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日常ランキング CD屋のオッサン
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品揃え度 23 Gランク
失礼度 100 Sランク+
暗闇度 98 Sランク
ナルシス度 94 Sランク
出にくい度 100 Sランク+
【解説】
日常ランキング、今回は巷の話題やニュースではなく、筆者のプライベートで起きた、ある出来事を語ることにする。
その日、時刻は午後6時。
車である街道を走っていた筆者は、明らかに個人経営であろう、一軒のこじんまりとしたCDショッブを発見した。
筆者のCD好きは広く知られているところである。さて、どんなお宝が眠っているかもしれない、一度品揃えを見てみるかと思ったが、先に済ませなければならない用事があり、その場は一旦通り過ぎることにした。
その後用事を済ませ、先に回転寿司で食事を済ませると、時刻は午後8時。辺りは既に真っ暗になっており、前述のCDショッブが開いている保証はどこにもない。その街道は家から遠く離れたところにあり、次に来るのはいつになるかわからない。はやる気持ちでハンドルを握る筆者。まあ、普段は車のハンドルではなく下半身のレバーを握っているのだが。違うか!!わっはっはっは!!
……。
……。
……。
……さて、目的のCDショッブに着くと、店内は真っ暗になっており(初めに見た時は明るかった)、中では怪しげなオッサンが一人で椅子に座りギターを弾き、悦に入っていた。
怪しげな雰囲気に思わず息をのむ筆者。大丈夫かこの店……?
だが、お宝の可能性を前にして、入らないという選択肢はない。表に書いてあった営業時間を見ると、午後9時まで。閉店にはまだ1時間の余裕があった。考える間もなく、そのまま筆者は店に飛び込んだ。
店内は外から見た通り真っ暗であり、唯一オッサンがギターを弾いている場所だけに、照明が当たっている状況であった。CDの置いてある棚が入口左側の隅に数箇所あり、あとは楽譜のようなものが置いてあったり、何に使うかよくわからないようなものが置いてあったり、CDが主体というよりは、店主の趣味の店といった感じである。オッサンがギターを弾いている場所は店のど真ん中にあり、その印象をより強いものにしていた。
「暗っ……」
思わずそう口に出す筆者。何しろ暗すぎて、どんなCDが置いてあるかもよくわからない。
気持ち良さそうにギターを弾いていたオッサンは、傍らにギターを置くと、驚いた表情で筆者に近づいてきた。
次にオッサンが発した言葉に、筆者は思わず我が耳を疑った。
「よく入ってこれましたね?」
……一瞬オッサンの言葉の意味がわからず、その場に立ち尽くす筆者。何?え?何?今何て?ちょ、ちょっと待って。こっちがお客さんでここ店って認識で合ってるよね?通常日本国では店よりお客様の方が立場が上だったと思うんだけど、記憶違いかな?ていうか何ここ、異国?気持ち悪いんだけど。
すっかり機先を制された筆者と、どうやら店主らしいオッサン。この両者が何故暗闇の中で対峙することになったのか筆者にはわからないが、これは数多くの偶然が奇跡的に生んだ、正に神のいたずらと言うしかないだろう。参った、ここは人間がけして足を踏み入れてはいけない、幻のサンクチュアリだったのだ。既に、この場所に足を踏み入れてしまったことを後悔していたが、入って話し掛けられてしまった以上、無言できびすを返すわけにはいかない。いや、出来ないことはないが、入ってすぐ突然翻って無言で退店するなど、どう考えても変質者である。変質者と思われたくなければ、ここは退店ではなく、不退転の決意で望まなければならない。しどろもどろで何とか返答する筆者。
「え、あ、いや、外に9時までて書いてあったんで」
何故か若干不満げなオッサン。
「ああ、まあいや、書いてはありますけど」
以下、筆者とオッサンの何の実もない、この世で最も無駄な時間だろうと思われる不毛な会話。
オ「書いてはありますけど、ねえ」
筆「え、もう終わってるんですか?」
オ「え、あ、いや、まあ終わってましたけど、まあねえ」
筆「……」
オ「……暗いですし」
