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第35説
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町民との会話を終えると、遠くから僕の姿を発見したタロピンが、嬉しそうに駆け寄ってきた。
「フラジールは~ん!!待っててくれたんやな~!!お待たせ~!!」
「いや、お待たせ~!!じゃねえよ!!何を待ち合わせにちょっと遅れてきた彼女みたいな感じで戻ってきとんねん!!貴様と俺とは目と目で通じ合う幼なじみの彼氏彼女の間柄か!!いつも仲良くていいね~、理想のカップルだ~じゃねえよ!!たまにツンデレもあったりして!!(?)そんなことより、ちょっと聞きたいことがある!!」
一刻も早く聞きたかったのに、なかなか帰ってこなかったので思わず離婚間際の夫婦のようにキレてしまったけど(?)、僕が件の武闘家についてタロピンに尋ねると、タロピンは事もなげに答えた。
「ああ。なんかそんな風な人、来たことあったで」(ケロッ)
いや、(ケロッ)じゃねえよ!!ネズミじゃなくてカエルかおのれは!!洞窟でプロホリヤーネズミとかくだらないことほざいてる暇があったら、それをはよ言えや!!(?)
「あったんかい!!どうしてそれを早く言わなかったんだ!?」
「見たといっても一瞬のことやったし、その人すぐに行ってもうたからなぁ。しかもネイズミーはその後、何故かバツが悪そうな感じでワイらを集めて、あの人間が来たことは誰にも口外するなよと口止めされてたし。なにしろあの洞窟に人間が来るのは珍しいから、それだけは覚えてたって訳よ」(グッ)
う~ん、(グッ)と力強く親指立てられてもなぁ……。しかしなるほど、タロピンの話から分かったことだが、ネイズミーはその武闘家に完敗したことがみんなにバレたら、力と恐怖で楽園を支配することができなくなるから、それを隠して口止めしてたって訳か。タロピンはその武闘家がそんなに強い人物だとは知らなかった訳だ。
「そうか……。でもあの時聞いてたところで、武闘家はもう洞窟にはいなかった訳だから、どのみち手遅れだったよな……」
「武闘家武闘家って、何をそんなに気にしてまんねん?」
「それがな~。その武闘家こそが、僕の探している『最強の仲間』に相応しい人物だったかもしれないのだよ。その強さったらアンタねぇ、ネイズミーなんかまるで子供扱いだったらしいよ?」
「ええ~っ!?あの人そんなに強かったんか!?でも言われてみれば、確かに身のこなしが普通のもんとは違ったような……」
「そりゃ違うだろうねぇ~、なんたって僕が追い求める『最強』候補の冒険者なんだからさ。まあ手掛かりはなくなったとしても、タロピンに非は全くないから気にしなくていいよ。あれ?ところで、その胸に飾ってある『お花』はどうしたんだい?」
タロピンは何故か胸のところに、ここに来た時は付けていなかった綺麗な黄色の『お花』を飾っていた。
「へへへ、どや、綺麗やろ~。町を見回ってる時にな、お花売りの女の子がいて、その子が売ってくれたんや。フラジールはんも時間がある時に見に行くとええわ、案内するで」
「ハハハ、案内って参ったなぁ。一緒に着いたのに、ここ何時間かでこの町の構造に関しては、タロピンの方が先輩になっちゃったな」
「せやせや、これからこの町の案内に関しては、ワイを先輩としてあがめ奉るんやで~!!あれっ?ところで、サルバトルの旦那は?」
「僕の故郷に帰ったよ。元からアリュール王国までの約束だったから」
「ええ~っ!?いやいや、アンタはよ言わんかい言うてたけど、それはこっちのセリフや!!そうか……サルバトルの旦那が……」
サルバトルとこうして別れてしまった以上、いくらレベルが上がったとはいえ、タロピンの戦闘能力を考えると、僕と二人だけでこのアリュール王国周辺の敵に対抗することは難しい。
つまり、このアリュール王国で『新しい仲間』を加入させない限り、僕たちはこの町から外に出ることすらできないということだ。(天駆の翼で戻ることはできるけど)
幸いにも、外に出なくとも、宿屋に連泊し毎日その宿代以上のクエストをこなしていけば、お金はドンドン貯まっていくはず。
だから、少なくともタロピンと二人で飢え死にとかそういった心配はないのだけど、中途半端な仲間を増やしてもしょうがない、『最強の仲間』を選別するのに、妥協だけはしたくないところだ。
「いつか冒険が落ち着いたら、タロピンも僕の故郷においでよ。自然が豊かでとってもいいところなんだ。タロピンを案内してあげたいな。その代わり、この町の案内はキミに頼むよ」
「いいんでっか!?そうか~、フラジールはんとサルバトルの旦那の故郷か~。ムフフ、楽しみやな~。フラジールはんおおきに!!この町の案内はワイにお任せや!!」
二人で笑い合った後、急に少し言い出しにくそうな様子で、モジモジと言葉を紡ぐタロピン。
「あの~、フラジールはん。話は変わるけどもやな。『約束のブツ』についてなんやけど」
「約束?何の話?」
「またまた~、相変わらず冗談がお上手やな~。洞窟でアンタの指示で宝箱を開けてきた時に、約束したがな。この町に着いたらお腹いっぱいの高級チーズをご馳走すると」
僕の脳裏に、あの時確かに自分が言い放った発言が思い起こされる。
『分かった分かった、アリュール王国に着いたら、お腹いっぱいの高級チーズをご馳走するから』
やべっ!!
