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盗賊編 第六章 水達の願い

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「焼き魚のいい匂いがするぜ。早く行こうぜ」

 セイハに急かさせて、煉瓦造りの中央通りを歩く。
 道の両端は、市場で埋め尽くされている。
 どうやら焼き魚の匂いも屋台の一つからしているようだ。
 ロティーラは、ペンダントに戻った魔神に話しかけた。

「魔神さんの名前を教えて?」
『お前らには、関係ないだろう?どうせこの町で売り払ってしまうのだから』
「売らないよ。だって、このペンダントは」

 ロティーラは楽しそうに歩く、セイハを盗み見た。

「セイハが、くれた大切な贈り物だから、絶対に手放したりなどしない。
 それに、魔神さんとも仲良くなりたいから」
『……』
「早く来いよ」
「は~い」

 セイハに急かされて、ロティーラは歩みを速めた。
 セイハは、焼き魚の店を見つけると飛びついて行った。
 皆で焼き魚を頬張っていると、赤い髪の女性に声をかけられた。

「ガベルさんですよね?」
「アンナか。ひさしいな」
「アンナさんって?」
「デチャニーの部下の人」

 警戒が、ロティーラ達の間に走る。
 だが、アンナは、ロティーラ達が警戒しているとも気付かずに、不安そうな表情をしている。

「うちの船長。デチャニー船長を見かけませんでしたか?
 最近様子がおかしいと思っていたのですけれども、盗賊・海賊の町へ寄ってから、突然別行動をすると言い出して、行方不明なのです」

 どうやら、デチャニーの様子がおかしくなってから、アンナとは行動を共にしていなかったらしい。
 ロティーラ達の警戒が和らぐ。

「先ほどまで、デチャニーに追いかけ回されていて、どうにか巻いた所だ。
 火の玉を放って来たし、確かにおかしい衝動があった」
「船長は、火の玉を放つことは、出来なかったはずです」
「……もしかして、火の国が関係しているのかもしれない」
「でも、どうして」

 答えがわからなくて、沈黙が続く。
 市場のにぎやかなざわめきだけが聞こえる。
 通りすがりの人の世間話が聞こえた。

「知っているか?海の近くの洞窟に、お宝が眠っているって話」
「本当なのか?」
「本当だって」

 興味をしめしたガベルが、通行人に話を伺う。

「なあ、お宝の話。本当か?」
「本当だって」

 ガベルは、ロティーラ達の方を向いて、生き生きとした笑みを浮かべた。

「宝探しにいくぞ」

 先ほどの通行人にくわしい場所を聞いた一行は、海の近くの洞窟へとやって来た。
 洞窟の中は、真っ暗だ。
 持ってきたランプに火を灯すと、辺りを照らした。
 視界の良くなった洞窟内をロティーラ達は、探索した。
 洞窟内部は鍾乳洞のようになっており、岩肌がごつごつしている。

「こんなところに来たのは初めてですわ」

 冒険好きのエコシェニザーは、はしゃいでいた。

「う!」

 突然アンナが呻き声を上げて、すわりこんでしまった。

「どうかしましたか?」

 アンナの足に毒蛇がかみついていた。
 毒蛇を引きはがすことに成功したが、すでにアンナは毒に侵されていた。

「トタプ。アンナを船まで運んでやれ」

 トタプは、アンナをお姫様抱っこで運び出した。
 洞窟の先を見据えると、沢山の毒蛇達が、待機していた。

「お宝は、簡単には手に入らないって、ことか」
「一匹ずつ倒していくしかないね。エコシェニザー姫は、危ないので下がっていて下さい」

 ジイが棒状のものを取り出した。

「ジイ。その武器はなに?」
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