ちなみに、オはオリックスバファローズの略ではなくオッサンの略であり、筆は筆下ろしではなく筆者の略である。
ていうか、入ってきてほしくないなら、ドア閉めとけばよくね?何だ!!暗闇の中でオッサンが一人でギターを弾いて怪しげな雰囲気を放っていれば、よもや入ってくる酔狂な客は一人もいないと思ったのか!!いたんだよここに、物好きな客が!!入ったっていいだろ別に!!客なんだから!!(普通の人は入りません)
よし、わかった、確かにこちらもおかしな客であることは認めよう。そちらの立場に立ってみれば、『よく入ってこれましたね?』と思うかもしれない。だが、思ったとしてもそれをわざわざ口に出す必要はないだろう!!失礼だと思わないのかチミは!!筆者が店の店主なら、絶対に言わないぞ!!(ここまで約30秒)
腹に不満を溜め込んだまま、無言でCDを品定めしだす筆者。しかし、暗くてよく見えない。目をしばたいて見ていると、パチッと音がして、店内は一瞬にして明るくなった。オッサンが電気を付けてくれたのである。
だが、問題は他にもあった。CDの棚の前に何故か大きなフェンス風の車止めのようなものが置いてあり、それが邪魔をして自由に品定めをすることが出来ないのである。
一体何なんだこの店は!!CDショッブなのに、肝心のCDすら自由に見ることが許されないのか!!よく入ってこれましたね?とか言われて、じゃあ何しに来たんだここに!!
「俺は怒ったぞフリーザ!!」
正直筆者はフリーザにキレた悟空よりキレていたが、そんなことはおくびにも出さず品定めを続けていると、オッサンが車止めのようなものをどかしてくれた。正直これでは車止めではなく『客止め』だが、そんなアメリカンジョークを飛ばせるような状況ではない。悟空はなんでキレた時だけオラじゃなく俺なんだろうなぁなどと空想しながら黙々とCDを見ていくと、勘の鋭い筆者はすぐに気付いてしまった。
やばい、そんなにいいものがない。
何ということでしょう!!ここまで無駄な時間と労力を使ってようやくCDを見ることが出来たにも関わらず、肝心のCDの品揃えには、まったくと言っていいほど珍しいものがなかったのでした!!何しに来たんだお前は!!
既にこの店の実力を見切ってしまった筆者だが、実は、本当の問題はここからである。
これがもう、とにかく『出にくい』んですよ……(泣きたくなりまっせお客さん……)。
ここまで様々な信じられないような状況が続いたおかげで、『何も買わずに店を出る』のは、ひょっとすると店主が若干引いていた(弾いていたのはギター)店に入る行為より困難かもしれなかった。
既に見る物はなくなっているのだが、「ふーんなるほどー、あ、こんなのもあるんだー」(棒読み)とか小声で言いながら、見るふりを続ける筆者。椅子に戻り、ギターを弾きなおすオッサン(ギターの音ぽろろん、じゃねえよ)。このクソのような状況に、見て見ぬふりを続ける筆者。ギターを弾き続けるオッサン。筆者。見るふり。オッサン。ギター。筆者。見るふり。オッサン。ギター。
そうして、ある種拷問とも思える地獄の時間が過ぎていった。途中スマホをイジっている芝居まで打った激闘である。筆者。見るふり。オッサン。ギター。絶対に負けられない戦いがここにはある。限りなく不毛なプレッシャーの掛け合いに、終止符を打ったのは筆者だった。
「あ、じゃあすいません、ちょっと一旦失礼します」
一旦、じゃねえよ!!もうお前は来ないだろ二度と!!出にくいからってもう一度来るような雰囲気を匂わせてんじゃねえよ!!あとオッサンのギター大して上手くねえよ!!下手の横好きじゃねえか!!
オッサン「はーい」
それだけかよ!!CDロクなもん置いてねえよ!!値段も別に安くねえよ!!ぽろろん……ぽろろん……じゃねえよ!!結局お前の趣味の店じゃねえか!!二度と来るかこんな店!!
こうして、筆者の誰にも知られざる激闘は幕を閉じた……。
退店後、お口直しにゲーム屋でシェンムー2の通常版を買って帰宅した次第である。
帰宅中、車内で妹の『ランク美』(いたのかよ!!今までどこにいたんだよ!!)に事の顛末を話すと、舌打ちしてこう言われた。
「バッカじゃないの。Aランクなみにバーカ」
人の気も知らずナマ言いやがって!!お前が運転しろ!!このランク狂いが!!