完全に忘れてた!!
むしろ忘れてくれてたらありがたかったのに!!
ネズミってそういうチーズ系の記憶力(?)に関しては物凄いんですね!!(?)
今晩はできるだけ安く済ませようかな?とは思ってたのに……。
勿論ただのチーズなら大丈夫だけど、『高級』チーズって結構お財布の痛みヤバくね?
ビビってお財布の残りを確認すると、天駆の翼で文字通り予想以上の金額が空に飛んでしまったこともあり(言うてる場合か)、サルバトルに本来渡すはずだった報酬を除くと、今夜の宿代とタロピン一人分の食事代が残るのみだった……。
サルバトルがもし報酬を受け取ってたら、完全に足りないところだった……。危なかった……ありがとうサルバトル……。(こんな話してたら、サルバトルも今頃アイリス村でくしゃみしてそう)
サルバトルに渡すはずだった報酬については、奥の手としてできる限り手をつけたくなかったんだけど、もう崩さないとダメか……。
僕はタロピンには分からないところでため息をつきながらも、タロピンの案内で料理屋へと向かい、そこでテーブルいっぱいに広げられた高級チーズをご馳走した。
「うわ~!!こ、これ、ほんまに全部食べてええんかっ!?」
「も、勿論だよっ!!タロピンはお財布の心配なんかしなくていいからねっ!!遠慮なんかせずドンドン行ったれいっ!!」
「ありがとうフラジールはん!!おおきに!!ほんまにおおきに!!」
タロピンの前では格好つけて大きく構えてたけど、その内心は常につきまとう金欠病に涙涙……。
さあ……これで今夜はまた、クエストで町中を駆けずり回って、眠れない夜になるぞ……。
「フラジールは~ん!!待っててくれたんやな~!!お待たせ~!!」
「いや、お待たせ~!!じゃねえよ!!何を待ち合わせにちょっと遅れてきた彼女みたいな感じで戻ってきとんねん!!貴様と俺とは目と目で通じ合う幼なじみの彼氏彼女の間柄か!!いつも仲良くていいね~、理想のカップルだ~じゃねえよ!!たまにツンデレもあったりして!!(?)そんなことより、ちょっと聞きたいことがある!!」
一刻も早く聞きたかったのに、なかなか帰ってこなかったので思わず離婚間際の夫婦のようにキレてしまったけど(?)、僕が件の武闘家についてタロピンに尋ねると、タロピンは事もなげに答えた。
「ああ。なんかそんな風な人、来たことあったで」(ケロッ)
いや、(ケロッ)じゃねえよ!!ネズミじゃなくてカエルかおのれは!!洞窟でプロホリヤーネズミとかくだらないことほざいてる暇があったら、それをはよ言えや!!(?)
