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第46説
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道中、タロピンのクエストの進捗具合を聞いたりしながら、僕たちはチュート・リアルの待つ邸宅へと戻ってきた。
「すいません、お待たせしましたチュート・リアルさん。鍵開けのできる仲間を連れてきましたよ」
「おお、やっと来たか、遅かったじゃないか自称勇者くん。全く、このまま待ち続けて日が暮れるかと……てっ……ひっ!?ネ、ネズミっ!?」
チュート・リアルはタロピンの姿を見て飛び上がり、瞬時に僕の後ろに隠れた。
「そやっ!!ワイはネズミや!!プロホリヤーネズミやっ!!(?)フラジールはんから話は聞いとるで、なんでもこの家の扉を開けてほしいと」
「自称勇者くん!!きっ、君の仲間というのはモンスターだったのか!?まあ悪いモンスターではなさそうだが……。それ以前に私はネズミが大の苦手なんだよ!!はっ、早く扉を開けてどこかへ行ってくれないか!!」
「なんやねんも~、自分で呼んどいて失礼なお人やな。まあええわ、ワイの腕にかかればこんな扉ぐらいちょちょいのちょいやでっ!!」
タロピンが言葉通りちょちょいのちょいっと扉の鍵穴を弄ると、なんと、先程までびくともしなかった扉が簡単に開いた!!(なんて便利なやつなんだこいつは!!)(?)
その凄腕を見たチュート・リアルは、自分の苦手なネズミだということも忘れてしまったように、興奮して僕の背後から飛び出した。
「おっ、おお~っ、なんという早業だ!!たとえ苦手なネズミだったとしても、その腕を見過ごすのはあまりに惜しい!!どうだ君、私の仲間にならないかね!?報酬ははずむよ!?」
タロピンは考えるまでもないという感じで即答した。
「お断りや!!ワイはこのフラジールはんの仲間やと言うてるやろ!!ええか、ワイとフラジールはんには共に死地をくぐり抜けてきた信頼と絆があるんや!!簡単に引き裂けると思ったら大間違いやで!!」
「そうですよチュート・リアルさん!!そもそも、僕の誘いを一瞬で断ったくせに、人の仲間を引き抜こうとしないで下さい!!」
チュート・リアルは残念がっていたが、僕としてはタロピンがそんなことを思ってくれていたのかと知れてちょっとジーンとしてしまった。(?)
「それじゃフラジールはん、ワイはクエストに戻ってるで」
「ああ、わざわざありがとなタロピン。気をつけてな」
後で宿屋にこの時間に合流なと約束して、僕とタロピンは別れた。
さあ、これで扉は開いた、ここからが僕の『初仕事』だ。
チュート・リアルに先に行くように促されたので、僕を先頭にチュート・リアルがその後をついてくる形で、僕たちは邸宅の中に足を踏み入れていった。どうやらチュート・リアルは後ろをキョロキョロと気にしながらついてきているようだ。何故そんなことを?
邸宅の中には明かりが点いておらず薄暗かったが、外からの光は軽く差し込んでいるため、中がどのような構造でどこに『金目のもの』があるかは分かった。特に人がいるような気配はなく、どうやら邸宅の主は外出中らしい。
「よし、よくやった自称勇者くん。それでは今から、私が持ってきたこの袋に、できるだけ小さく高価なものから入れていくんだ」
チュート・リアルはそう言って、とても丈夫そうな大きな革の袋を広げた。
「あの、ところで明かりは点けないんですか?」
「しっ!無駄口叩いてないでさっさとやる!いいかい?こういうのは時間との勝負なんだよ?」
チュート・リアルに急かされたため、僕はひとまずその辺のタンスや棚を調べてお金になりそうなものを探していった。
しかし、いくら公に認められた行為とはいえ、こんな薄暗い中で明かりも点けずにコソコソと(?)家探しなどしていると、どことなく落ち着かない、まるで何か悪いことをやっているかのような変な気持ちになってくるのは不思議だ。
いいかフラジール、これは公に認められた正当な行為なんだ、逃げちゃダメだ!!逃げちゃダメだ!!と(?)、自分で自分に必死に言い聞かせて金目のものを探していく。
「君遅いよ何やってんの!!まだ何も袋に入れてないじゃないか!?」
既にいくつもの指輪や金銀を袋に入れていたチュート・リアルが、僕のあまりの『仕事』の進まなさっぷりを見かねてキレた、次の瞬間だった。
「きゃあぁぁああぁああぁああああぁああッ!?」
2階に続く階段の方を見ると、なんと、この邸宅の住人らしき女性が、如何にも怪しく家探しをしている僕たちの姿を見つけ、恐怖で動くこともかなわずその場に座り込んでいる!!(!?)
しまった!!(?)まだ上に人がいたのか!?い、いや、しかし、これは正当な行為なんだから、別に見つかったところで何を咎められる謂れもないはずだ!!