まあ、筆者に妹などいないのだが。
失礼度 100 Sランク+
暗闇度 98 Sランク
ナルシス度 94 Sランク
出にくい度 100 Sランク+
【解説】
日常ランキング、今回は巷の話題やニュースではなく、筆者のプライベートで起きた、ある出来事を語ることにする。
その日、時刻は午後6時。
車である街道を走っていた筆者は、明らかに個人経営であろう、一軒のこじんまりとしたCDショッブを発見した。
筆者のCD好きは広く知られているところである。さて、どんなお宝が眠っているかもしれない、一度品揃えを見てみるかと思ったが、先に済ませなければならない用事があり、その場は一旦通り過ぎることにした。
その後用事を済ませ、先に回転寿司で食事を済ませると、時刻は午後8時。辺りは既に真っ暗になっており、前述のCDショッブが開いている保証はどこにもない。その街道は家から遠く離れたところにあり、次に来るのはいつになるかわからない。はやる気持ちでハンドルを握る筆者。まあ、普段は車のハンドルではなく下半身のレバーを握っているのだが。違うか!!わっはっはっは!!
……。
……。
……。
……さて、目的のCDショッブに着くと、店内は真っ暗になっており(初めに見た時は明るかった)、中では怪しげなオッサンが一人で椅子に座りギターを弾き、悦に入っていた。
怪しげな雰囲気に思わず息をのむ筆者。大丈夫かこの店……?
だが、お宝の可能性を前にして、入らないという選択肢はない。表に書いてあった営業時間を見ると、午後9時まで。閉店にはまだ1時間の余裕があった。考える間もなく、そのまま筆者は店に飛び込んだ。
店内は外から見た通り真っ暗であり、唯一オッサンがギターを弾いている場所だけに、照明が当たっている状況であった。CDの置いてある棚が入口左側の隅に数箇所あり、あとは楽譜のようなものが置いてあったり、何に使うかよくわからないようなものが置いてあったり、CDが主体というよりは、店主の趣味の店といった感じである。オッサンがギターを弾いている場所は店のど真ん中にあり、その印象をより強いものにしていた。
「暗っ……」
思わずそう口に出す筆者。何しろ暗すぎて、どんなCDが置いてあるかもよくわからない。
気持ち良さそうにギターを弾いていたオッサンは、傍らにギターを置くと、驚いた表情で筆者に近づいてきた。
次にオッサンが発した言葉に、筆者は思わず我が耳を疑った。
「よく入ってこれましたね?」
……一瞬オッサンの言葉の意味がわからず、その場に立ち尽くす筆者。何?え?何?今何て?ちょ、ちょっと待って。こっちがお客さんでここ店って認識で合ってるよね?通常日本国では店よりお客様の方が立場が上だったと思うんだけど、記憶違いかな?ていうか何ここ、異国?気持ち悪いんだけど。
すっかり機先を制された筆者と、どうやら店主らしいオッサン。この両者が何故暗闇の中で対峙することになったのか筆者にはわからないが、これは数多くの偶然が奇跡的に生んだ、正に神のいたずらと言うしかないだろう。参った、ここは人間がけして足を踏み入れてはいけない、幻のサンクチュアリだったのだ。既に、この場所に足を踏み入れてしまったことを後悔していたが、入って話し掛けられてしまった以上、無言できびすを返すわけにはいかない。いや、出来ないことはないが、入ってすぐ突然翻って無言で退店するなど、どう考えても変質者である。変質者と思われたくなければ、ここは退店ではなく、不退転の決意で望まなければならない。しどろもどろで何とか返答する筆者。
「え、あ、いや、外に9時までて書いてあったんで」
何故か若干不満げなオッサン。
「ああ、まあいや、書いてはありますけど」
以下、筆者とオッサンの何の実もない、この世で最も無駄な時間だろうと思われる不毛な会話。
オ「書いてはありますけど、ねえ」
筆「え、もう終わってるんですか?」
オ「え、あ、いや、まあ終わってましたけど、まあねえ」
筆「……」
オ「……暗いですし」
ちなみに、オはオリックスバファローズの略ではなくオッサンの略であり、筆は筆下ろしではなく筆者の略である。
