を風になびかせた。
「うん。私もそう思っている」
ペンダントに封じられていた、魔物に向かってラセは微笑んだ。
『ひさしぶりに、稽古を致しますか?』
小動物が、そう告げると、ペンダントの中から、光の玉が出てきた。
それを、ラセが握りしめると、一振りの短槍が現れた。
「そうだね。セントミア」
ラセは、素振りの稽古を始めた。
舞うように流れる動きは、精霊達ですら魅了する。
母から教わった大事な武術。
厳しい闇の霧との戦いを切り抜けてきた術。
いつしか、海賊達が、甲板に出てきて、ラセの稽古をまるで、芸でも見るかのように、輝いた顔で見ていた。
そんな中。人混みの後ろから、ラセの動きを眺めていたトタプは、驚愕の表情を浮かべた。
「あの構えは」
トタプは、目の前で舞うように短槍を振るうラセと、かつて旅を共にした少女を重ねずには、居られなかった。
とあるところに、盗賊に拾われた赤子がいました。
赤子は、りっぱな盗賊少女へと成長しました。
少女が所属する盗賊は、親分と料理人と、頼りない少年の四人でした。
料理人の料理は質素ながらもとてもおいしく、少女のお気に入りでした。
やがて、少女は、旅をするうちに、木の国の第三王女に出会います。
第三王女の護衛を務めることになった盗賊団は、闇の帝国と次第に敵対していきました。
そして、闇の帝国の陰謀を妨害した少女は、旅を共にした少年と仲良く暮らしたそうです。
海賊達が呆れる中、一人平然とした顔で、ラセは、食事の追加をお願いした。
「ラセちゃんは、よく食べるね」
代わりのスープを入れて来たトタプが、嬉しそうに微笑んだ。
「食費高くなりそうね」
色気のある気の強そうな女性が、ため息をついた。
「まあ、そう言わないであげてよ。アンナ」
「食費は、国家予算から出ているから、別にかまわないだろ」
クレイは、既に食べ終わっており、楊枝を口にくわえていた。
「あなた、それでも、国家から派遣された役人?って、そういう問題じゃなくて、船に詰める食料はかぎられているのよ。ただでさえ、大食いの男どもがいるのに、これ以上悪化したら、目的地にたどり着く前に食料が尽きるわよ。
だいたい、捕虜だった頃は、御かわりなんて要求しなかったじゃない!」
アンナの言葉に、ラセは、反省したのか、食べ終わった皿を置いた。
「ごめんなさい。トタプさんの料理がおいしくてつい。明日からは、御かわりはしない」
ごちそうさまと、告げると、ラセは、席を立った。
皆が食べ終わった食器をテーブルから片付けて、皿洗いを始める。
「ああ。ラセちゃん。僕がやるからいいよ」
「平気。皿洗いはなれているから」
手慣れた様子で、大量の皿を片付けるラセ。
「終わった」
短時間で片付けられた皿は、どれも、新品同様の輝きを放っている。
海賊達が、見惚れていると、ラセは、淡々とした口調で告げた。
「で、次は?」
ラセは、働き者だった。
誰よりも丁寧な仕事で、常に完璧。
教えても居ないのに、大砲の整備や、道具の扱いも達人並。
それは、全て風の精霊と水の精霊の力を借りてのことだったのだが、誰もラセの手際の良さを疑わなかった。
ラセに仕事を取られた他の海賊達が、次第に遊びほうけるようになった。
その事に対して、船長であるデチャニーとクレイは、頭を悩ませた。
「ラセ君」
「はい?」
いつも通り甲板の掃除をしていると、クレイに呼び止められた。
「仕事の事なのだが、当番制にしよう。正直、君が、他の者の仕事を取ってしまっていて、困っている」
「どうして、他の人の仕事を奪ってはいけないの?
使用人をしていた時は、皆の仕事を代わりにしたら、喜ばれた」
「君は、使用人だったのか?」
「他にも色々な職種を経験した。
全ては、闇の霧の手がかりを得る為に」
真っ直ぐに見上げてくる透き通る黄緑色の瞳は、何が間違っているのかわからないと、クレイに訴えていた。
この子供は、役割分担の大切さが、よく理解出来ていないようだ。
全ての事を、一人で出来てしまうがゆえに。
「とにかく、当番制は、この海賊船の規則だ。規則は、守ってもらわなければ困る」
クレイの言葉に、ラセは、半信半疑ながらも頷いた。
「わかった。当番制。守る」
「いい子だ」
クレイは、ラセの頭を撫でて立ち去った。
聞き分けの良い子は扱いやすくて、嫌いではない。
人とは感性が、すこしずれたところが、難点ではあるが。
クレイが去った後、ラセは、甲板掃除を終わらせて、道具を片付けた。
潮風が、心地よい。
ラセは、塀に身を預けて、潮風を思いっきり浴びた。
心地よさそうに、舞う精霊達。
この船を運んでいるのは、潮の流れと、風の精霊達の風圧だ。
風に揺れるマストを眺めながら、空を眺める。
いつになったら、ウェイルの元へとたどり着けるのだろうか?
ラセは、ペンダントを取り出した。
鎖につながれている、婚約指輪を眺める。
その時、懐中時計程のペンダントが、淡い珊瑚色の光を放った。
「忘れていた」
ラセは、甲板に誰も居ないのを確認すると、ペンダントの蓋を開けた。
中から飛び出す珊瑚色の光は、甲板に着地した。
『ここは、気持ちがいい所ですね』
出てきた小動物は、珊瑚色の毛並を風になびかせた。
「うん。私もそう思っている」
ペンダントに封じられていた、魔物に向かってラセは微笑んだ。
『ひさしぶりに、稽古を致しますか?』
小動物が、そう告げると、ペンダントの中から、光の玉が出てきた。
それを、ラセが握りしめると、一振りの短槍が現れた。
「そうだね。セントミア」
ラセは、素振りの稽古を始めた。
舞うように流れる動きは、精霊達ですら魅了する。
母から教わった大事な武術。
厳しい闇の霧との戦いを切り抜けてきた術。
いつしか、海賊達が、甲板に出てきて、ラセの稽古をまるで、芸でも見るかのように、輝いた顔で見ていた。
そんな中。人混みの後ろから、ラセの動きを眺めていたトタプは、驚愕の表情を浮かべた。
「あの構えは」
トタプは、目の前で舞うように短槍を振るうラセと、かつて旅を共にした少女を重ねずには、居られなかった。
とあるところに、盗賊に拾われた赤子がいました。
赤子は、りっぱな盗賊少女へと成長しました。
少女が所属する盗賊は、親分と料理人と、頼りない少年の四人でした。
料理人の料理は質素ながらもとてもおいしく、少女のお気に入りでした。
やがて、少女は、旅をするうちに、木の国の第三王女に出会います。
第三王女の護衛を務めることになった盗賊団は、闇の帝国と次第に敵対していきました。
そして、闇の帝国の陰謀を妨害した少女は、旅を共にした少年と仲良く暮らしたそうです。
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