「あったんかい!!どうしてそれを早く言わなかったんだ!?」
「見たといっても一瞬のことやったし、その人すぐに行ってもうたからなぁ。しかもネイズミーはその後、何故かバツが悪そうな感じでワイらを集めて、あの人間が来たことは誰にも口外するなよと口止めされてたし。なにしろあの洞窟に人間が来るのは珍しいから、それだけは覚えてたって訳よ」(グッ)
う~ん、(グッ)と力強く親指立てられてもなぁ……。しかしなるほど、タロピンの話から分かったことだが、ネイズミーはその武闘家に完敗したことがみんなにバレたら、力と恐怖で楽園を支配することができなくなるから、それを隠して口止めしてたって訳か。タロピンはその武闘家がそんなに強い人物だとは知らなかった訳だ。
「そうか……。でもあの時聞いてたところで、武闘家はもう洞窟にはいなかった訳だから、どのみち手遅れだったよな……」
「武闘家武闘家って、何をそんなに気にしてまんねん?」
「それがな~。その武闘家こそが、僕の探している『最強の仲間』に相応しい人物だったかもしれないのだよ。その強さったらアンタねぇ、ネイズミーなんかまるで子供扱いだったらしいよ?」
「ええ~っ!?あの人そんなに強かったんか!?でも言われてみれば、確かに身のこなしが普通のもんとは違ったような……」
「そりゃ違うだろうねぇ~、なんたって僕が追い求める『最強』候補の冒険者なんだからさ。まあ手掛かりはなくなったとしても、タロピンに非は全くないから気にしなくていいよ。あれ?ところで、その胸に飾ってある『お花』はどうしたんだい?」
タロピンは何故か胸のところに、ここに来た時は付けていなかった綺麗な黄色の『お花』を飾っていた。
「へへへ、どや、綺麗やろ~。町を見回ってる時にな、お花売りの女の子がいて、その子が売ってくれたんや。フラジールはんも時間がある時に見に行くとええわ、案内するで」
「ハハハ、案内って参ったなぁ。一緒に着いたのに、ここ何時間かでこの町の構造に関しては、タロピンの方が先輩になっちゃったな」
「せやせや、これからこの町の案内に関しては、ワイを先輩としてあがめ奉るんやで~!!あれっ?ところで、サルバトルの旦那は?」
「僕の故郷に帰ったよ。元からアリュール王国までの約束だったから」
「ええ~っ!?いやいや、アンタはよ言わんかい言うてたけど、それはこっちのセリフや!!そうか……サルバトルの旦那が……」
サルバトルとこうして別れてしまった以上、いくらレベルが上がったとはいえ、タロピンの戦闘能力を考えると、僕と二人だけでこのアリュール王国周辺の敵に対抗することは難しい。
つまり、このアリュール王国で『新しい仲間』を加入させない限り、僕たちはこの町から外に出ることすらできないということだ。(天駆の翼で戻ることはできるけど)
幸いにも、外に出なくとも、宿屋に連泊し毎日その宿代以上のクエストをこなしていけば、お金はドンドン貯まっていくはず。
だから、少なくともタロピンと二人で飢え死にとかそういった心配はないのだけど、中途半端な仲間を増やしてもしょうがない、『最強の仲間』を選別するのに、妥協だけはしたくないところだ。
「いつか冒険が落ち着いたら、タロピンも僕の故郷においでよ。自然が豊かでとってもいいところなんだ。タロピンを案内してあげたいな。その代わり、この町の案内はキミに頼むよ」
「いいんでっか!?そうか~、フラジールはんとサルバトルの旦那の故郷か~。ムフフ、楽しみやな~。フラジールはんおおきに!!この町の案内はワイにお任せや!!」
二人で笑い合った後、急に少し言い出しにくそうな様子で、モジモジと言葉を紡ぐタロピン。
「あの~、フラジールはん。話は変わるけどもやな。『約束のブツ』についてなんやけど」
「約束?何の話?」
「またまた~、相変わらず冗談がお上手やな~。洞窟でアンタの指示で宝箱を開けてきた時に、約束したがな。この町に着いたらお腹いっぱいの高級チーズをご馳走すると」
僕の脳裏に、あの時確かに自分が言い放った発言が思い起こされる。
『分かった分かった、アリュール王国に着いたら、お腹いっぱいの高級チーズをご馳走するから』
やべっ!!
完全に忘れてた!!
むしろ忘れてくれてたらありがたかったのに!!
ネズミってそういうチーズ系の記憶力(?)に関しては物凄いんですね!!(?)
今晩はできるだけ安く済ませようかな?とは思ってたのに……。
勿論ただのチーズなら大丈夫だけど、『高級』チーズって結構お財布の痛みヤバくね?
ビビってお財布の残りを確認すると、天駆の翼で文字通り予想以上の金額が空に飛んでしまったこともあり(言うてる場合か)、サルバトルに本来渡すはずだった報酬を除くと、今夜の宿代とタロピン一人分の食事代が残るのみだった……。
サルバトルがもし報酬を受け取ってたら、完全に足りないところだった……。危なかった……ありがとうサルバトル……。(こんな話してたら、サルバトルも今頃アイリス村でくしゃみしてそう)
サルバトルに渡すはずだった報酬については、奥の手としてできる限り手をつけたくなかったんだけど、もう崩さないとダメか……。
僕はタロピンには分からないところでため息をつきながらも、タロピンの案内で料理屋へと向かい、そこでテーブルいっぱいに広げられた高級チーズをご馳走した。
「うわ~!!こ、これ、ほんまに全部食べてええんかっ!?」
「も、勿論だよっ!!タロピンはお財布の心配なんかしなくていいからねっ!!遠慮なんかせずドンドン行ったれいっ!!」
「ありがとうフラジールはん!!おおきに!!ほんまにおおきに!!」
タロピンの前では格好つけて大きく構えてたけど、その内心は常につきまとう金欠病に涙涙……。
さあ……これで今夜はまた、クエストで町中を駆けずり回って、眠れない夜になるぞ……。
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