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盗賊編 第七章 地の国クエル王国
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ミヤを井戸の底へと落そうとする、神官の手が、背中に延びる。
ミヤは、死の覚悟を決めて、思いっきり目を閉じた。
雨雲は、今にも降り出しそうだ。
このままでは、ミヤが井戸に落ちたと同時に雨が降ってしまう。
雨降り祭りの信憑性が上がってしまい、生贄の犠牲者が増えてしまう。
ロティーラは、観客の間をすり抜けて、井戸へと向けて走り出した。
ミヤに近づこうとしたロティーラを神官が止めようとしたが、風の様に軽い身のこなしについて行けない。
「待って!」
ミヤを井戸の底に落そうとしていた神官が一瞬振り返るが、すぐに視線を戻した。
神官によって、突き落とされたミヤの身体。
ミヤは、悲鳴を上げて、井戸の底へと落ちて行く。
ミヤが落ちたと同時に、後を追うように、ロティーラも井戸へと飛び込む。
落ちて行くロティーラに向かって、セイハが叫んだが、ロティーラの耳には届かなかった。
井戸に落ちて行くロティーラは、ミヤの気絶した身体を抱きしめた。
想像していたよりも井戸の底は深く、いつまでたっても底が見えない。
上からの光は、どんどん小さくなっていく。
暗闇の中で、ロティーラは、不安に駆られた。
雨が降り出したらしく、雨がロティーラの頬にあたった。
井戸の外にいる人々が、雨が降った事を喜んでいる声が聞こえる。
歓声が遠ざかる中、井戸の底から、物音が聞こえるのに気付いた。
物音は、段々ロティーラ達の方へと近づいてくる。
ロティーラは、片腕で、ミヤを支え直し、背負っている槍を抜こうとした。
その時、魔法陣の書いてあるペンダントが、光出した。
ロティーラは、魔神に呼ばれているような気がして、ペンダントを開いた。
あふれ出す強い光。
まぶしい光に、ロティーラは、目を閉じる。
光が収まった頃合いを見て、目を開くと、美しく光輝くたてがみを持つ四本脚の魔神がいた。
魔神サピダジョースンは、ロティーラ達を背中に乗せて、井戸の外を目指して、飛び始めた。
魔神サピダジョースンの背中は、温かくて、たてがみもさらさらしていて気持ちがいい。
しかし、安らぎの時間は、井戸の底から聞こえる大きな音で遮られた。
まるで、井戸を這い登ってくるかのような、地響きだ。
『井戸のぬしが、生贄を食べる為に、のぼってきている』
「ぬし?」
『大抵、生贄を欲するところには、魔物が住み着いているのだ』
「そんな」
魔物が、上ってくる音が近づいてくる。
井戸の外に居る観客が、異変に気付いて、井戸を覗き込む。
覗き込んだ先には、上がってくるロティーラ達と、底で蠢いている紅く輝く目だった。
おぞましい巨大な生物が、蠢いていた。
「化け物だ!井戸の中から、化け物が上がってくるぞ!」
男の声に先ほどまで、雨が降った事を喜んでいた人々が、何事かと井戸の底を覗き込む。
おぞましい生物を見つけた人々は、悲鳴を上げて、井戸の傍から逃げ纏う。
逃げる人々を無視して、セイハは、冷静に、井戸の中を覗き込んでいる。
辺りに人が居なくなったのを確認すると、呪文を唱え始めた。
セイハが、水の国、ウォーターランド王国の呪文を唱え終えると、水魔法が発動した。
美しい水の精霊達が、集まり始め、井戸の奥へと飛び込んでいった。
水の精霊達は、上ってくるロティーラ達とすれ違って、さらに底を目指す。
ロティーラ達は、井戸の出口が見えて、安堵した。
だが、魔物の速さが衰えることがない。
ものすごい速さで追ってくる。
いや、魔物が上がってくるのではなく。黒い波が、魔物を地上へと向けて押し上げているのだ。
魔物は、これ以上地上に近づくのを、拒んでいるかのように、紅く輝く目を細くしている。
地上の声が、正確に聞き取れるようになってきた。
どうやら、薪をするように、セイハが、言って回っているらしい。
セイハは、何をしようとしているのだろうか?