僕はすぐさまその女性に駆け寄り、これは違う、何かの誤解だ、これは各地の王に認められた正当な行為なんですと弁解(?)した。
「あ、あああ、あの、その、こ、これはなんと言いますかですね、けして悪いことをやっている訳ではないと言いますか、そそそ、そんなつもりじゃないんです、け、けして貴方を驚かせようと思った訳では……!!」
《ああ、冒険者の方々。なんだ、あんまり驚かせないで下さいよ》
こう、答えてくれることを期待した。
しかし、女性の反応は、そんな僕の儚い願いとは全く違ったものだった。
「ドロボーーーーーーーーーーーッッッ!!」
……。
……。
……。
「……へっ?」
「すいません、お待たせしましたチュート・リアルさん。鍵開けのできる仲間を連れてきましたよ」
「おお、やっと来たか、遅かったじゃないか自称勇者くん。全く、このまま待ち続けて日が暮れるかと……てっ……ひっ!?ネ、ネズミっ!?」
チュート・リアルはタロピンの姿を見て飛び上がり、瞬時に僕の後ろに隠れた。
「そやっ!!ワイはネズミや!!プロホリヤーネズミやっ!!(?)フラジールはんから話は聞いとるで、なんでもこの家の扉を開けてほしいと」
「自称勇者くん!!きっ、君の仲間というのはモンスターだったのか!?まあ悪いモンスターではなさそうだが……。それ以前に私はネズミが大の苦手なんだよ!!はっ、早く扉を開けてどこかへ行ってくれないか!!」
「なんやねんも~、自分で呼んどいて失礼なお人やな。まあええわ、ワイの腕にかかればこんな扉ぐらいちょちょいのちょいやでっ!!」
タロピンが言葉通りちょちょいのちょいっと扉の鍵穴を弄ると、なんと、先程までびくともしなかった扉が簡単に開いた!!(なんて便利なやつなんだこいつは!!)(?)
その凄腕を見たチュート・リアルは、自分の苦手なネズミだということも忘れてしまったように、興奮して僕の背後から飛び出した。
「おっ、おお~っ、なんという早業だ!!たとえ苦手なネズミだったとしても、その腕を見過ごすのはあまりに惜しい!!どうだ君、私の仲間にならないかね!?報酬ははずむよ!?」
タロピンは考えるまでもないという感じで即答した。
「お断りや!!ワイはこのフラジールはんの仲間やと言うてるやろ!!ええか、ワイとフラジールはんには共に死地をくぐり抜けてきた信頼と絆があるんや!!簡単に引き裂けると思ったら大間違いやで!!」
「そうですよチュート・リアルさん!!そもそも、僕の誘いを一瞬で断ったくせに、人の仲間を引き抜こうとしないで下さい!!」
チュート・リアルは残念がっていたが、僕としてはタロピンがそんなことを思ってくれていたのかと知れてちょっとジーンとしてしまった。(?)
「それじゃフラジールはん、ワイはクエストに戻ってるで」
「ああ、わざわざありがとなタロピン。気をつけてな」
後で宿屋にこの時間に合流なと約束して、僕とタロピンは別れた。
さあ、これで扉は開いた、ここからが僕の『初仕事』だ。
チュート・リアルに先に行くように促されたので、僕を先頭にチュート・リアルがその後をついてくる形で、僕たちは邸宅の中に足を踏み入れていった。どうやらチュート・リアルは後ろをキョロキョロと気にしながらついてきているようだ。何故そんなことを?
邸宅の中には明かりが点いておらず薄暗かったが、外からの光は軽く差し込んでいるため、中がどのような構造でどこに『金目のもの』があるかは分かった。特に人がいるような気配はなく、どうやら邸宅の主は外出中らしい。
「よし、よくやった自称勇者くん。それでは今から、私が持ってきたこの袋に、できるだけ小さく高価なものから入れていくんだ」
チュート・リアルはそう言って、とても丈夫そうな大きな革の袋を広げた。
「あの、ところで明かりは点けないんですか?」
「しっ!無駄口叩いてないでさっさとやる!いいかい?こういうのは時間との勝負なんだよ?」
チュート・リアルに急かされたため、僕はひとまずその辺のタンスや棚を調べてお金になりそうなものを探していった。
しかし、いくら公に認められた行為とはいえ、こんな薄暗い中で明かりも点けずにコソコソと(?)家探しなどしていると、どことなく落ち着かない、まるで何か悪いことをやっているかのような変な気持ちになってくるのは不思議だ。
いいかフラジール、これは公に認められた正当な行為なんだ、逃げちゃダメだ!!逃げちゃダメだ!!と(?)、自分で自分に必死に言い聞かせて金目のものを探していく。
「君遅いよ何やってんの!!まだ何も袋に入れてないじゃないか!?」
既にいくつもの指輪や金銀を袋に入れていたチュート・リアルが、僕のあまりの『仕事』の進まなさっぷりを見かねてキレた、次の瞬間だった。
「きゃあぁぁああぁああぁああああぁああッ!?」
2階に続く階段の方を見ると、なんと、この邸宅の住人らしき女性が、如何にも怪しく家探しをしている僕たちの姿を見つけ、恐怖で動くこともかなわずその場に座り込んでいる!!(!?)
しまった!!(?)まだ上に人がいたのか!?い、いや、しかし、これは正当な行為なんだから、別に見つかったところで何を咎められる謂れもないはずだ!!
僕はすぐさまその女性に駆け寄り、これは違う、何かの誤解だ、これは各地の王に認められた正当な行為なんですと弁解(?)した。
「あ、あああ、あの、その、こ、これはなんと言いますかですね、けして悪いことをやっている訳ではないと言いますか、そそそ、そんなつもりじゃないんです、け、けして貴方を驚かせようと思った訳では……!!」
《ああ、冒険者の方々。なんだ、あんまり驚かせないで下さいよ》
こう、答えてくれることを期待した。
しかし、女性の反応は、そんな僕の儚い願いとは全く違ったものだった。
「ドロボーーーーーーーーーーーッッッ!!」
……。
……。
……。
「……へっ?」
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