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映画ランキング Aランク編 君の名は。

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君の名は。 Aランク

賛否両論あるものの結局最終的に何点やねん?度 80 Aランク

【解説】
タイトルの『。』が非常にうっとうしい、君の名は。のランキングである。

別に『君の名は』でいいと思うのだが、そこは『つのだ☆ひろ』の☆と一緒で監督のこだわりなのだろうから、これ以上多くは語らないことにしよう。(?)

まず、初めに言っておきたいのは、この作品は『めちゃくちゃもったいない作品だった!!』ということだ。

話題作だけあり映像、音楽だけで言えば間違いなくSランク、近年のアニメでもトップクラスであり、文句のつけようがなかった。

『ある点』を改善さえすれば、一般層からも玄人筋からも不朽の名作として語り継がれていたと思われるだけに、非常にもったいない印象が強い。

何故この作品がギリギリ80のAランクに留まったのかというと、ファンの方には申し訳ないが、この作品には構成上の欠陥があると思われるからだ。

それは、主人公の同僚で憧れの存在である、『奥寺先輩』の存在である。

構成、演出の観点から見ると、このキャラクターはまったくもって不要であり、奥寺先輩の存在がこの作品をAランクに留めてしまった大きな原因だと言える。

では、その理由を一つずつ解説していこう。

①この物語の肝はあくまで『三葉と瀧の心の繋がり』にあり、それを表現するためには尺を考えると、序盤から積極的に二人の心のふれあいを描く必要がある。

②確かに序盤二人が入れ替わることによって、一定の交流は描かれるが、それだけでは二人の感情の高鳴り、二人が好意を持つに至る描写、説得力が足りていない。

後半の盛り上がりで観客を感情移入させるには、もっと序盤のパートで両者がお互いを好きになる特別なエピソードを用意する必要があった。

前半のパートでの三葉と瀧の心の繋がりが弱いために、後半素晴らしい映像と音楽で盛り上がりを見せるにも関わらず、いまいち心の底から感情移入できず非常にもったいない。

③その問題の前半パートで、三葉と瀧の心のふれあいを描けなかった一番の理由、『奥寺先輩』。

瀧は序盤奥寺先輩のことが好きというキャラクターで描かれるため、先輩への思いと三葉への思いと視点が分散してしまい、結果的に中途半端などっちつかずのキャラクターとなってしまっている。

更に先輩とのデートなど、結末的に何の意味もないエピソードに尺を使った結果、三葉との関係性を描く時間がなくなり、作品にとって何一つメリットがない。

瀧が三葉を探して東京から飛騨に向かう時にも、友人と先輩がついてきて三人で向かうことになるが、三人で向かう必要がどこにあるのか。

あのエピソードは、瀧の三葉への思いの強さを観客に伝えるための重要なエピソードであり、そのためには誰も従えず瀧一人で三葉を探しに行く必要があった。

まったく関係のない友人は言わずもがな、瀧が好意を抱いている先輩がついてくることによってまたも瀧の思いが分散してしまい、三葉へのまっすぐな思いが薄まる結果を招いている。

前半から終始、この先輩との関係性に無駄な尺と無駄な感情の流れを使っているため、三葉と瀧の心の交流が阻害されている。

④以上の点から分かる通り、初めからこの先輩を出さなければ(おそらくファンが多いだろうことはわかるが)、前半で三葉と瀧の交流を素直に描くことができ、そこで二人が惹かれあっていく様子を丹念に描写していけば、後半の盛り上がりがぐっと説得力を増したことだろう。

この作品にとって大切なことは、『君だけ。世界で君だけを愛している』という極めて純粋でストレートなメッセージであり、その点に於いて先輩への思いはノイズでしかなく、観客の感情移入を阻む無駄な障壁となってしまっている。

⑤最後の最後で瀧から三葉への思いが掌に描かれるが、どこでそんなに好きになったのかを前半でエピソードとして明示しなければ、二人の感情や言動にいまいち説得力を感じられず、感動に乗っていけない。

一応最低限の交流は描いてあるため、これで感動できるという方もいると思うし、筆者も否定はしないが、少なくとも筆者の中では感動するまでには至らなかったし、もっといくらでも良くなる余地があったのに!!というもったいなさの方を強く覚えた印象だ。

⑥あと、先輩とは関係ないが、このままでは500人が死ぬとわかっているのに、お菓子やケーキを食べながらヘラヘラ作戦会議など、あまりに真剣味がなさすぎると思う。

人の命が懸かっているというのにこの緊迫感のなさは、良い意味でも悪い意味でも昨今の軽薄な世相を現しているのかもしれない。

⑦これも先輩とは関係ないが、三葉の父親の娘への愛情のなさがあまりに露骨である。

自分の娘が真剣な眼差しで訪ねてきて、自分に(荒唐無稽とは言え)頼み事をしてきたら、普通親としては心配して詳しく事情を聞くものではないだろうか?