セイハの考えが、ロティーラにはわからなかった。
薪の光が、井戸の中へも差し込む。
ロティーラ達は、ようやく、暗い井戸の底から脱出する事に成功した。
井戸の外では、たくさんの人が、松明を持っていて、夜なのに、昼間の様な明るさだ。
国の人々を仕切る、セイハの姿が、上空から見下ろせた。
セイハは、ロティーラ達が、無事であることを確認すると、目元を緩ませた。
だが、直ぐに凛々しい表情に戻り、井戸の底を睨み付ける。
井戸の底から、勢いよくせりあがってくる魔物。
セイハは、短剣を握りしめた。
頼もしい姿に、ロティーラは、目を奪われる。
実のところ、セイハが、これほどかっこよく見えた瞬間はなかった。
ミヤは、死の覚悟を決めて、思いっきり目を閉じた。
雨雲は、今にも降り出しそうだ。
このままでは、ミヤが井戸に落ちたと同時に雨が降ってしまう。
雨降り祭りの信憑性が上がってしまい、生贄の犠牲者が増えてしまう。
ロティーラは、観客の間をすり抜けて、井戸へと向けて走り出した。
ミヤに近づこうとしたロティーラを神官が止めようとしたが、風の様に軽い身のこなしについて行けない。
「待って!」
ミヤを井戸の底に落そうとしていた神官が一瞬振り返るが、すぐに視線を戻した。
神官によって、突き落とされたミヤの身体。
ミヤは、悲鳴を上げて、井戸の底へと落ちて行く。
ミヤが落ちたと同時に、後を追うように、ロティーラも井戸へと飛び込む。
落ちて行くロティーラに向かって、セイハが叫んだが、ロティーラの耳には届かなかった。
井戸に落ちて行くロティーラは、ミヤの気絶した身体を抱きしめた。
想像していたよりも井戸の底は深く、いつまでたっても底が見えない。
上からの光は、どんどん小さくなっていく。
暗闇の中で、ロティーラは、不安に駆られた。
雨が降り出したらしく、雨がロティーラの頬にあたった。
井戸の外にいる人々が、雨が降った事を喜んでいる声が聞こえる。
歓声が遠ざかる中、井戸の底から、物音が聞こえるのに気付いた。
物音は、段々ロティーラ達の方へと近づいてくる。
ロティーラは、片腕で、ミヤを支え直し、背負っている槍を抜こうとした。
その時、魔法陣の書いてあるペンダントが、光出した。
ロティーラは、魔神に呼ばれているような気がして、ペンダントを開いた。
あふれ出す強い光。
まぶしい光に、ロティーラは、目を閉じる。
光が収まった頃合いを見て、目を開くと、美しく光輝くたてがみを持つ四本脚の魔神がいた。
魔神サピダジョースンは、ロティーラ達を背中に乗せて、井戸の外を目指して、飛び始めた。
魔神サピダジョースンの背中は、温かくて、たてがみもさらさらしていて気持ちがいい。
しかし、安らぎの時間は、井戸の底から聞こえる大きな音で遮られた。
まるで、井戸を這い登ってくるかのような、地響きだ。
『井戸のぬしが、生贄を食べる為に、のぼってきている』
「ぬし?」
『大抵、生贄を欲するところには、魔物が住み着いているのだ』
「そんな」
魔物が、上ってくる音が近づいてくる。
井戸の外に居る観客が、異変に気付いて、井戸を覗き込む。
覗き込んだ先には、上がってくるロティーラ達と、底で蠢いている紅く輝く目だった。
おぞましい巨大な生物が、蠢いていた。
「化け物だ!井戸の中から、化け物が上がってくるぞ!」
男の声に先ほどまで、雨が降った事を喜んでいた人々が、何事かと井戸の底を覗き込む。
おぞましい生物を見つけた人々は、悲鳴を上げて、井戸の傍から逃げ纏う。
逃げる人々を無視して、セイハは、冷静に、井戸の中を覗き込んでいる。
辺りに人が居なくなったのを確認すると、呪文を唱え始めた。
セイハが、水の国、ウォーターランド王国の呪文を唱え終えると、水魔法が発動した。
美しい水の精霊達が、集まり始め、井戸の奥へと飛び込んでいった。
水の精霊達は、上ってくるロティーラ達とすれ違って、さらに底を目指す。
ロティーラ達は、井戸の出口が見えて、安堵した。
だが、魔物の速さが衰えることがない。
ものすごい速さで追ってくる。
いや、魔物が上がってくるのではなく。黒い波が、魔物を地上へと向けて押し上げているのだ。
魔物は、これ以上地上に近づくのを、拒んでいるかのように、紅く輝く目を細くしている。
地上の声が、正確に聞き取れるようになってきた。
どうやら、薪をするように、セイハが、言って回っているらしい。
セイハは、何をしようとしているのだろうか?
セイハの考えが、ロティーラにはわからなかった。
薪の光が、井戸の中へも差し込む。
ロティーラ達は、ようやく、暗い井戸の底から脱出する事に成功した。
井戸の外では、たくさんの人が、松明を持っていて、夜なのに、昼間の様な明るさだ。
国の人々を仕切る、セイハの姿が、上空から見下ろせた。
セイハは、ロティーラ達が、無事であることを確認すると、目元を緩ませた。
だが、直ぐに凛々しい表情に戻り、井戸の底を睨み付ける。
井戸の底から、勢いよくせりあがってくる魔物。
セイハは、短剣を握りしめた。
頼もしい姿に、ロティーラは、目を奪われる。
実のところ、セイハが、これほどかっこよく見えた瞬間はなかった。
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