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盗賊編 第八章 火矢の嵐
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クエル王国を旅立って数日。
森が近くに広がっている町へとたどり着いたが、照りつける太陽は相変わらず暑い。
「今日は、ひさしぶりに、野宿しなくて済むね」
ロティーラが、食べ物を持ちながら、歩いている。
横に並んで、セイハが、道具を抱えて歩いている。
二人とも、買い物を楽しんでいるようだ。
飛びつかれた魔神サピダジョースンは、ペンダントの中で休憩している。
「最近野宿ばっかりだったからな」
セイハは、クエル王国以来、少し大人っぽくなった。
昔の様に、喧嘩をしなくなった。
ロティーラは、成長するセイハに対して、寂しさを覚えた。
元気のないロティーラを心配そうに、セイハが見つめる。
「大丈夫か?今日は、早めに宿屋を探して休むか?」
「へ、平気だよ。……セイハ変わったね」
「なに言っているのだよ。おれは、変わってないって」
宿を見つけたセイハは、小走りに走った。
今日は、黒猫亭に泊まることになった。
ザザー
昼まで晴れていたのに、夕方から雨が降り出した。
雨が窓に当たるのを、面白そうにロティーラは、眺めていた。
「そういえば、ロティーラは、宿屋に泊るのは、初めてだっけ?」
「セイハは、泊ったことあるの?」
「ああ。親分達に拾われる、ずっと前に」
セイハは、昔を思い出しているのか、懐かしそうに、雨の当たる窓を眺めた。
雨は、止むどころか、勢いをましていく。
空が暗くなり、黒い雲に覆われて行く。
ドカーン。
すさまじい音を立てて、雷が光った。
雷の大きな音に驚いて、両耳を塞ぐ。
「あはは。ロティーラは、雷も見たことなかったか」
「雷は見たことあるけれども、急に大きな音がしたから驚いただけ」
「あったっけ?」
「あったもん。デチャニーの船に乗せてもらって大嵐になった日に」
「そういえば、そうだったな。懐かしいな」
セイハは、腹を抱えて笑い出した。
ロティーラは、むかついてセイハの身体をぽかぽかと殴るが、セイハは、笑い続ける。
ロティーラは、久しぶりに、セイハの笑みを見られたので、うれしかった。
また、大きな雷がなった。
ロティーラが思わず、近くに居たセイハに抱き着く。
セイハは、やさしく、頭をなでて
「大丈夫だから」
と言って、ロティーラをぎゅっと抱きしめた。
雨は、強さを増し、雷の回数も増える。
「おかしい」
「え?」
セイハは、ロティーラを抱いていた手を離して、窓の所へと近寄った。
一瞬だが、赤い火の玉が落ちてくるのが、確認出来た。
やがて、火の玉の数量は増し、人々の悲鳴が聞こえてくるようになった。
火の玉の当たった家々が、次々に燃え出して、見る見るうちに、窓の外は、赤く燃え上がってしまっている。
「火の国の仕業だな」
「どうして、ひどいことをするの?止めてくる!」
ロティーラが、ドアに向かって駈け出そうとしたのを、セイハが止めた。
「どうして、止めに行かないの?このままじゃ、町が燃えてしまうよ」
ロティーラは、ひっしにセイハを振り切ろうとしたが、セイハは、譲らなかった。
「おれ達には、もっと役に立つ助人がいるだろう?」
「あ!」
ロティーラは、思い出したように、魔法陣の書かれたペンダントを取り出した。
「がんばろうね」
一言語りかけてから、ペンダントを開く。
あふれ出す強い光。
まぶしい光に、ロティーラ達は、目を閉じる。
光が収まった頃合いを見て、目を開くと、美しく光輝くたてがみを持つ四本脚の魔神がいた。
窓の外には、家が燃え上がりながら、崩れていく様子が見て取れる。
森が近くに広がっている町へとたどり着いたが、照りつける太陽は相変わらず暑い。
「今日は、ひさしぶりに、野宿しなくて済むね」
ロティーラが、食べ物を持ちながら、歩いている。
横に並んで、セイハが、道具を抱えて歩いている。
二人とも、買い物を楽しんでいるようだ。
飛びつかれた魔神サピダジョースンは、ペンダントの中で休憩している。
「最近野宿ばっかりだったからな」
セイハは、クエル王国以来、少し大人っぽくなった。
昔の様に、喧嘩をしなくなった。
ロティーラは、成長するセイハに対して、寂しさを覚えた。
元気のないロティーラを心配そうに、セイハが見つめる。
「大丈夫か?今日は、早めに宿屋を探して休むか?」
「へ、平気だよ。……セイハ変わったね」
「なに言っているのだよ。おれは、変わってないって」
宿を見つけたセイハは、小走りに走った。
今日は、黒猫亭に泊まることになった。
ザザー
昼まで晴れていたのに、夕方から雨が降り出した。
雨が窓に当たるのを、面白そうにロティーラは、眺めていた。
「そういえば、ロティーラは、宿屋に泊るのは、初めてだっけ?」
「セイハは、泊ったことあるの?」
「ああ。親分達に拾われる、ずっと前に」
セイハは、昔を思い出しているのか、懐かしそうに、雨の当たる窓を眺めた。
雨は、止むどころか、勢いをましていく。
空が暗くなり、黒い雲に覆われて行く。
ドカーン。
すさまじい音を立てて、雷が光った。
雷の大きな音に驚いて、両耳を塞ぐ。
「あはは。ロティーラは、雷も見たことなかったか」
「雷は見たことあるけれども、急に大きな音がしたから驚いただけ」
「あったっけ?」
「あったもん。デチャニーの船に乗せてもらって大嵐になった日に」
「そういえば、そうだったな。懐かしいな」
セイハは、腹を抱えて笑い出した。
ロティーラは、むかついてセイハの身体をぽかぽかと殴るが、セイハは、笑い続ける。
ロティーラは、久しぶりに、セイハの笑みを見られたので、うれしかった。
また、大きな雷がなった。
ロティーラが思わず、近くに居たセイハに抱き着く。
セイハは、やさしく、頭をなでて
「大丈夫だから」
と言って、ロティーラをぎゅっと抱きしめた。
雨は、強さを増し、雷の回数も増える。
「おかしい」
「え?」
セイハは、ロティーラを抱いていた手を離して、窓の所へと近寄った。
一瞬だが、赤い火の玉が落ちてくるのが、確認出来た。
やがて、火の玉の数量は増し、人々の悲鳴が聞こえてくるようになった。
火の玉の当たった家々が、次々に燃え出して、見る見るうちに、窓の外は、赤く燃え上がってしまっている。
「火の国の仕業だな」
「どうして、ひどいことをするの?止めてくる!」
ロティーラが、ドアに向かって駈け出そうとしたのを、セイハが止めた。
「どうして、止めに行かないの?このままじゃ、町が燃えてしまうよ」
ロティーラは、ひっしにセイハを振り切ろうとしたが、セイハは、譲らなかった。
「おれ達には、もっと役に立つ助人がいるだろう?」
「あ!」
ロティーラは、思い出したように、魔法陣の書かれたペンダントを取り出した。
「がんばろうね」
一言語りかけてから、ペンダントを開く。
あふれ出す強い光。
まぶしい光に、ロティーラ達は、目を閉じる。
光が収まった頃合いを見て、目を開くと、美しく光輝くたてがみを持つ四本脚の魔神がいた。
窓の外には、家が燃え上がりながら、崩れていく様子が見て取れる。
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