言うに事欠いて病院へ行けとは、まともな親の言うこととはとても思えない。

そのくせ三葉の中にいるのが瀧であることは敏感に感じ取るのだから、これは普段の三葉をよく観察していなければ到底出来ない芸当(いつも一緒にいる妹ですら気付かなかったのに)であり、娘を遠くから見守る親心はあるのかということになり、これでは前述の愛のない発言と矛盾してしまい、何が何やらわからない。

あそこで父親が娘の中にいる瀧に気付くことに大した意味はなく、ここは娘の異変に気付かない鈍感な父親とした方が、前後の整合性は取れたように思う。

そもそもこの父親を宮水家から追い出したのは祖母の一葉のはずであり、娘の三葉をここまで疎ましく思う感情がまったく理解できない。

過去の因縁から一葉、ひいては宮水家を憎む、ここまでは素直に理解できる感情であり、違和感はないが、実の娘である三葉を何故父親がそこまで煙たがらなければならないのか、何か筆者が見落としているのかもしれないが、人間の感情としてまったくもって理解できなかった。

さて、君の名は。で気になった点は大体この辺だろうか。

三葉パートでは三葉とテッシーの間に恋が生まれそうな描写はなかったため何も問題はないが、やはりこの作品の最大の問題点は、瀧パートの奥寺先輩との無駄な恋愛模様にあったと言えるだろう。

あれだけ尺を使って瀧との関係性を描いておきながら、本筋との密接な絡みも何もなく、結局最後にはその指に光るものを見せつけて去っていくのだから、本当に何のために出てきたキャラクターなのか、意味がまったくわからない。

瀧の憧れとして、或いは監督の趣味として、大人の雰囲気の女性を何となく出してみようかなぁ、ぐらいの軽い感じで出されたとしか到底思えず、キャラクターの配分、構成という点では疑問符がつくと思う。(あとこの作品からは『セガサターン』時代の似たようなゲームを再構築したような雰囲気は感じる)

奥寺先輩を出さなければ尺に余裕ができるため、非常に簡単ではあるが代案を考えてみよう。

例えば三葉と瀧は、友達との間で一見楽しそうに生活しているが、その実二人とも世界で自分だけが取り残されているような、心にとてつもない孤独を感じていた。

そんな時、二人は夢の中で出会い、互いに入れ替わっていることを知る。

メールや電話のやり取りを通して、他の誰にも埋められない心の孤独を初めて埋めてくれた相手に、二人は次第に惹かれあっていく。

と、簡単に例を挙げてみたが、どうだろう、奥寺先輩が出てこないパターンの方が、二人の惹かれあうまっすぐな思いを、より深く感じることができないだろうか?

このように、不純物を排し、孤独などの共通点を通して、二人の惹かれあう純粋でまっすぐな思いを感じられるようにしないと、極めて美しく透き通ったこの作品に於いては、非常にもったいないと筆者などは思ってしまうのだ。

奥寺先輩が出てくる君の名は。より、こちらの方が余程いいように筆者は思うのだが、読者の皆様はどうだったろうか。結果は皆様の判断にお任せすることにしよう。

今回の内容は奥寺先輩のファンの方には疑問符のつく内容かもしれないが、人によってそういう見方もあるかと軽い気持ちで受け止めて頂ければ幸いである。

君の名は。の解説は以上となるが、ちょっとした点に疑問を感じただけで完成度は高いレベルにあるため、オススメまではしないが観て後悔するということはないだろう。

『日本中が涙した名作』はさすがに言いすぎと思うが、それなりに感動できる佳作という評価は与えられると思う。

この作品を(ブームもあったとは言え)1900万人が観に行ったというのは驚くべきものがあるが、それだけ人を惹きつける何かがこの作品にはあったのだろう。

新海監督の新作が、今から楽しみである。
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