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Soul 3 心
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ゼル達が戻ってきた時、ちょうど買い物に行く途中の日陰と鉢合わせした。
「帰って来た」
「何処か行くのか」
「夕飯買いに行く」
「そっか。暗くなるし危険だから付いて」
「オレ行く。絶対行く」
言葉を遮られたゼルが睨みつけると空を飛んでいたラークはあざ笑うように見下した。
(すっげームカつく奴)
ゼルは閻魔がなぜラークを同行させたのかがわからない。
生意気なガキとしか映らないのだ。
「その小さい人、誰?」
日陰に小さい呼ばわりされたラークは確かに身長が低かった。
「小さいって言うな。ムカつく」
ラークが怒って地団太を踏んだ。
ゼルがラークを紹介して、三人はスーパーに向かった。
「すっげー。スーパーに入ったの初めて」
ラークはあちこちの商品を一つ一つ眺める。
「すっげー。すっげー。食い物山ほどあるじゃん」
ラークは飛んだり、跳ねたり、大声を出したりして人様に迷惑をかけているように思えるが、ラークの声や姿を見られるのは、霊感の強い日陰と悪魔のゼルだけだ。
どんなに大騒ぎしても見えない、聞こえない、物や人を通りぬける、では誰も注意する人などいない。
普通の人間にとって、ラークはいないと認識される対象なのだ。
聞こえる日陰にとっては雑音だが、それを注意すると、日陰は変人扱いされてしまう。
「ギル。静かにさせて。うるさい」
日陰は小声で近くにいるゼルに囁きかける。
「はぁ―悪いオレでもあれ止められない」
「役立たず」
日陰はカートを速めて押す。
「おい。怒ったのかよ。たく、何とかするよ。機嫌直せって」
「無理なくせにそういうこと言わない。それよりもギルも色々見て来たら。本当は、興味あるんでしょう」
「う」
ゼルの目線はお店に入った時からキョロキョロして落ち着きが無かったのだ。
きっと見て回りたいのを我慢していたのだろう。
「行っていい」
「でも」
「あたしは平気。あのバカもいるし」
ラークは相変わらず、「すげー。すげー」とはしゃぎ店内を走り回っていた。
「信用できない。あいつ」
「でも見たいでしょ」
「う」
「通らないで買い物すますところもある」
「~。一人で大丈夫なんだな」
「うん」
「行ってくる」
ゼルは日陰の傍を離れ、ダッシュで色々見物する。
「素直じゃない」
「きみもね」
「わ」
後ろからラークに声をかけられて驚いてしまった。
周りの人間が何事かと不審な視線を送って来たので慌てて、取り繕う。
「素直じゃないよ」
「……」
「ゼルとはどう。進んでいる」
「何が?」
「好きなんでしょ。彼の事」
「今日会ったばかりなのに、好きとかわからない」
「でも彼に何か感じなかった」
「感じたけど、恋じゃない」
「どうしてわかるの」
「変。ラーク今までと別人」
「……」
「ねえラークはあたしの事」
「回って来たぞ。……何辛気臭くなっているんだ」
息を切らせて走って来たゼルを見て可笑しくなった。
(ラークと変わんない)
「あ、芋見っけ。なあ落ち葉集めて焼き芋やろうぜ」
並べられた芋は、丸々と膨らんでいておいしそうだった。
「バカ。煙が出て神社の奴に居場所がばれるだろうが」
そう反対しながらも目は、芋に釘付けだ。
「やろう。焼き芋。あたしも食べたい」
「じゃあ決まり」
「ところで」
「ん」
「焼き芋食べられるの。あなた達」
「「もちろん」」
まあ、ゼルはお茶を飲んでいたし、焼き芋も食べられるのだろう。
焼き芋と大声で叫びながら喜ぶのを見て、日向たちと仲が良かった頃を思い出した。
あの頃は三人で遊んで楽しかった。
いつかこの関係が壊れてしまうのを知っていたけれど、一番壊れるのを恐れていたのも事実だった。
