上 下
45 / 48

第45説

しおりを挟む
そうして次の『現場』。

チュート・リアルが連れてきた場所は、先程の家より遥かに大きい、如何にも資産家が住んでいますというような、きらびやかな豪華な装飾が施された邸宅だった。

チュート・リアルに促される形で、僕は邸宅のドアを開けに行った。

《ガチャガチャッ、ガチャガチャッ》

「?あの~、鍵が掛かってるんですけど」

「当たり前でしょう、だってそもそもは人様のお家なのだから。何もいつ来ても開いてるということはなく、それは施錠されてる場合だって当然ある。なに?君は勇者を自認する割には、鍵開けのスキルも持っていないのかい?」

いや、さっきはそうは見えないと否定してたくせに、都合のいい時は勇者を持ち出すんかいと思ったけど、『鍵開け』と言われれば僕の脳裏にはピーンと来るものがあった。

「あっ、それなら、僕は無理ですけど仲間が鍵開けできます!!」

僕の言葉にチュート・リアルは拍手喝采すると、

「それは素晴らしい!!ではすぐにその仲間とやらを呼んできてくれ。私はあそこの裏で待っているとしよう」

そう言ってチュート・リアルは、家の裏手の影に身を潜めるかのように待機状態となった。

各地の王に認められた正当な行為をしているのに、何故そんなに人目を気にしてコソコソしなければいけないのかは分からなかったけど、やはりいくら正当に認められた行為とはいえ、けして褒められたものではないことは間違いない、人としてどこか後ろめたい気持ちがそうさせているのかもしれない。

そんなチュート・リアルを尻目に、僕はタロピンを呼びに宿屋へと向かう。

タロピンが先程向かったクエストの目的地であり、そこから経過した時間を考えると、そろそろ宿屋へは着いているはずだ(真面目に仕事をしているとすれば)。

目的の宿屋へ着くとタロピンがいなかったため、僕は宿屋の親父さんに人間サイズのネズミ小僧(?)を見なかったかと尋ねる。

「ああ、そのネズミ小僧(?)ならウチへのお届けものを届けてくれた後に、次のクエストに向かうと言ってたよ。ずいぶんと張りきってたなぁ。お世話になったから、次もよろしく頼むと言っといてくれよ」

おおっ、珍しく(?)タロピンが褒められている……。なんか知らんが僕もめっちゃ嬉しいぞ……!!

「分かりました!!いや~、あいつね、僕の仲間なんですよ。基本生意気なんですけど、結構可愛いとこもあったりなかったり。とにかくありがとうございます!!」

次のクエストは道具屋だと言っていたそうなので、僕はすぐさま道具屋へと向かった。フフフ、あいつ褒められてたこと知ったら喜ぶだろうなぁ。

早く伝えてあげなきゃと思い、息せき切って走っていると、ちょうど道具屋からタロピンが出てくるところと鉢合わせになった。

「うぉおおおおおっ出会い頭の衝突事故寸前っ!!そんないきなりの再会に思考回路はショート寸前っ!?(?)なんやフラジールはんそんなに焦って!?ワイになんか用か!?」

「タロピン~!!キミ宿屋の親父さんに仕事への取り組む姿勢をすごく褒められてたよ!!良かったな~おい、早速働きぶりが認められたじゃないか!!」

タロピンは頬を赤らめて照れながら、デレデレの笑顔で嬉しがった。

「ほ、ほんまでっか……!!デヘヘ、洞窟で働いてた時は褒められることなんて一度もなかったから、えらい嬉しいもんでんなぁ。それをわざわざ伝えにきてくれたんか、ありがとう、ありがとう」

うん、まあそれが本来の目的ではなかったというか、たまたま流れでそうなったんだけど、なんにしろネズミが喜んでる姿を見るのは、こちらとしてもとても嬉しいことだ。

「あの~、それでクエスト頑張ってるとこ悪いんだけどね、実は僕の方のクエストで鍵開けのスキルが必要になって、それをタロピンにお願いできないかと思って来たんだけど」

「なんや、他に用事もあったんかい。まあええわ、よっしゃ、そういうことならワイが一肌脱がせてもらいまひょか!!フラジールはん、早速その場所にレッツラゴーやで!!」

いちいちセリフが長いのは気になるが(?)、やる気に満ち溢れてるのはとてもいいことだ、こうして合流した僕とタロピンは、チュート・リアルの待つ邸宅へと向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません

青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。 だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。 女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。 途方に暮れる主人公たち。 だが、たった一つの救いがあった。 三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。 右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。 圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。 双方の利害が一致した。 ※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル
SF
 これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。 ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。 βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?  そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。  この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。

処理中です...