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盗賊編 第七章 地の国クエル王国

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 辺り一面、砂漠に覆われた土地を馬車が走っていた。
 だが、突然馬車が動かなくなった。
 砂に車輪が埋もれてしまったのだ。
 後ろから押してもびくともしないので、仕方なく砂を掘り始めた。
 しばらく掘り続けると、車輪がようやく砂から抜け出した。 
  安心した瞬間。ロティーラは、砂の斜面を転がり落ちた。
 流砂の中に落ちてしまったのだ。
 すこしずつロティーラの身体が、砂の中へと飲み込まれていく。
 助けようとしたセイハも足を滑らせて、流砂の中へと落ちてしまい、二人の身体は、砂の中へと飲み込まれてしまった。

「ロティーラ。セイハ」

 エコシェニザーは、下を向いて泣き出してしまった。

「ここは、危険です。先へと進みましょう」

 ジイは、エコシェニザーを馬車へと乗せると、流砂に呑まれないように注意して、先を急いだ。
 エコシェニザーは、二人の無事を祈ることしかできなかった。





 ロティーラ達は、物音で目をさました。
 流砂に呑まれたはずなのに、土づくりの家で横になっていた。
 物音は、奥の部屋から聞こえるようだ。

「あら、目覚めたの?」

 太陽の様な黄色と橙色の混ざった髪をした少女が、お盆を持って現れた。
 お盆には、いい匂いのするコンスープと焼きたてのカリカリパンが乗っている。

「おれ達は、流砂に飲み込まれたはずだけれども?」

 セイハが不思議そうにしていると、少女が説明してくれた。

「砂漠の流砂に呑まれてしまった人を地の国。クエル王国の力で助け出しているからです」

 家の呼び鈴が鳴る。

「ちょっと待っていて」

 少女は玄関で立ち話を始めた。
 話を終えた少女は暗い表情をしていた。
 足取りも重い。
 少女の手には一枚の手紙が握られていた。

「どうしたの?」

 ロティーラが心配になって訪ねると、少女は泣き出してしまった。


「私、雨降祭りの生贄に選ばれてしまったの」

「え?」

 ロティーラ達は突然の事態に驚愕してしまった。
 まさか、助けてもらった人が、生贄に選ばれるとは予想できなかったからだ。

「助けてあげることはできないの?」
「う~ん。雨降祭りと言うからには、雨を降らす儀式なのだろう。
 祭りの前に雨が降れば、祭りは中止になると思うけれども?」
「雨降祭りはいつですか?」
「五日後の夜よ」
「セイハ」

 ロティーラは、セイハに目配せをした。

「わかっている」

 ロティーラ達は、泣き疲れた少女を家に残して、人気のない通りへとやってくる。


「水の国、ウォーターランド王国の王子として、水の精霊達よ、力を貸したまえ。
 雨雲を作り、五日以内に雨を降らしたまえ」

 呪文を唱えたセイハの手のひらから、小さな雨雲が発生して、空へと舞いあがって行った。

「これで、大丈夫だろう」
「でも、もし雨が降らなかったら……」
「その時は、おれがなんとかしてやるから、安心しろ」

 セイハの頼もしい言葉に、ロティーラの心がときめく。
 セイハは時々かっこいい台詞を言うからずるいと思った。
 




 三日後。

 雨はまだ降っておらず、太陽の光だけが、砂漠の砂にあたり、金色に輝いている。


「セイハ。雨降らないじゃない。
 このまま雨が降らなかったら、ミヤさんが、生贄にされちゃう」


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