ていうか、入ってきてほしくないなら、ドア閉めとけばよくね?何だ!!暗闇の中でオッサンが一人でギターを弾いて怪しげな雰囲気を放っていれば、よもや入ってくる酔狂な客は一人もいないと思ったのか!!いたんだよここに、物好きな客が!!入ったっていいだろ別に!!客なんだから!!(普通の人は入りません)
よし、わかった、確かにこちらもおかしな客であることは認めよう。そちらの立場に立ってみれば、『よく入ってこれましたね?』と思うかもしれない。だが、思ったとしてもそれをわざわざ口に出す必要はないだろう!!失礼だと思わないのかチミは!!筆者が店の店主なら、絶対に言わないぞ!!(ここまで約30秒)
腹に不満を溜め込んだまま、無言でCDを品定めしだす筆者。しかし、暗くてよく見えない。目をしばたいて見ていると、パチッと音がして、店内は一瞬にして明るくなった。オッサンが電気を付けてくれたのである。
だが、問題は他にもあった。CDの棚の前に何故か大きなフェンス風の車止めのようなものが置いてあり、それが邪魔をして自由に品定めをすることが出来ないのである。
一体何なんだこの店は!!CDショッブなのに、肝心のCDすら自由に見ることが許されないのか!!よく入ってこれましたね?とか言われて、じゃあ何しに来たんだここに!!
「俺は怒ったぞフリーザ!!」
正直筆者はフリーザにキレた悟空よりキレていたが、そんなことはおくびにも出さず品定めを続けていると、オッサンが車止めのようなものをどかしてくれた。正直これでは車止めではなく『客止め』だが、そんなアメリカンジョークを飛ばせるような状況ではない。悟空はなんでキレた時だけオラじゃなく俺なんだろうなぁなどと空想しながら黙々とCDを見ていくと、勘の鋭い筆者はすぐに気付いてしまった。
やばい、そんなにいいものがない。
何ということでしょう!!ここまで無駄な時間と労力を使ってようやくCDを見ることが出来たにも関わらず、肝心のCDの品揃えには、まったくと言っていいほど珍しいものがなかったのでした!!何しに来たんだお前は!!
既にこの店の実力を見切ってしまった筆者だが、実は、本当の問題はここからである。
これがもう、とにかく『出にくい』んですよ……(泣きたくなりまっせお客さん……)。
ここまで様々な信じられないような状況が続いたおかげで、『何も買わずに店を出る』のは、ひょっとすると店主が若干引いていた(弾いていたのはギター)店に入る行為より困難かもしれなかった。
既に見る物はなくなっているのだが、「ふーんなるほどー、あ、こんなのもあるんだー」(棒読み)とか小声で言いながら、見るふりを続ける筆者。椅子に戻り、ギターを弾きなおすオッサン(ギターの音ぽろろん、じゃねえよ)。このクソのような状況に、見て見ぬふりを続ける筆者。ギターを弾き続けるオッサン。筆者。見るふり。オッサン。ギター。筆者。見るふり。オッサン。ギター。
そうして、ある種拷問とも思える地獄の時間が過ぎていった。途中スマホをイジっている芝居まで打った激闘である。筆者。見るふり。オッサン。ギター。絶対に負けられない戦いがここにはある。限りなく不毛なプレッシャーの掛け合いに、終止符を打ったのは筆者だった。
「あ、じゃあすいません、ちょっと一旦失礼します」
一旦、じゃねえよ!!もうお前は来ないだろ二度と!!出にくいからってもう一度来るような雰囲気を匂わせてんじゃねえよ!!あとオッサンのギター大して上手くねえよ!!下手の横好きじゃねえか!!
オッサン「はーい」
それだけかよ!!CDロクなもん置いてねえよ!!値段も別に安くねえよ!!ぽろろん……ぽろろん……じゃねえよ!!結局お前の趣味の店じゃねえか!!二度と来るかこんな店!!
こうして、筆者の誰にも知られざる激闘は幕を閉じた……。
退店後、お口直しにゲーム屋でシェンムー2の通常版を買って帰宅した次第である。
帰宅中、車内で妹の『ランク美』(いたのかよ!!今までどこにいたんだよ!!)に事の顛末を話すと、舌打ちしてこう言われた。
「バッカじゃないの。Aランクなみにバーカ」
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