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盗賊編 第一章 盗賊・海賊の町

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「話ってなんだ?」

 ここは、朝から営業している酒場だ。
 朝なのに、酒のにおいが辺りに充満している。

「悪いが、ほんの少しの間。ロティーラとセイハを貸してくれないか?」
「なんだと?」
「ダイヤモンドをやるから」

 ダイヤモンドを見せられて、ガベルは考え込んだ。
 ロティーラとセイハは、小さい頃から愛情いっぱいに育てた子達だ。
 出来れば、トタプも渡したくなかった。

「やっぱり、貸せないな」
「そうか。だったら、これも追加する」

 今度は、ルビーを取り出した。

「ダイヤモンドとルビーのセットだ。これならどうだ」
「あいつら二人は、物や金じゃ渡せないんだよ」
「そうか」

 デチャニーは、立ち上がると、メモを置いて、酒場を出て行った。

「親分。これなんでしょうね?」

 トタプがメモをガベルに渡した。
 ガベルはメモを見て、凍りついた。

『力ずくでも、手に入れる』

 メモを覗き込んだトタプもびっくりしていた。
 ガベルは椅子を立つ。

「トタプ。セイハとロティーラを探し行くぞ」

 それだけ言うと、ガベルは、酒場出て行った。
 トタプも急いで後を追った。
 


 その頃、ロティーラとセイハは、アクセサリーの店に居た。
 ガベル達が密談している間に購入したのは、菓子と短剣だ。
 短剣を買うのを付き合ってくれたので、セイハもロティーラの買い物に付き合うことになった。

「あっちもいいし、こっちもいいな~」

 ロティーラは、欲しい物が有り過ぎて悩んでいた。

「これは、どうだ」

 セイハが魔法陣の絵が描いてある、ペンダントを指差した。
 ずっと見つめていると、無性にロティーラはペンダントが欲しくなった。

「いいな~」
「これ何貨ですか?」
「銅貨五つね」

 セイハは、銅貨を五つ出してお店の人に渡した。
「まいどう」

 と言って、違う客の接待へと戻って行った。

「ほら、おれからのプレゼントだ」
「あ、ありがとう」

 ロティーラは、セイハからペンダントをもらった。
 さっそく身に着けた。
 結構似合っているかもとロティーラは、自分にうっとりした。

「やっと、見つけた」

 不審な人達が、薄気味悪い笑みを浮かべ始めた。
 この町では、先に武器を出した方の負けなので、セイハは一生懸命切りかかりたいのを抑えていた。

「ときゃー!」

 一人が剣を抜くと、他の奴らも後に続いた。

「きゃあ」

 町中から悲鳴が上がる。

「逃げようセイハ。いくらセイハでも、この人数を相手にするのは、無謀だよ」

 手を掴んで、逃げ出そうとしたが、セイハはその場を動こうとはしなかった。

「逃げようって、もう逃げ道はないんだよ。殺さないように気絶させながらいくしか」

 いつのまにか、周囲を不審人物達に囲まれてしまっていた。

「セイハ。逃げ道は、まだあるわ。わたしに掴まって」

 セイハは、ロティーラにしっかりと捕まった。

「どこへ行っても、逃げ場はないのだよ」

 男達が、剣を振り下ろしてきた。
 切られる前に、スッと高く飛び上がった。
 屋根には、誰も居なかったので、安心して着地した。
 男達は、ロティーラの身軽さに唖然として、屋根に這い上がるのも忘れてしまっていた。
 捕まっていたセイハも驚愕してしまった。
 ロティーラは、セイハを支えたまま、次々と屋根を飛び移った。
 空は、すっかり夜になっていた。

「セイハ。ロティーラ。どこだ?」

 ロティーラは、呼び声の方へと向かった。

「誰だ?勝手に人の声を真似している奴は」

 ガベルは、イラついていた。

「親分。声の方へと行きましょう。もしかしたら、デチャニーが、親分の声真似をして、ロティーラ達をおびき出そうとしているのかもしれません」

「何?急ぐぞ。トタプ」

 全力で声真似のする方へと向かった。
 偽物を見つけたガベルは、ぶん殴って黙らせた。

「デチャニーは、何処に居るんだ」

 未だに見つけられない、驚異の元凶にガベルは、苛立っていた。




「親分?どこですか?」

 しばらくして、ロティーラは、ガベルの声を見失ってしまった。
 セイハが気配を感じて後ろを向くと、そこには、デチャニーが立っていた。

「どうして、デチャニー船長が、屋根の上にいるのですか?」
「きみ達に、してほしいことが、あってね」

 デチャニーは、短剣を取り出した。
 セイハは、デチャニーの様子がおかしいことに気付き、ナイフを抜いた。
 襲い掛かって来た、デチャニーの短剣をナイフで受け止めた。
 隙を見て、デチャニーに足払いを食らわす。
 すると、デチャニーは、バランスをくずして、屋根から転落してしまった。
 慌ててロティーラが、屋根の下を確認したけれども、デチャニーの姿は見つけられなかった。

「セイハ。ロティーラ。どこですか?居たら返事をしてください」

 トタプとガベルが、懸命にロティーラ達を探しているのに気付いた。

「セイハ。わたしに掴まって」
「え?」
「いいから」

 セイハの身体を抱きしめたロティーラは、屋根から飛び降りた。

「はーい」
「ぎゃ~」

 ロティーラの元気良い挨拶とは対照的に、セイハは死にかけた悲鳴を上げた。
 ガベル達も驚いて上を見た。
 そうしたら、ロティーラ達が、屋根の上から降り立った。
 地面に下ろされたセイハは、凄く参っていた。

「だ、大丈夫か?セイハ。ロティーラ」
「わたしは、平気だけれども、セイハが、気分が悪そう」
「げほっ」

 ガベルは、セイハに同情した。
 セイハが落ち着いた後、食料と水を大量に購入して、ラクダに餌を与えて、ロティーラ達の馬車は旅たった。
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