(またあたしにこんな日が来るなんて)
二人の傍は温かく日陰の心にしみた。
「帰って来た」
「何処か行くのか」
「夕飯買いに行く」
「そっか。暗くなるし危険だから付いて」
「オレ行く。絶対行く」
言葉を遮られたゼルが睨みつけると空を飛んでいたラークはあざ笑うように見下した。
(すっげームカつく奴)
ゼルは閻魔がなぜラークを同行させたのかがわからない。
生意気なガキとしか映らないのだ。
「その小さい人、誰?」
日陰に小さい呼ばわりされたラークは確かに身長が低かった。
「小さいって言うな。ムカつく」
ラークが怒って地団太を踏んだ。
ゼルがラークを紹介して、三人はスーパーに向かった。
「すっげー。スーパーに入ったの初めて」
ラークはあちこちの商品を一つ一つ眺める。
「すっげー。すっげー。食い物山ほどあるじゃん」
ラークは飛んだり、跳ねたり、大声を出したりして人様に迷惑をかけているように思えるが、ラークの声や姿を見られるのは、霊感の強い日陰と悪魔のゼルだけだ。
どんなに大騒ぎしても見えない、聞こえない、物や人を通りぬける、では誰も注意する人などいない。
普通の人間にとって、ラークはいないと認識される対象なのだ。
聞こえる日陰にとっては雑音だが、それを注意すると、日陰は変人扱いされてしまう。
「ギル。静かにさせて。うるさい」
日陰は小声で近くにいるゼルに囁きかける。
「はぁ―悪いオレでもあれ止められない」
「役立たず」
日陰はカートを速めて押す。
「おい。怒ったのかよ。たく、何とかするよ。機嫌直せって」
「無理なくせにそういうこと言わない。それよりもギルも色々見て来たら。本当は、興味あるんでしょう」
「う」
ゼルの目線はお店に入った時からキョロキョロして落ち着きが無かったのだ。
きっと見て回りたいのを我慢していたのだろう。
「行っていい」
「でも」
「あたしは平気。あのバカもいるし」
ラークは相変わらず、「すげー。すげー」とはしゃぎ店内を走り回っていた。
「信用できない。あいつ」
「でも見たいでしょ」
「う」
「通らないで買い物すますところもある」
「~。一人で大丈夫なんだな」
「うん」
「行ってくる」
ゼルは日陰の傍を離れ、ダッシュで色々見物する。
「素直じゃない」
「きみもね」
「わ」
後ろからラークに声をかけられて驚いてしまった。
周りの人間が何事かと不審な視線を送って来たので慌てて、取り繕う。
「素直じゃないよ」
「……」
「ゼルとはどう。進んでいる」
「何が?」
「好きなんでしょ。彼の事」
「今日会ったばかりなのに、好きとかわからない」
「でも彼に何か感じなかった」
「感じたけど、恋じゃない」
「どうしてわかるの」
「変。ラーク今までと別人」
「……」
「ねえラークはあたしの事」
「回って来たぞ。……何辛気臭くなっているんだ」
息を切らせて走って来たゼルを見て可笑しくなった。
(ラークと変わんない)
「あ、芋見っけ。なあ落ち葉集めて焼き芋やろうぜ」
並べられた芋は、丸々と膨らんでいておいしそうだった。
「バカ。煙が出て神社の奴に居場所がばれるだろうが」
そう反対しながらも目は、芋に釘付けだ。
「やろう。焼き芋。あたしも食べたい」
「じゃあ決まり」
「ところで」
「ん」
「焼き芋食べられるの。あなた達」
「「もちろん」」
まあ、ゼルはお茶を飲んでいたし、焼き芋も食べられるのだろう。
焼き芋と大声で叫びながら喜ぶのを見て、日向たちと仲が良かった頃を思い出した。
あの頃は三人で遊んで楽しかった。
いつかこの関係が壊れてしまうのを知っていたけれど、一番壊れるのを恐れていたのも事実だった。
(またあたしにこんな日が来るなんて)
二人の傍は温かく日陰の心にしみた。
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